FEATURE 2018.12.06 恋愛格差をAIでなくす?Pairs(ペアーズ) 社長に聞いた「未来の恋愛」とは

日本国内でも5人に1人がマッチングアプリを利用したことがある(参考:Match Group調査結果)という昨今。もはやオンラインで男女が出会うことは珍しくなくなりました。数多あるマッチングアプリのなかでも圧倒的なシェアを誇るのが、「Pairs(ペアーズ)」です。累計会員数800万人、交際・入籍者数15万人という実績で、国内の恋愛・婚活マッチングサービスの王者として君臨しています。そのマッチングシステムを支えるのは「居住地」「年齢」「希望条件」「趣味」「アプリ内での行動」といった、会員データの分析に基づくAI(人工知能)による「おすすめの相手」のレコメンド。

これから先、未来の恋愛はビッグデータやAIといったテクノロジーを駆使して「この人じゃなかった!」なんて失敗を無くすどころか、“運命の人”を割り出し、失恋すら無くしてしまうのでしょうか? 株式会社エウレカのCEO石橋準也さんにお話を伺いました。

株式会社エウレカ 代表取締役CEO
石橋準也

大学在籍時に、エンジニアとしてWeb受託会社に入社。大学中退後、エンジニアとしてさまざまな経験を積み、2013年に株式会社エウレカに入社。2014年にCTO(最高技術責任者)に就任した後、2016年に代表取締役CEO(最高経営責任者)に。

恋愛データ分析の向こう側。「Pairs」はあえてカオスを作り、出会いを生む。

──将棋や囲碁でAI同士が戦うと人間には理解のできない戦術で戦う、という話があります。PairsのAIが導き出した意外な相性の組み合わせなどはありますか?

「岡山県生まれ×福島県生まれ」といった出身地の組み合わせや、「革製品好き×ドリップコーヒー好き」のような意外な趣味の組み合わせなど、一見、関係がなさそうでいて、実は相性の良い組み合わせがあります。

──リアルでは知り合えないような膨大な人数の中から、自分が思いもよらなかった相手と出会えるわけですね。

そうです。いわゆる「セレンディピティ(偶然の出会い)」はとても重視していて、Pairsの特徴でもあります。Pairsのアルゴリズムで“相性が良い”とされている人を表示しているので、ユーザー自身が指定した条件や好みとは違う相手が表示されることもあります。でもそれは、ユーザーが思いもよらなかったけれど、好きになれる可能性がある相手なんです。

恋愛データ分析の向こう側。「Pairs」はあえてカオスを作り、出会いを生む。

──設定した条件から外れていても、相性が良さそうであれば提案していく、と。

マッチングで指定する条件としては、年齢や年収が一般的ですが、実はそこまで重要じゃないんです。もちろんデータだけ見れば相関性があるように見えるかもしれないけど、「偶然の出会い」を作り出すために、あえて年齢や年収は強調しないようにしています。

──AIによって、ユーザー自身の認識よりも広い視野からおすすめの相手を探して提案するわけですね。

そして、それと同時に僕らはアルゴリズムで導き出した答えをそのまま表示してはいないんです。普通は相性の良い順に並べると思うのですが、あえてランダムにしている部分があります。

ランダムにした方が自らが選択する「偶然の出会い」と言えるのもありますし、何よりも機械学習の観点からもその方が学習効率が良く、より良い偶然の出会いを生み出すことができるのです。

特定の人だけがモテる「いいね!の偏り」を、テクノロジーで解決する。

特定の人だけがモテる「いいね!の偏り」を、テクノロジーで解決する。

──「偶然の出会い」を重視している理由は?

僕らエウレカ内の人間で「いいね!の偏り」と呼んでいる現象があります。モテる人に人気が集中して、モテない人は全然モテないという状態になることです。

──オフライン(リアル)でも特定の男子にバレンタインチョコが集まるなど、ごく当たり前のことですよね。

はい。モテる人に人気が集中するという現象は、意図して是正しようとしない限り、オフラインだけではなくオンラインのマッチングでも起こってしまうことです。そうした偏りをいかに少なくするかを考えていくなかで、「偶然の出会い」を重視するようになりました。

──具体的にはどうやって?

