ニュース

2016.11.03 人工知能で暮らしはどう変わる?AIの“今”と“これから”

Amazon、Google、Facebook、IBM、Microsoftが人工知能の研究で提携したニュースが大々的に報道されるなど、近年のバズワードとなっているAI(人工知能)。実は古くから研究・活用されている分野でもあるんです。特にコンピューターゲームの分野ではCPUが操るキャラクターが、ユーザーの操作を見てから行動を決定するなど、最初期から活用されています。チェス専用スーパーコンピューターのディープ・ブルーなど、当時のチェス世界チャンピオンにすら勝利を収めるAI、Googleが開発したAlphaGoも人間のプロ棋士をハンディキャップなしで打ち負かしました。

私たちの生活を大きく変えるAI

AIの分野でリーダーシップをとっている企業では、私たちの生活を大きく変えるAIの開発に取り組んでいます。

たとえばIBMの「Watson Oncology」は、医療の世界を大きく進化させました。

スマートフォンやウェアラブルデバイスから得た情報も含めてがん患者の医療記録を分析し、ストックしてある医療情報とマッチングを行い、検査・治療情報を医師に伝えます。がん治療のエキスパートがいない病院であっても、適切な治療が受けられるという世界を確立しようとしています。Microsoftも現在、同様のアプローチを行っています。

歩行ロボットのパイオニア、Boston Dynamicsを傘下に持つGoogleは、自社が開発したAIをオープンソースとして公開しています。

このAIを使ったとある農家はきゅうりの仕分けロボットを自作するなど、新たなチャレンジへと結びついています。

Watson Oncology
Boston Dynamics

誰でも使える頼れるAI

私たちが今すぐAIの恩恵を受けることも可能です。GoogleカレンダーなどのサービスはAIの技術発展により可能となった自然言語解析技術を取り入れており、「10時から12時まで家族と水族館」と入力すると、「10時から12時まで」の部分を解析してスケジュールの設定を行ってくれます。また最近、企業のウェブサイトでダイレクトにユーザーサポートが受けられるチャット枠があるのを見たことはありませんか? これはチャットボットのAIを使ったもので、コンピューターがユーザーに対して、ユーザーの期待している応答をするというもの。会話が楽しめるチャットボットやLINE BOTなどでも同様に自然言語解析技術は使われています。

正しい健康習慣を促す健康管理アプリの「Noom」、ヘルスケアに関する質問をすると適切な回答をしてくれるアプリ「HealthTap」なども、AIの技術を活用したもの。これらのアプリのダウンロード数はきわめて多く、多数のユーザーがアプリのAIに信頼を寄せています。

Noom
HealthTap

AIがロボットの進化を司る

AIによる進化が著しいのはロボットの分野にもいえること。ソフトバンクの「Pepper」だけではありません。トヨタの会話ロボット「KIROBO mini」や、日立製作所の案内ロボット「EMIEW3」、AIとIoTを連携させるシャープの「ホームアシスタント」、富士通の「ロボピン」など、次々と人間の役に立つロボットたちが発表されました。

コンシェルジェ的なノウハウと、連携させるIoTな家電・家屋設備をそろえることで、家事にかかる時間を短縮化するのが狙いとみました。そういえばiRobotのロボット掃除機「ルンバ」も適切な掃除ができるように、活動中は常にAIが考えをめぐらせていますね。

プロの現場を見てみると、やはりAIの力がロボットの性能を向上させています。1999年より発売されているIntuitive Surgical社の外科手術支援ロボット「da Vinci Surgical System」は進化を続けているものの、あくまでロボットアームを人間が動かすためのものゆえに、熟練した外科医オペレーターが必要でした。しかしAI方式による外科医ロボット「Smart Tissue Autonomous Robot (STAR)」は外科医の持つ様々なスキルをAIでコントロール、腸の縫合を自動で行うことに成功しました。

災害調査ロボットも画像認識AI技術を搭載することで、カメラに映っているものが壁なのか、それとも衣類なのかの判断ができるようになってきました。まだ実験段階ではありますが、実用化されたら迅速なレスキューが期待できるでしょう。

料理ロボットにも注目が集まっています。トップシェフの調理技術をレシピデータとともに覚え、再現するMoley Roboticsの調理ロボットは2017年に発売予定。予約がそうそう取れない有名レストランの味を自宅で楽しめます。

人間の技能の自動化に強いAIとロボットが私たちの生活をサポートしてくれる日も、もうすぐ訪れるかもしれませんね。

Pepper
KIROBO mini
EMIEW3
ルンバ
da Vinci Surgical System
Moley Robotics

適切な“先生”が必要なAI

スティーブン・ホーキング博士の「人工知能の発明は人類史上最大の出来事。同時に最後の出来事になってしまう可能性もある」という言葉に表されているように、AIの技術革新が進むと、いつかは人間の敵になるのでは、という声もあります。

事実、Microsoftが開発したチャットロボット「Tay」は、実験開始後16時間で停止させられるという事態となりました。「Tay」は人間とチャットをしながら学習をしていくAIでしたが、人間側が問題発言を繰り返したためにその言葉を覚えてしまったのです。

この事態を見るに、AIに学ばせるデータの質を正しく精査する“先生”がいてこそ、AIは誰にとっても役に立つ存在となるのでしょうね。

 

TEXT:武者良太
Image via. Thinkstock / Getty Images

この記事を気にいったらいいね!しよう

PreBellの最新の話題をお届けします。

ページトップ