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2022.03.17 対戦相手は近所の友だちから世界へ! 高橋名人とオンラインゲームの変遷を振り返る【So-net25周年企画 そこにはいつもネットがあった#3】

2021年、So-netはサービス開始25周年を迎えました。1996年にインターネット接続サービスがスタートし、2001年にはADSLサービスを開始。翌2002年には光接続サービスを開始し、今に至ります。

その傍らにはいつも、インターネットを盛り上げるサービスがありました。この連載「そこにはいつもネットがあった」では、インターネットとその周辺にあるものに焦点をあて、インターネット黎明期から現在までを振り返ります。

第3回目となる今回のテーマは「オンラインゲーム」。1990年代後半から2000年代前半にかけてのインターネット普及とともに、オンラインでの対戦や協力プレイを醍醐味とするオンラインゲームが登場。

当初はパソコンを中心としたコアゲーマー向けのタイトルがほとんどでしたが、徐々に『ファイナルファンタジー』など大人気シリーズもオンライン版に参入。2022年現在では、オンライン要素がまったくないゲームを探すのが難しいほどの状況となりました。

そんなオンラインゲームの歴史について、ファミコン時代からゲーム文化の啓蒙を続けているゲーム業界の生き証人「高橋名人」にお話を伺います。

高橋名人高橋名人 日本を代表するゲーマー。ゲームプレゼンテーター。ファミコン全盛期にハドソン所属のファミコン名人として一世を風靡。2016年からは一般社団法人e-sports促進機構代表理事も務めた。

200KBの画像を送信するのに一晩かかったあの頃

■オンラインゲーム年表(1)

年代 発売された主なゲームタイトル 当時の状況
1996年 DIABLO
1997年 ウルティマオンライン テレホーダイを利用してプレイする人多数。
1998年 リネージュ
1999年 EverQuest
2000年 ファンタシースターオンライン
2001年 ポトリス
クロスゲート
2002年 GODIUS
FINAL FANTASY XI
ラグナロクオンライン
2003年 メイプルストーリー
信長の野望online
ISDNからADSLや光回線となり、短時間に多くの通信が行えるように。
2004年 World of Warcraft
マビノギ
2005年 RED STONE
大航海時代Online
アラド戦記
2Dゲームが人気。月額課金プレイから従量課金プレイが増える。
2006年 ファンタシースターユニバース
ボンバーマンオンライン
NAVYFIELD NEO
オンラインを介したゲームの購入やアップデートも行われるように。
回線速度の向上にともない、アクション性の高いゲームでオンライン対戦・協力プレイが実現可能に。
2007年 真・女神転生 IMAGINE
モンスターハンター フロンティア オンライン
オンラインRPGは「時間をかけてレベルを上げ強くなる」→「お金をかけるとその分強くなる」傾向に。
2008年 ルーセントハート
北斗の拳ONLINE
イルーナ戦記オンライン
探検ドリランド
オンラインFPSゲームが増える。ボイスチャットが導入され始める。

––読者の多くは、高橋名人とオンラインゲームというのは意外な組み合わせだと感じられるかもしれません。

でも、実は私、ゲームよりインターネットの人なんですよ(笑)。90年代前半に「NCSA Mosaic」というブラウザが出てきたあたりからインターネットをしていたので、そのうちインターネットの世界に特化したゲームも出てくるんだろうなと思っていました。

––高橋名人が最初にプレイしたオンラインゲームは何ですか?

オンラインゲームを“オンラインで相手と対戦するゲーム”と定義するのであれば、80年代後半ぐらいにニフティサーブ(※ニフティが運営していたパソコン通信サービス)だったかPC-VAN(※NECが運営していたパソコン通信サービス)経由で遊んだオセロですね。

––さすが名人。年表掲載のゲームよりも遥か昔のタイトルですね(笑)。オンラインで初めて他の人と対戦したとき、どう思いましたか?

当時はインターネットではなくパソコン通信ですが、それでも対戦相手が無限にいるような感じだったので、井戸から出た蛙って感じがしましたね。もっとも、相手の実力自体はピンキリではありましたが。

––オセロの次に遊んだオンラインゲームのタイトルは?

