これって意見? それとも、誹謗中傷?【サイバー護身術】 みんなのインターネット

これって意見? それとも、誹謗中傷?【サイバー護身術】

SNSを通じて、誰でも簡単に全世界に自分の意見や感想を発信できる今の時代。しかし、日頃周りの人には言わないようなことをつい投稿してしまう、なんてことはありませんか。

発信する相手が見えないからといって、よく考えずに思ったことを吐き出してしまうのは考えものです。

【登場人物】
斎婆鈍平(さいばあ どんぺい)(41歳)

仕事やプライベートで、よくインターネットを使っているが、知識はあまりない。最近ではSNSに慣れてきて、よく考えずに感情を吐き出してしまうことも。

李照貴夫(りてらし たかお)(40歳)

鈍平の会社の後輩。スマホやインターネットの使い方に長けていて、公私ともに鈍平をよく助けている。

その投稿、訴えられるかも……!

その投稿、訴えられるかも……!
その投稿、訴えられるかも……!
その投稿、訴えられるかも……!
その投稿、訴えられるかも……!
その投稿、訴えられるかも……!

どうやら、応援しているアイドルの報道に激昂して、問題のあるコメントを書き込みかけたようですね。

SNSなどに書き込まれる他人の心を傷つけるような投稿、そしてその投稿が拡散されることが深刻な問題となっています。具体的には以下のような事例があります。

  • SNS上で身の危険を感じるような中傷をされたタレントやYouTuberが警察に被害届を提出、投稿者が逮捕される
  • 児童生徒がSNSで身近な人を中傷する投稿をおこない、大きな問題を引き起こす
  • 話題となった事件の犯人だと決めつけ、無関係の個人・企業を攻撃する投稿をおこなった投稿者が、損害賠償を請求される

ここで注意しておきたいのが、他人の投稿を拡散、リツイートした場合。その行為による実害が発生したり、悪意のある拡散だと裁判所が認めれば、責任を問われる場合があります。自分の投稿でなくても注意が必要なのです。

ご存じの通り、こうした相手を攻撃し傷つける言動・投稿を「誹謗中傷」と言います。

では、誹謗中傷はどんなケースで、どういった内容であれば罪に問われるのでしょうか。

何が意見論評で、何が罪なのか

何が意見論評で、何が罪なのか
何が意見論評で、何が罪なのか

李照くんの言う通り、世間一般で誹謗中傷と言われているものは「法的にアウト」「道徳的に問題」「単なる意見論評」の3つに分かれます。

他人に何かを言われた人が「誹謗中傷だ」と主張すればすべて誹謗中傷になってしまう訳ではなく、脅迫や強要など犯罪に当たるもの、民事裁判で争って決着をつけるものなど、実にさまざまなのです。

まず「法的にアウト」ですが、主に以下の2つに分けられます。

刑事事件……相手を脅す、何かを強要するといった投稿は犯罪と認定され、警察が対応します。最悪の場合は逮捕されるケースも。名誉棄損や侮辱といった、一般的に民事分野と思われがちなケースも、内容によっては犯罪として扱われる場合があります。

民事訴訟……犯罪には当たらないが、その投稿のせいで実害が発生したり、迷惑を被った人がいる場合は、損害賠償の請求などについて裁判で争われます。裁判所が「これは単なる意見論評でしょう。表現の自由の範囲内です」と認定すれば、もちろん訴えは無効です。

では、刑事事件にも当たらない、民事裁判でも退けられるようなケースは、すべて問題ないのでしょうか? 

もちろん、許される範囲の意見論評というケースもあれば、「法律上は問題ないけれど、人としてはどうなの?」という道徳的に問題となるケースもあるでしょう。

誹謗中傷とされるものは、すべてが罪ではないし、すべてが表現の自由という訳でもありません。ケースバイケースなので簡単には判断できない問題なのです。

誹謗中傷を受けたらどうする?

誹謗中傷を受けたらどうする?
誹謗中傷を受けたらどうする?

もし、誹謗中傷の被害に遭ったらどのような対処法があるのでしょうか。

まず、指摘されている内容が事実でないなら、きっぱりと否定することが大切です。ネットでは「黙っている=認めた」とみなされる可能性があります。少なくとも一度は「事実ではない」という投稿をしたほうがいいでしょう。

ただし裁判で本格的に争うのなら、否定後はあまり反論などしたりしないこと。なぜなら裁判では「反論できるくらい(そんなに)傷ついていなかった」「喧嘩両成敗=ケンカなので両方に非がある」と判断されかねないからです。

同じ理由でブログなどに自分の憤りなどを書くことも、裁判で不利になる場合があるので慎重に。弁護士にも相談しながら、誹謗中傷の証拠となる投稿のキャプチャやURLの保存をしておきましょう。

投稿者を割り出すために必要な情報は、数カ月で消えてしまう場合があるので、時間との戦いです。また、海外のSNS運営会社への問い合わせには日本国内よりも時間がかかるため、とにかく早めに行動を起こすことが重要になります。

誹謗中傷の収束を優先する場合は、弁護士名を添えて「悪質な投稿には法的措置を取る」という宣言を投稿するのも対処法の一つです。

誹謗中傷の対処法

  1. 事実でない内容なら、まず否定する(裁判を想定している場合は投稿内容に注意する)
  2. 収束を優先するか、戦うか、今後の方針を決定
  3. 裁判で争う場合は弁護士と相談しながら、迅速に証拠を保存する

SNS投稿時の心構え

SNS投稿時の心構え

SNSでは自分の顔も相手の顔も見えません。ただ全世界に発信しているのですから、独り言のように暴言を吐き捨てるのは危険です。

誹謗中傷について「良かれと思って、正義感から投稿した」と主張する人がいますが、それが誹謗中傷と裁判所に認定されれば、罪に問われることもあるのです。

慎重になり過ぎて投稿を怖がるのも良くありませんですが、「投稿前に立ち止まり、少し考えてから投稿する」くらいが丁度いいのではないでしょうか。

漫画:トーマス・オン・デマンド(アスタリスク)
監修:小木曽健(@ken_ogiso
文:PreBell編集部

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