オンライン、オフラインに限らず、なぜモテる人が偏るかというと、それは多くの人が「枠の中にいる上位」を相手として選ぶからなんです。

──「学年の一番可愛い人」「部活で一番かっこいい先輩」「同じ職場で仕事のできる人」などですね。

そこでPairsでは、さまざまな切り口で小さな枠をたくさん作ることで「この中ならこの人がいいかな」と選べるようにして、偏りを減らそうと考えました。最初は単純に検索条件をベースにしていたのですが、性格や趣味・趣向などを軸にした多様なタグやコミュニティを、小さな枠として用意しました。その結果、「枠の中にいる上位」が増えたことにより、マッチングも増え、実際に偏りが減ってきています。

「恋愛したくない」そんな時代に挑む、Pairs。

「恋愛したくない」そんな時代に挑む、Pairs。

──石橋さんがPairsのテクノロジーによって作りたい、“理想の出会い”は?

Pairs内での理想の出会いを考えるとしたら、共通の趣味があったり、価値観やライフスタイルが一緒だったりするかどうかは、大きな基準だと思います。

──なぜ価値観や趣味を重視するのでしょう?

最近は「恋愛したくない」という人がとても増えてきているというデータがありますが、その理由の上位は「お金がかかる」とか「時間が取られてしまう」といったものなんですよね。

でも、それは共通の趣味があれば解決する問題だと思います。共通の部分が付き合う相手とあるかどうかで、幸福度が変わってくるのではないかと思います。

──なるほど。恋愛の形はどんどん変わってきていますしね。Pairsを始めてから恋愛の文化が変わってきたという印象はありますか?

現時点ではPairsの運営開始からまだ6年ほどなので、その間では特に大きな変化はないと思います。僕らが注目しているのは30年前から恋愛がどのように変化し、どうして今Pairsが受け入れられているのか、そして今後どう変化していくのかということ。過去のデータをさかのぼって考えています。

──「文化としての恋愛史」にも迫っているわけですね?

そうですね。過去にさかのぼると、お見合い文化が少なくなって、社内恋愛の文化が生まれたという流れがあります。実際に昔の大企業は、男性社員と結婚してもらうために女性社員を採用していたとも言われています。

しかし女性の社会進出が進み、女性がキャリアを作っていくなかで、社内恋愛が生まれなくなってきた。その次の受け皿としてマッチングアプリがハマったのだと考えています。

「恋愛したくない」そんな時代に挑む、Pairs。

──Pairsのようなオンラインデーティングが広まっているのは時代の必然で、また次の恋愛文化が作られていくということですね。

ただ、僕らはスマホとかアプリという文化とともに成長していますが、スマホやアプリが浸透していけばいくほど、恋愛の優先順位がちょっとずつ下がっていくんですよね。時間の使い方が多種多様になっていくので。

そのなかで恋愛の優先順位を上げていくにはどうしたらいいのか、ということを考えていたりもします。

テクノロジーを使って恋愛をコントロールするつもりはない。

テクノロジーを使って恋愛をコントロールするつもりはない。

──最後に未来の話をしたいのですが、将来的にはビッグデータやAIを駆使して、一生添い遂げられるような出会いを作れるようになる可能性はありますか?

うーん、それはどうでしょう。もうDNAレベルの話になってくると思いますね。それに、何も一生添い遂げることだけが幸せのカタチだとも思わないです。

もし結婚しなくても、付き合ったことがその方にとって大切な思い出になればいいと思いますし、結婚して離婚しても「最悪の結婚生活だった」と思わなかったのであれば良いのではないかと考えています。

──たしかに。多くの人が100歳まで生きる時代には、死ぬまで結婚しているというのが、必ずしも幸せというわけではなくなっているかもしれないですしね。

そうですね。僕らは恋愛をコントロールするのではなく、テクノロジーを使って共通の価値観や趣味を介した出会いを生み出すことで、共に過ごすようになったこと自体が大切な思い出になるような世界を作っていければと思いますね。

テクノロジーは私たちの恋愛をさらに進化させるかも!?

5年後、10年後、テクノロジーの進歩は私たちの恋愛の仕方をさらに変えているかもしれませんが、最後は人間同士のこと。Pairsはあくまでサポートする立場から、安全・気軽に真剣な恋愛を楽しめるような方向性を目指しているようです。また、安心にしてユーザーがPairsを利用できるように、ルール違反や不正を取り締まるカスタマーサポートにも力を入れているとのこと。

絶対に上手くいく“運命の人”をAIに教えてもらうことが技術的にできるのかはさておき、石橋さんの言うように、一期一会の出会いのきっかけを自分で選択して楽しむのが、人生なのかもしれませんね。

TEXT:PreBell編集部
PHOTO:飯田えりか

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