ネット記事の医療情報、すべて信用しても大丈夫? 医療記事を読むときの注意事項【サイバー護身術】
体の調子が悪いとき、その症状や原因をインターネットで検索する——多くの方がやっていることだと思いますが、検索結果に表示された情報をうのみにするのはおすすめできません。症状や対処法が自分にあてはまるとは限りませんからね……。
【登場人物】
斎婆鈍平(さいばあ どんぺい)(41歳)
仕事やプライベートで、よくインターネットを使っているが、知識はあまりない。腹痛・頭痛・腰痛…。自分の身に何か起こると、まずネット検索している。
医療系メディアをうのみにしてはいけない3つの理由
どうやら、医療ライターを医者と勘違いしたようですね。もし医者が書いた記事でも、会ってもいない人を診察はできませんから、そこに書かれているのは単なる一般論かもしれません。
また原因を食べ過ぎと決めつけていますが、もし別の原因だとしたら少し心配です。胃の痛み、のどの違和感、肩の痛みが……実は心臓発作の症状だった、というケースもあります。もちろんそれを診断できるのは医者だけです。
ネットで体の不調原因を検索してはいけない理由は大きく分けて3つあります。
① 人は無意識に、信じたい情報、自分が望ましいと思う情報を選んでしまうから
② 病気や怪我は、自覚症状だけで判断できないから
③ ネットにある情報に根拠があるか、信頼できる情報か、判断できないから
人がネット検索をするときには「そうであってほしい」という願望が無意識のうちに検索ワードに織り込まれます。
たとえば、頭痛がしているときに「きっと低気圧のせいだ(大したことはない)」と自分で決めつけてしまうと、「頭痛 低気圧」といったキーワードで検索してしまいがちです。
しかし、これでは「低気圧が原因の頭痛」の情報しか集まってこないため、その頭痛がまったく違う原因によるものであっても気が付けません。とても危険ですよね。
同じ症状でまったく違う病気、というケースはいくらでもあります。それを見極めることができるのは医者だけです。「心臓発作の症状」のように、異常を感じた箇所が患部とも限りません。医者でも判断が難しい症例だってあります。
それなのに、専門家ではない私たちが、自分の思い込みとネットの情報だけで病名を判断できるはずがありませんよね。体の不調原因を見極める手段は、病院で医者の診察を受ける以外に方法はないのです。
また、ネットに掲載されている医療情報の中には、根拠があいまいなものも多く存在します。それらしい「海外の論文」が引用されていても、実は論文の一部だけを都合よく解釈していたもので、「実は専門家からはまったく相手にされていない論文だった」なんてこともあります。
さらには、明らかな「トンデモ医療(※1)」を勧める記事やSNSも見かけます。非常に残念なことに、ごく一部には医学的効果が証明されていない医療を提供する医者も存在します。少し前に「血液クレンジング(※2)」について、厚生労働省が実態調査に乗り出すなど大きな問題となりました。
※1トンデモ医療…特定の病気に対して、科学的根拠を示さずに効果があるように患者を惑わせる治療。
※2血液クレンジング…少量の血液を採取して医療用オゾンを投与し、活性化した血液を再び体内に戻す治療法。2019年頃、インフルエンサーや芸能人が治療体験をブログやSNSに掲載していたが、医療従事者らからその有効性について批判を受けた。
専門家ではない私たちが、医療情報、特に自分の健康に関わる情報をネットで検索し、適切な判断をおこなうのは本当に難しいのです。
自分で病状を判断せず、病院で診てもらいましょう。
ネットで検索すべき情報は、医療制度やお金の話
同じ医療に関する話でも、インターネット検索に適した情報があります。医療制度や医療費の情報です。
入院や手術などで上限額を超えた場合、その超えた額を支給する「高額療養費制度」という制度もあります。ですが「そんな制度、聞いたこともない」という方もいらっしゃるはず。公的医療制度は他にもありますが、知らなければ、手続きも活用もできません。
「なんだか難しそう」と感じる方には、保険会社が運営しているWebサイトがおすすめです。説明がわかりやすいものが多く、信頼もできるので、それらのサイトで概要を掴んでから、役所、官公庁ページなどで情報を再確認すると、理解も早いです。
こういった情報の検索こそ、インターネットの得意分野なのです。ネットの力を活用して、いざというときに備えられて家族が安心できる、そんな情報を手に入れましょう。
漫画:トーマス・オン・デマンド(アスタリスク)
監修:小木曽健(@ken_ogiso)
文:PreBell編集部
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