テクニックだけじゃない!プロゲーマーが大切にしているネット回線の選び方をオンラインゲーム大会運営者が伝授!
近年、ゲームの世界ではユーザー同士が画面の中で戦って勝敗を決める、エレクトロニック・スポーツことe-Sportsが盛り上がってきています。
たとえば、戦略シミュレーションゲームの1ジャンル、MOBA(マルチプレイヤーオンラインバトルアリーナの略称。プレイヤーが2つのチームに分かれて、味方プレイヤーと協力し、敵チームの本拠地を破壊することを目的としたゲーム)の「Dota2」というゲームでは賞金総額が22億円を突破しています! ほかにも、2016年10月に行われた「League of Legends」世界大会では、賞金総額が5億3000万円に達しました。
こういった大会には、ゲームを仕事としてプレイするプロゲーマーが多く参戦しており、日々、画面の中で本気の戦いが繰り広げられています。この勝負の世界で勝ち残るにはどんなオンライン環境が必要なのでしょうか。e-Sportsの大会運営を行っている株式会社SPODIAの清水敬介(しみずけいすけ)さんにお話をうかがいました。
ネットワーク回線は速度よりも安定性が重要
──PC、スマホを問わず、近年のe-SportsではMOBAというジャンルが人気ですが、実際にプレイをする上で重要なことはなんでしょうか?
MOBAは、対戦相手と同じフィールド(画面)上でリアルタイムに行動するゲームです。タイムラグ(時間的なズレ)が発生したり、インターネット接続が途切れてしまうことは致命的。なので、安定した通信環境が重要です。PCであれば、有線で回線を使った方が安定した通信速度でプレイできます。スマホの場合は、屋外でのプレイであれば携帯電話キャリアのLTE回線、自宅であれば自身で契約しているWi-Fiが安定しています。ただ、LTE回線を使いすぎてしまうと通信速度制限がかかり、タイムラグが発生してしまい、正常にゲームがプレイできなくなる可能性が大幅にあがるので注意が必要です。
──通信速度は重要ですか?
せめて30~40Mbps程度の速度は欲しいですね。特にFPS(ファーストパーソン・シューターの略称。一人称視点の3Dシューティングゲーム)とMOBAの本格的なプレイは、チームの仲間とボイスチャットをしながらになるので、通信速度もある程度求められます。また、ゲーム中の画面を配信するなら80Mbpsはほしいです。ゲームの腕が上達すると、生配信をしたくなるプレイヤーさんがいます。ゲームの通信速度は気にしていても、配信の通信量に無頓着だと、タイムラグが発生してしまう場合があります。
プレイ中は常時、30~40Mbpsの速度での通信ができる回線選びが重要ですね。一般的な光回線やADSL回線は必ずしも提示している最高速度を保証するわけではない、いわゆるベストエフォート型であり、理論上考えられる最高の通信速度(理論値)で通信を続けられるケースはほとんどありません。状況によっては理論値の半分以下の速度に下がってしまうこともあります。ですので、回線速度が下がったとしても快適にプレイできるように、できるかぎり高速な回線を選んだほうがいいでしょう。
タイムラグをなくすために、ネットワーク回線のコンディションを整える
──回線の速度と安定性だと、どちらを重視するべきなのでしょうか?
実際に重視すべきは安定性なんです。リアルタイムで戦うe-Sportsだと、タイムラグが発生すると負けてしまいます。
──ゲーム内でタイムラグが発生すると何がおきますか?
タイムラグ中はゲームの情報を処理することができない状態なので、自分の操作しているキャラクターが動かなくなったり、突然キャラクターが別の場所にワープしたりする現象が起きます。キャラクターをプレイヤーが操作できないということは、対戦相手にとってはカカシと戦っているのと同じ状態。簡単にやっつけられてしまいます。
──自分だけゲームが止まってしまって、対戦相手はプレイができている状態なんですね。1人でのプレイなら自分だけの責任ですが、チーム戦だと味方の足を引っ張ることになりそうですね。
チーム戦のときには、タイムラグはさらに罪つくりです。チームメンバーの1人にタイムラグが発生すると、それが原因で負けてしまうことがあります。大会では、接続が切れたからといって、再試合が組まれることはありません。ですので、回線に関してはベストコンディションを維持する必要があります。タイムラグを発生させるプレイヤーはそれだけで信頼度が下がります。一度は仲間になれたとしても、タイムラグばかりだと嫌われてチームに呼んでもらえなくなることもあるでしょう。
──回線のコンディションを整えるために、たとえばPCであれば有線でプレイをする。スマホなど無線環境の場合は、Wi-Fiルーターの近くでプレイする、ほかの無線LAN機器の電源を切っておく、といった方法が考えられます。ほかに、どのような方法で回線のコンディションを保てばいいでしょうか。
ルーターの転送速度が速い製品を選ぶといいと思います。安価なルーターのなかには、転送速度が100Mbpsまでの製品がありますが、これで十分、と思うと危険です。あくまで理論値なので、もっと低い速度で通信が行われることもあります。ルーターがボトルネックとならないように、できるだけ理論値の高いルーターを選びましょう。もし購入を考えているルーターがあるときは、『製品名 実効スループット(実際に通信ができる最大値のこと)』で検索して、他の人が測った実測値を確認しましょう。
e-Sportsは自分が好きなゲームタイトルでのめり込もう
──現在、数多くのe-Sportsタイトルがあります。もしこれからe-Sportsの選手を目指す場合、どのゲームからはじめたらいいでしょうか?
自分が好きなゲームでチャレンジするのがいいです。誰かにやらされているという感覚だと、上達しないかもしれません。プレイしていて楽しいと思えるからこそ、どんどん上手になっていくし、さらに上手くなりたい、とのめり込みます。
──ありがとうございます。最後に上達のコツなどがあれば教えてください。
上達するには、同じゲームをプレイしている人の動画配信や、YouTube動画などを見ることも必要です。夜の22:00頃は多くの人がネットを利用するので回線速度に影響が出やすい時間帯です。そんな時間はチームメンバーと戦略を練ったり、動画を見て勉強する時間に充てるといいですね。
──好きこそ物の上手なれ。そして、良質なネットワーク回線とWi-Fiルーターを用意すること。これがe-Sportsの選手としてステップアップするための秘訣なのですね。
株式会社SPODIA 代表取締役
清水敬介
16歳の頃から主に対人対戦型オンラインゲームをプレイ。e-Sports大会の盛り上がりを見て学生時代に起業。プロゲーマーという職業をもっとメジャーなものにするために、スマートフォン・タブレットでプレイできるモバイルゲームのe-Sports大会サービス「GAMERS LEAGUE」を運営・開催している。
TEXT:武者 亮太
PHOTO:合田 和弘
この記事を気にいったらいいね!しよう
PreBellの最新の話題をお届けします。