厳密にはゲームではないんですけど、『富士通Habitat』ですね。ゲーム画面のような仮想空間でチャットを行うコミュニケーションサービスで。
当初は通信障害が多すぎて操作するたびに画面が止まってしまって、まともな体験はできませんでした(笑)。でも「こういう世界があるんだな」と感じることはできましたね。

––今でいえば、メタバースの走り的なサービスですよね。

アバターの走りでもありますよね。私は会社の電話回線を使って遊んでましたけど、接続時間に応じて通信料金がかかるから自宅でやろうとは思わなかったですね。
まだテレホーダイ(※)がない時代でしたから。

※テレホーダイ……1995年にNTT東日本・西日本より提供された電話サービスのオプション。23時から翌8時までに限り、予め指定した通話料金が定額となる。

そして当時は回線速度が遅すぎて、部屋を移動するだけでも何分も待たされていました。すごい時代ですよ。ハドソンの札幌本社から東京まで200KBの画像を送るだけで一晩かかってましたからね(笑)。

高橋名人

ガラケーの「2」「4」「6」「8」を十字キーがわりにポチポチ

––オンラインゲーム年表で最初に名前を挙げているRPG『ディアブロ』についてはいかがですか?

ゲーム業界では『ディアブロ』とか『ウルティマ オンライン』は話題になっていました。ただ、一般ユーザーレベルで売れるにはまだ通信回線やPCなどのプレイ環境が整っていなかったのが惜しかったですね。

––オンラインゲームが一般に広まったタイミングはどこだったと思いますか?

1998年にセガさんがモデムを内蔵したゲーム機としてドリームキャストを出した時は「これでオンラインゲームが広まる可能性が高まった」と思いました。でも、本体の生産が追いつかず、売り上げは伸びずに終わってしまいました。

––ではPCゲームでしょうか?

いえ、当時のパソコンはまだまだ性能不足でしたしマニア向けでした。だから、一般的にはみんなガラケーでゲームをやっていましたね。

––やはり、携帯電話ですか!

オンラインでデータを取得してプレイしていたという点では、あれもオンラインゲームだったんじゃないかと思います。

当時、私が在籍していたハドソンのシューティングゲーム『スターソルジャー』をドコモのCMである女優さんがプレイしてくれていました。容量の都合で効果音が入っていなかったんですけど、CM撮影現場から「音が出ない」と連絡が来て、音を入れたバージョンを慌てて作ってもらって納品した思い出があります(笑)。

––ガラケー時代のアプリってそんな感じでしたよね(笑)。

操作も、携帯電話のテンキーの「2」「4」「6」「8」を十字キーがわりにしてポチポチやるゲームばっかりでしたからね。

––そして2008年にiPhone 3GSが発売され、AppStoreもサービスを開始しました。

あそこで圧倒的にゲームが変わりましたね。タッチディスプレイをどう扱うのかには悩みましたが、マルチタッチによっていろんなゲームが作れるようになりました。

ガラケーでは作れるゲームに限界がありましたから。例えば音ゲーなんて絶対無理ですよね。

––ガラケーじゃ波動拳は出せないでしょうしね。

絶対無理ですね(笑)。

コントローラーを持つ手元の写真高橋名人の連射は今も顕在!

変わり続けるゲーム。考えなければいけない問題も

■オンラインゲーム年表(2)

年代 発売された主なゲームタイトル 当時の状況
2009年 League of Legends
ブラウザ三国志
怪盗ロワイヤル
PCスペックがプレイヤーの戦績に大きく影響するように。アメーバピグなどの2Dゲームも流行。
2010年 メタルサーガ・ニューフロンティア
まきば生活 ひつじ村
FINAL FANTASY XIV
2011年 英雄クロニクル
神撃のバハムート
MOゲームが流行。モバゲーやグリーからリリースされた、ガラケーアプリが人気に。
2012年 PUZZLE & DRAGONS
ドラゴンクエスト X
拡散性ミリオンアーサー
リング☆ドリーム 女子プロレス大戦
PHANTASY STAR ONLINE2
スマホ所持率が飛躍的に上昇。パズドラがダウンロードランキング1位に。
2013年 モンスターストライク
艦隊これくしょん -艦これ-
2014年 白猫プロジェクト
グランブルーファンタジー
黒い砂漠
パズドラとモンストの2強に。艦これがヒットし、これ以降女の子×異ジャンルが増える。
2015年 Fate/Grand Order PCでは自由度の高さと高いグラフィックで黒い砂漠が人気。
2016年 ポケモンGO
Shadowverse
Dead by Daylight
2017年 PUBG
荒野行動
フォートナイト
PUBGが全世界で大ヒット。Dead by Daylightのストリーミング販売が好調。
2018年 魔界ウォーズ 「日本eスポーツ連合」(JeSU)が設立
2019年 Apex Legends
2021年 ウマ娘 プリティーダービー
Pokémon UNITE

