10代にとっては、IT機器は嗅覚や味覚に並ぶ身体の一部。毎日7時間以上、画面を見続けるだけのロマンがそこには詰まっている。
AIを始めとするテクノロジーの急激な進化によって、子どもたちの65%は、今は存在していない職業に就くと予測されています。
激動する世界に対応するため、2020年に文部科学省が定めた学習指導要領では、「社会に開かれた教育課程」が重要視され、コロナ禍では「GIGAスクール構想」が加速しました。
しかし、教育現場において、長い年月をかけて受け継がれた教育の根本的な変革は容易ではありません。
このような状況下で「学校法人ドルトン東京学園」は、最先端のテクノロジーを搭載した学びの場を提供しながら「生徒主体」の教育を進めてきました。
「学校法人ドルトン東京学園」のインタビューは2回に渡ってお送りします。
第2回目となる今回は、自主性と創造性を育む「ドルトン・プラン」で学ぶ生徒達から、日々のクリエイティブな活動や将来の展望、現代社会への思いなどについてじっくりとお伺いしました。
「ドルトン」の好きなことを自由に学べる環境が成長を後押ししてくれた。
ー簡単な自己紹介とクリエイティブな活動を始めたきっかけなどがあれば教えてください。
武田 健仁さん(高等部1年)
「ドルトンエキスポ」で使用するWebサイトのバナー写真の作成やダンス部で使用する音声編集を中心に制作全般を行っています。
コロナ禍で学校に通うことができなくなり「学校説明会用の紹介動画を作成しよう」という企画に興味を持ち、動画編集をスタートしました。
井上 太翔さん(高等部1年)
カメラで撮った写真をAdobeのLightroomなどを使って、その時々の感情を落としこむような加工をしています。
初めて見た風景や日常の何気ない瞬間を「記憶」ではなく「記録」として残せたらと思っています。
最初はスマートフォンで撮影していたのですが、自動編集されてしまうので、マニュアルカメラで撮影したローデータに、色彩の補正を加える「カラーグレーディング」や「レタッチ」を使って、その時々の感情にぴったりな色付けをしています。
主に家族の記憶ですが、バスケ部のメンバーで撮った写真をいつか見返すことができたら嬉しいです。
紙谷 凛さん(中等部3年)
父がデザイナーで、「ジャケット写真」の現場に同行したことをきっかけに動画編集に興味を持ちました。
モデルさんや女優さんのメイキングビデオの撮影や編集をして、公式のYouTubeチャンネルに投稿しています。
デザインなどクリエイティブなことが好きなので、最近はSIXPADのロゴデザインにも応募しました。
動画編集に興味を持ったのは父の影響ですが、ドルトンで好きなことを学べる環境があったからこそ成長できたと思います。
原田 陽向さん(中等部3年)
父の会社が東京オリンピックのWebサイトのマネジャーをしていたことからクリエイティブな活動に興味を持ちました。
もともと絵は趣味で描いていましたが、ドルトンに入学するとAdobe製品を自由に使えることを知り、イラストレーターを始めました。
白戸 阿南さん(中等部3年)
小学校3年生の頃に、画像を編集したり、アプリで言葉を乗せて作成した「LINEオリジナルスタンプ」が人生で最初のデジタルによるモノ作りです。
最近、所属しているオーケストラのプロモーションビデオを作成しました。ほぼ完成したところで、フリーソフトは保存ができないことが分かり、動画編集ソフトを買ってもらいました。
これまでも、これからも、自分にとっての「幸せ」を表現し続ける。今を全力で生きて、進学や仕事のことは、まだ決めてなくていい。
ー将来の夢やビジョンについて教えてください。海外留学なども検討されているのでしょうか?
