日々の体重に一喜一憂する時代は終わった。体重計でもバスマットでもない「近未来型ヘルスケア」
「日経トレンディ2023年ヒット予測BEST30」の「ステルス家電」部門で2位に輝いた「スマートバスマット」は、ボタンやディスプレイのないスタイリッシュな体重計。
開発者であるissin株式会社代表取締役の程涛氏は、2018年に照明一体化3in1プロジェクター「popIn Aladdin」を生み出しヒット商品に育て上げました。
そんな程氏の次なる挑戦は「家族のヘルスケア」。人生100年時代といわれるなかで何よりも大切な「健康」を無意識に管理できる体重計として、話題を集めているのが「スマートバスマット」です。
今回は、issin株式会社代表取締役の程涛氏に「スマートバスマット」が誕生した経緯や商品への思い、将来の展望についてお話をお伺いしました。
スマートバスマットは、体重計とバスマットの機能を持ちながら、最新のテクノロジーを搭載した全く新しい「近未来のヘルスケア」機器です。
一般的な体重計との最も大きな違いは「体重表示」がないことです。毎日の体重はクラウドに蓄積され、スマートフォンのアプリに記録されるので「乗る・測る・記録する」手間がありません。
毎日、お風呂あがりにバスマットに乗るだけで体重を計測し、クラウドに蓄積されたデータから、必要に応じて、アプリを介して通知が届くシステムなので、「ただ乗るだけ」で最適なヘルスケアが実現します。
Wi-Fi接続なので、毎回Bluetooth接続する必要もありませんし、USB充電方式なので電池不要で、フル充電で3ヶ月以上使用できます。
また、バスマットは速乾性に優れ、消臭効果の高い珪藻土を使用しています。
非常に人気が高い珪藻土ですが、ひび割れや冬の冷たさなどを気にされる方もいらっしゃるのではないでしょうか。
そのため、スマートバスマットはそういったデメリットを解消し、さらに洗濯機で丸洗いできるように開発しました。
2022年4月に開始した応援購入サイトMakuakeでは、体重計でもバスマットでもない「新しいヘルスケア機器」として人気を集め、プロジェクト開始から2ヶ月半で3,268万円を購入していただくことができました。
仰る通り、ダイエットが順調な時は体重計に乗るのが楽しみですが、食べ過ぎや飲み過ぎ、忙しすぎて運動できない日々が続き、理想の体型から遠ざかるにしたがって体重計を見るのも嫌になるものです。
日本では80%の家庭に体重計がありますが、私たちが調査会社と協力して実施したアンケートの結果では、女性は「現実逃避」、男性は「面倒臭い」という理由で計測しないことが分かりました。
そこで、「現実逃避」に関しては、測定値は体重計には表示せず、クラウドに保存し、適切な時期にアプリを介して通知するので、毎日の数字に振り回されて挫折しないようにしました。
また、「面倒くさい」に関しては、体重を計るためにわざわざ薄着になったり、しまってある体重計を床に設置するなどの手間を省くために、お風呂上がりにバスマットに乗るタイミングで体重を測れるようにしました。
基本的にお風呂は同じ時間に毎日入りますし、3秒バスマットに乗るだけなので、難しいことは何もありません。
例えば、「半年間体重を計らなかったら5キロも増えていた」という状況に陥ると、そこから元の体型に戻すのは大変です。
しかし、スマートバスマットは毎日乗るだけで、通知がきたタイミングで、俯瞰して現状を把握できますから、「この1週間は忘年会が続いて絶望的に太ったと思っていたけれど、前週比では0.9キロ増なのか。今日から気を引き締めて頑張るぞ」とモチベーションも上がるのではないでしょうか。
技術的に体脂肪の計測は可能ですが、実際の健康診断で体脂肪は計りませんし、筋トレする方にとって体脂肪は重要ですが、一般的なユーザーにおける「ヘルスケア」という観点から、体重とBMIを測定しています。
測定した体重とBMIを利用して、「ダイエットモード」や「健康維持モード」の他にも、子どもの肥満度を確認する「チャイルドモード」や赤ちゃんの成長曲線に対応した「ベビーモード」「マタニティモード」など多様なライフステージでの体重管理ニーズに応えるために、さまざまなモードを搭載しています。
私は、1度目の起業の時に父を急病で亡くしましたが、亡くなる直前に急激に痩せてしまいました。その後、医学的には「短期間に体重の5%が減少したら病院に行く」という指標があると知りました。
もし、父の体重を把握できていれば、必ず病院に行くように促していたでしょう。
さらに、母も乳がんを患い、私が日本にいたこともあり、付き添ってあげることもできなくて、1人で病院に行って手術を受けさせなければいけない状況はとても辛かったです。
こういった自分の体験を通じて、家族を守るためには「ヘルスケア」が何よりも重要であると痛感しました。
体重は、健康状態を示す「最もわかりやすい指標」ということから「スマートバスマット」の開発を決意しました。
遠方にお住まいのご家族が、スマートバスマットをお持ちであれば、初期設定でご自身が管理者になることで、クラウド上に蓄積された全てのデータを見ることができます。
もし、管理者でなくても、ご家族に招待するように依頼してもらえば、ファミリーメンバーとして追加されます。
家族のコミュニケーションツールとして、遠方で暮らすご両親と会話するきっかけになればと思います。
体重はプライバシーのひとつですから、思春期のお子さんがいらっしゃるご家庭や夫婦間で体重は知られたくないというケースも多いのではないでしょうか。
そういった場合には、「体重は非表示で共有」にすれば、体重の数値は表示しないで、変化の傾向が分かるグラフのみを共有できます。
