みんなのインターネット

2016.11.29 インターネットの上手な歩き方 ~岩佐琢磨さんの場合~ vol.1 Cerevoから見るIoTの進化

皆さんは「Cerevo(セレボ)」という家電メーカーをご存じでしょうか。同社は2008年に設立された、新興モノづくり企業。社名の由来が“Consumer Electronics(家電)をRevolution(革新)する”であることからも分かるよう、これまでになかったようなユニークな家電製品作りをモットーとしています。今回は、そんなCerevoのリーダー、岩佐琢磨(いわさたくま)さんにお話をお伺いしてきました。

「100人に1人、1万人で100台売れるものを作る」会社です

「うちは、今時の言葉でいうとIoT(モノのインターネット)機器を作っている会社。皆さんの身の回りにあるいろいろなモノがインターネットやスマートフォンにつながっていくことで、生活が楽しく便利になっていく、そんな未来がやってくると考えて製品開発を行っています」

その際、こだわっているのが、まだ誰も作っていないようなモノを生み出すこと。それも、すでにみんなが求めているようなモノではなく、見た人のほとんどが『こんなのモノ作って誰が喜ぶの?』って思うようなモノを作りたいのだと岩佐さんは言います。

「100人に1人、熱烈に欲しがってくれればそれで良いんです」

例えば、この冬に発売されるホームロボット「Tipron(ティプロン)」、こうしたCerevoのコンセプトを象徴したような製品です。

「今、世の中のホームロボットは、愛玩用のコミュニケーションロボットか、ロボット掃除機の2種類しかありませんよね。『Tipron』はそこに全く新しい価値を生み出せないか考えて作りました。言うなればこれは情報表示ロボット。ロボット掃除機のように家の中を自由に動き回り、今、ユーザーに必要な情報を壁面や天井にプロジェクターで投影してくれるというものです」

朝、ユーザーが目覚めると『Tipron』がベッドサイドまでやってきて、天井に気持ちの良いヒーリング映像を投影してくれる。そこには通勤電車の最新情報も表示されていて……といった具合です。朝の準備を終えて食卓につくと、今度は壁面に最新ニュース映像を投影してくれたりもします。確かにこれは、新しい。

そういったインターネットにつながった情報が、スマホやロボット上で共有され、一貫した体験が可能になる。そんなIoTの活用も、岩佐さんが見据える未来のひとつの形なのでしょう。

Tipron

10年間、ずっとヘンなことをやり続けてきました

そんな岩佐さんのスタンスは「少量生産」で「これまで手がけたことのないジャンルへの挑戦」です。

例えば、インターネットを通じたリアルタイム動画配信を手軽に実現するYouTuber御用達の通信機器『LiveShell X(ライブシェル・エックス)』から、走行中のログを精密に取得・分析できる世界初の3DプリントのIoT自転車『XON ORBITREC(エックスオン オービトレック)』まで、チャレンジするジャンルはさまざま。ミニ四駆をスマホ操作可能にしてくれる改造キット『MKZ4』、アニメ『PSYCHO-PASS サイコパス』に登場する架空の拳銃『ドミネーター』をとことんリアルに再現したスマートトイなど、実用品だけでなくコスプレイヤーにはうれしいおもちゃにまで領域を広げています。

 ドミネーター

「でもね、全く異なる製品を作っているように見えて、実は根本にあるテクノロジーはほとんど一緒なんです。例えば『LiveShell X』と『ドミネーター』は、内部で同じ基本ソフト(OS)が動いていますし、『ドミネーター』の内蔵カメラが映像をスマートフォンに転送する仕組みも『LiveShell X』と同じものを使っています」

まるでブロックを組み合わせるようにモノ作りできるのが、“水平分業”の進んだ、最近のデジタル家電の特徴だそうです。

「もちろん、本質的な技術力では大手メーカーさんにかないません。本体をさらに1mm薄く作るとか、バッテリー性能をさらに高めるとか、そういうところでは勝負できない」

岩佐琢磨さん

だからこそ、ヘンテコなモノをパッと発想して、パッと作っちゃえることがCerevoの強みになるのだと言う、岩佐さん。

「ものづくりに関わり始めてから10年以上。ヘンなことをずっとやり続けてきたことが、少しずつ積み重なってきて、いろいろな人に面白がってもらえるようになりました。実はここ数年、毎年、海外の家電見本市・CESに出展しているのですが、今年、ある海外メディアの方に、『おまえらのところはいつも面白いものを展示しているから、毎年楽しみだ。来年も期待しているぜ』と言われたんですね。これは僕らにとって本当にプライスレスな喜び。今後もそう言ってもらえるようなモノを作り続けていきたいですね」

幅広い商品展開も、インターネットの進化で誰もが世界を相手にビジネスができるようになったからこそ、成り立っています。奇抜なことをやりながら、しっかりと勝機は見いだしている。そんなインターネットの上手な使い方が、岩佐さんの成功の秘訣(ひけつ)なのでしょう。

次回はそんな岩佐さんがインターネットに興味をもったきっかけや、Cerevoを起業した動機についてご紹介します。

岩佐琢磨(いわさたくま)
松下電器産業(現・パナソニック)でカメラやレコーダーなど、インターネット対応家電の商品開発に携わった後、2008年独立。ハードウェアベンチャー「Cerevo」代表取締役に就任。東京・秋葉原近くの本社を拠点に、少数精鋭のスタッフたちと、これまでにはなかった、さまざまなガジェットの開発・販売を行っている。

TEXT:山下達也
PHOTO:合田和弘

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