武田さん
カナダのサマースクーリングに参加した経験から、広く世界を見たいという気持ちはあります。ただ、日本の食事が好きなので、オンラインで海外の仕事ができたらと考えています。
動画を作成する際に、直感で好きになったクリエイターをフォローしていますが、国籍はさまざまで言語は英語がメインなので、場所にこだわる必要はないのかなと思います。
井上さん
美大の映像学科を目指していて、動画クリエイターまたはディレクターになりたいです。
3ヶ月間アメリカに留学しましたが、日本人は、どれほど強烈な個性があっても、内に留め置こうとする傾向が強い気がします。そういった独自の感性を映像や写真に刷り込むことで、日本人にしか創作できない世界観が生まれると思います。
祖父母の親戚で版画をやっている人がいますが、版画職人は全国で5人しかいません。そこで、全国の職人さんにお会いして、版画を作る工程を撮影して動画にまとめる活動を進めています。
版画という日本独自の文化を次の世代に継承し、世界に輸出できればと考えています。
紙谷さん
将来的には、父の仕事の現場で出会ったクリエイターのような作品が作れるようになりたいです。
海外の方がよりクリエイティブに学べるように感じますが、どの国に行きたいなど具体的なことは決まっていません。
原田さん
将来はIT系と決めていますが、具体的に何をするかは考えている最中です。最近、全世界の大学ランキングを眺めて「上を目指したいね」と友達と話していたところです。
1度きりの人生ですから、やりたいことを全てやるにはどうすれば良いか模索している最中です。
白戸さん
進学や仕事など「これをしたい」というプランは特にありません。自分にとって「幸せ」は表現することなので、常に学び、最大限に楽しみながら表現できたらと思います。
今この時点で「自分はこれをやる」と言ってしまうと、そこに人生を閉じ込めてしまう気がするので、制限を設けないで、その瞬間に思い浮かんだことをやっていきたいです。
呼吸をするように、TeamsやZoom、Slack、Office全般を使いこなす。生徒達が抱える意外な悩みとは
ー普段の生活について教えてください。面白いアプリやソフト、熱中していることなどはありますか?
武田さん
2週間前からBlenderの3Dソフトにはまっていて、文化祭のバナーの作成や音声編集、色付きの照明動画などを素材から作っています。
井上さん
「BeReal」という「スマートフォンの通知が届いてから2分以内に、フロントカメラとバックカメラ同時に写真を撮影し投稿する」というアプリが友達同士で流行っています。
フィルターがないうえに2分という時間制限が設けられているため、ポーズを取ったり加工ができないのでありのままの姿が見られるところが気に入っています。
紙谷さん
少し前までは、父の仕事の関係でメイキングビデオの作成を行っていました。
父がデザインしたティアラの撮影では、自分で音楽を入れたり、撮影現場の裏側を撮るところなどが非常に面白かったです。
原田さん
イラストを作成する際に気が散ってしまうのでアプリやゲームなどはほとんど入っていませんし、TwitterやInstagramなども利用していません。
そういった状況ではありますが、好きなアプリは「Pinterest」でイラストを描く参考にしています。
白戸さん
良いタイピング音を出すという「mechvibes」というソフトがあり、選択したタイプ音がでます。
PCのキーボードを購入するとお金がかかりますが、これを入れるだけで好みの音が出るので、タイピングをするだけで気分が上がりおすすめです。
ー早速使ってみたくなるようなアプリやソフトを教えていただいてありがとうございます。毎日の生活で困っていることなどはありますか?
武田さん
他の学校に比べて情報量が非常に多いので、対応するのが大変です。
授業の課題はデータで提出しますし、部活動や生徒会などはTeamsで連絡がきますが、メンションしなければ次々と通知がきてしまいます。
どの情報が最新なのか一目で分かるようなツールが欲しいです。
ー日常的に使用するデジタルツールの使い方は学校で教えてもらうのですか?
井上さん
ドルトンの生徒は、当たり前のように毎日TeamsやZoom、Slack、PowerPointなどOffice全般を使いこなしています。
授業などで教えてもらった記憶はないので、使っているうちに自然に覚えてしまいました。
恵まれ過ぎた環境にいるからこそ、感謝の気持ちや貪欲さを忘れずに進みたい。
ー今最も欲しいものについて教えてください。例えば、100万円あったら何をしたいですか?