先ほどお話したように、誰でもダイエットが順調な時は体重計に乗るのが楽しいですが、一度リバウンドすると憂鬱になるものです。
そんなときに、「最近、データが表示されないけれど何かあったの?」といった家族同士の会話から「もう一度頑張ってみよう」というきっかけになれば良いなと思います。
蓄積されたあらゆるデータから医学的に想定される疾患などについて予測できるようにしたいと考えています。
例えば、生活習慣病の大敵は「肥満」ですが、さまざまなサービスやダイエットを実行して一時的に痩せたとしても無理は続かないものです。
そこで、生活習慣を改善する具体的な方法を提案するデータを活用したコーチングなどを検討しています。
例えば、本来であれば、20分運動した方が良いのは分かっているけれども、実際に運動する時間がないケースも多いのではないでしょうか。
そういった場合、「いつもの1.5倍の速度で歩いてみましょう」「深夜の牛丼屋さんではサイズを小さくしてサラダも加えましょう」といった「これならできそう」という提案ができればと考えています。
現在、日本の平均寿命は世界一で、加速する高齢化社会に対する不安を感じている方も多いですが、怖いのは病気であって、健康であれば何も恐れる必要はないと思います。
健康で生命力に溢れていれば、年齢に関係なく、仕事も勉強も素晴らしい結果がついてくるでしょう。
「持続可能な健康」のために、若い頃から健康に投資をすることは非常に重要です。
「予防医学」と聞くと、わざわざコストをかけてまで取り組むのは面倒と考えがちですが、「スマートバスマット」を活用することで、家族みんなで助け合いながら無理なく継続していただけたらと思います。
また、将来的には、無意識のうちにモニタリングからコーチングまでできる「ベイマックス」のようなロボットを作りたいです。
「少子高齢化」は、日本のみならず世界の問題ですし、ヘルスケアに言語はありませんから、100万台、1億人の利用を目指しています。
今後「ヘルスケア商品」は、1社が独占するのではなく、大企業からベンチャーまであらゆる規模の企業で連携できればと考えています。
例えば、ベンチャーは機動力がありますが、ハード面の設備や資金調達が難しい一方、大企業は潤沢な資金やハードを持っていますが、採算が取れるかどうかなど社内での検討期間が長引く傾向があります。
お互いに助け合い、大学の研究機関などとコラボレーションしながら「100年先のヘルスケア」を実現できれば、より良い社会になるでしょう。
key point
- 「スマートバスマット」は、従来の体重計でもバスマットでもない「毎日の体重をクラウドで保存してアプリを介して適切に通知」する「次世代型」の体重計
- 体重計は日本の80%の家庭にあるが、女性は「現実逃避」、男性は「面倒臭い」という理由で計測を挫折する傾向がみられる
- 「ダイエットモード」や「チャイルドモード」など多様なライフステージでの体重管理ニーズに応えるために、さまざまなモードを搭載しヘルスケアをサポートしている
- 遠方の家族がスマートバスマット持っていれば、管理者または家族からの招待によりクラウドに保存された全てのデータを閲覧できる
- 将来的にそれぞれのライフスタイルに合わせたコーチングができる健康管理ロボットのようなものを作りたい
いかがでしたでしょうか?
人生100年時代を迎えるなかで、自ら健康を管理し、病気を未然に防ぐことができれば、年齢を重ねることを過度に恐れず、明るく楽しく元気に暮らせるのではないでしょうか。
テクノロジーの発達によってヘルスケアが普及すれば、高齢化社会によって膨大に膨らむことが予測される医療費軽減にもつながります。
しかし、最も基本的なヘルスケアである「体重管理」に関して、継続できずに諦めてしまうことが多いものです。
お風呂上がりに気軽に体重を計測できる「スマートバスマット」を利用して、家族とともにヘルスケアへの第一歩を踏み出してはいかがでしょうか。
issin株式会社 代表取締役 程涛
1982年中国・河南省生まれ。東京工業大学卒。東京大学大学院情報理工学系研究科創造情報学専攻、修士課程修了。ソニーの大ファンだったこともあり、日本への留学を決め、アルバイトをしながら語学専門学校で日本語を学び、大学に進学。
在学時に、大企業の技術者がメンターとなって創造的技術者を育成するプログラム「実践工房」を通して「ポップイン」という新しいサービスを発明、特許を取得。2008年、修士在学中に、東大のベンチャー向け投資ファンド「東京大学エッジキャピタル(UTEC)」の制度を利用し、popIn創業。2015年 中国の検索エンジン大手「百度(バイドゥ)」の日本法人バイドゥ株式会社と経営統合。
2017年 世界で初めてプロジェクターBluetoothスピーカー、シーリングライトを一体化した「popIn Aladdin」を開発。2018年にはクラウドファンディングで投資額1億円を達成。2020年5月には「popIn Aladdin 2」を発表し、同商品は予約販売だけで1万台を達成した。2021年1月、シリーズ累計販売台数10万台を突破し異例のヒット商品となる。2021年4月より現職。
<商品概要>
・製品名:スマートバスマット
・販売価格:16,980円(税、送料込)
・カラー(バスマット部):グレー、ダークグレー、グリーン
・サイズ:600 x 390 x 20mm
・商品機能:Bluetooth機能、専用アプリ(iOS / Android)、充電式(電源ケーブル・電源アダプター付属)
PHOTO:iStock
TEXT:PreBell編集部
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