––スマートフォン用ゲームとしては『怪盗ロワイヤル』は大きな話題となりましたね。

めちゃくちゃ広告が流れていましたよね。私はもともと宣伝の人間なので「何億円かけてるんだろう? DeNAってすごいな」って驚きました。あとは『PUZZLE& DRAGONS』や『モンスターストライク』もすごく人気が出ましたし、『白猫プロジェクト』や『グランブルーファンタジー』も宣伝にかなり気合が入ってましたね。

––『怪盗ロワイヤル』がヒットしたあたりからは、従来のゲーム業界の会社とはまた違う勢力が入ってきた感じがありましたよね。

そうですね。ガチャ(アイテム課金)がいいか悪いかは別として、「めちゃくちゃ儲かるじゃん」みたいな感じでいろんな参入があって、結局ゲーム業界自体もそっちに向かっていきましたね。

––ただ、ガチャについては、ずっとゲームを作ってきた人やプレイしてきた人ほど、複雑な思いを抱かずにいられないですよね。

実は私、「もしサーバーがなくなったら、このアイテムもなくなるんだよね」と思ってしまって、一定額以上は出せないんです。

私は月の情報料は2万円と決めていて、電子書籍を買うのもそこからなので、ゲームには1万円も使っていません。いつなくなってもおかしくないデータだと思うと、これが限度なんですよ。

でも、子どもの場合、自分の財布じゃないから親が何を言ってもガチャを回してしまう。そこはやはり業界全体で考えていかなきゃいけないと思いますよ。「1ヶ月いくらまで」みたいな上限を定めるんじゃなく、もっと根本的な部分を考えるべきだという気がします。お金持ちが強いっていうシステムについて「それはゲームなのかな?」って。

そういう意味では『PUBG』とか『フォートナイト』みたいなゲームはいいなと思います。課金要素はあっても見た目が変わる程度で強くなるわけではないし、結局は自分のテクニックで勝負することになる。そういうゲームが人気という点では、やっと正常な世界になってきているなとも感じます。

––『フォートナイト』周辺タイトルの流行には、ゲームがまた一段階変わった感じがしましたね。

時間制限があって、100人が参加して最後の一人を決めるというのは、システムやルール作りとして本当に上手いなと思いました。100人参加して毎回チャンピオンが決まるっていうのはゲームとしていいですよ。

––なんか公園とか校庭で遊んでいた感じを思い出すんですよね。

「中心点に早く入ったもん勝ち」という点だけ取り出したら、缶蹴りなんかもそうですよね。

––他に、最近のタイトルで名人が気になっているゲームはありますか?

『ウマ娘』は上手いこと考えたなと思いました。競馬ファンってゲームファンよりずっと昔からいるわけですよね。その上の世代の人たちは最近スマホを触り始めたと思うんですけど、そこに往年の名馬が出てくるわけじゃないですか。それはやはり興味を持ちますよ(笑)。

––ゲーム会社じゃないメーカーが業界に参入したように、ユーザーについても従来のゲーマーじゃない層が入ってきたと。

ファミコンのときも、ガラケーのときも、スマホのときもそうでしたが、新しい動きがあるときってそんな感じですよね。

––今日はゲーマー向けのPCやコンシューマーの名作タイトルではなく、ガラケーやスマホの話題がメインとなるところに、名人が広く「ゲーム」という分野を見ていることを実感しました。……ちなみにお聞きしたいのですが、名人は、オンラインゲームは好きですか?

正直、オンラインゲームより1人でプレイするゲームの方がやりやすいですね(笑)。

名前を変えられればいいんですけど、宣伝で「名人としてプレイしてください」みたいなこと言われると、変なプレイできなくなっちゃうんですよ。

私はプロゲーマーみたいなものかもしれないけど、上手いわけではなくゲームの楽しさを伝える人なんです。でも、みんな上手いのを期待して見てくるから「ごめんなさい」としか言いようがなくて……(笑)。

高橋名人

文・撮影:照沼健太

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