武田さん
飛行機のチケットを購入して海外にいきたいです。今はスペインとギリシャに行って、1日中歩き回って写真を撮りたいです。
井上さん
お金があれば簡単に個展が開けたり、いい機材が購入できるかもしれませんが、そうではない環境で勝負したいです。
たとえ夢が叶わなかったとしても、自分の実力で向かっていくというロマンを大切にしていきたいです。
紙谷さん
ドルトン学園の生徒は、自分も含めて恵まれた環境にいるので、やりたいことは割と何でもできてしまいます。
恵まれ過ぎているからこそ、貪欲さをなくしてはいけないと思います。
原田さん
いろいろ事情があって、スマートフォンにはSIMカードが入っていません。
高校生になるまでには、両親との約束を果たしてSIMカードを利用できる状態にして電子機器類を買い換えたいです。
白戸さん
社会における教育の格差をなくせたらと考えています。ドルトン学園に転校してきたので、公立との大きな違いを感じています。
最も違いを感じるのは「校則」で、規定されていない暗黙のルールが生徒の個性を奪いがちなのではないかと思います。ドルトン学園のように、「生徒主体の学校」は理想的だと思います。
全てのロマンがここにある。IT機器は生命線であり生活必需品。嗅覚や味覚に並ぶ身体の一部
ー幼い頃からIT機器を利用してるかと思いますが、皆さんにとってITとはどのようなものですか?
武田さん
ITは生命線であり生活必需品です。授業では必ずPCを使用しますし、日々の動画編集などもITがなければできません。クリエイティブな活動をする際にインターネット環境がないと本当に困ってしまいます。
井上さん
ITは、嗅覚や味覚にも並ぶ重要な身体の一部ではないでしょうか。株価や世界情勢が分からなくなれば、あらゆる活動が止まってしまいますから、生きるうえで何よりも大切だと思います。
紙谷さん
ドルトンという恵まれた環境にいるからこそ、IT機器のありがたみを忘れないようにしたいです。自分達が情報を取り入れる貴重なツールであることに対する感謝を持ち続けたいです。
原田さん
落ち込んだ時に、大好きな動画を見たり創作することで元気がでるので「エナジードリンク」のような存在です。
米津玄師のPOP SONGで「素晴らしいほど馬鹿馬鹿しい。これぞ求めていた人生」というフレーズがありますが、まさにそれがITに当てはまっている気がします。
サッカーのW杯をライオンに見せても全く興味を示しませんが、世界中の何十億人が同時に視聴して熱狂したり、毎日7時間以上もPCやスマートフォンの画面を眺めるなんて異常でしかないのに、そこにロマンを感じます。
ITは「選択肢の塊」であり、全てのロマンが詰まっていると思います。
白戸さん
ITは最高のロマンだと思います。人類が誕生してから、言葉や文字が生まれて、今の時代に突入して、次にどんなものがくるのか考えるのは楽しみでもありますが、同時に怖さも感じます。
デジタルとアナログの両方を使ってロマンを生み出していけたらと思います。
まとめ
POINT
- ドルトンの「好きなことを自由」に学べる環境下で生徒達は、自主的にクリエイティブな活動に没頭している。
- 授業だけでなく部活動や生徒会活動など、日常的にTeamsやSlack、Zoom、Office全般を当たり前のように使いこなしている。
- 校則や上下関係がない「生徒主体」の環境や最新のデジタル機器が利用できる環境に感謝し、さらに成長しようという真摯な姿勢がみられる。
- デジタルネイティブの生徒達にとって、ITは身体の一部であり、生活から切り離すことのできない生命線であり、壮大なロマンである。
いかがでしたでしょうか?
ドルトン学園では、どんなに困難な状況であっても目標を見失うことなく臨機応変な強さを発揮する「ストリートスマート」を目指してきました。
情熱あふれる先生方の「コーチング」によって、生徒は自分自身と徹的に向き合って、自我を再構築することで自己肯定感を高め、多少の失敗にはへこたれない強い気持ちを育んできたようです。
実際に、今回のインタビューでも、それぞれが将来に対する夢や希望を臆することなく自分の言葉で語り、お金や潤沢な設備など恵まれた環境に頼ることなく、自分自身の力で勝負することにロマンを抱き、力強く日々を生き抜いています。
あらゆる制限を取り払い、生徒の欲求を最大限に吐き出してきたドルトン学園の生徒達は、近い将来、グローバルな社会に大きな旋風を巻き起こしてくれるでしょう。
TEXT:PreBell編集部
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