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2019.02.28 日常の「音」があなたの脳をマッサージ?人気急上昇中の「ASMR」とは

近年、ASMR(Autonomous Sensory Meridian Response)という言葉が流行り始めていることをご存知でしょうか? 「JC・JK2019トレンド予測」の「コトバ部門」にもランクインされるなど、ここ最近、若者から注目を浴びつつあります。

ASMRとは?

ASMRは、「ペンで文字を書く音」「紙をめくる音」など、普段私たちが何気なく聞いている小さな音をマイクで録音し、それをヘッドフォンで聴くことで、安らぎを感じたり、ゾクゾクしたりする反応や感覚のこと。その気持ち良さから“脳のマッサージ”とも言われています。

…と、言葉だけで説明されてもよくわかないですよね。YouTubeには実際にASMRの動画が投稿されていますので、まずは動画をご覧ください。

いかがでしょうか。このなんとも言えない感覚がASMRです。海外では当たり前のように認知されている動画のジャンルで、日本でもブームの兆しが見えています。

そこで今回は、この動画の投稿者にして投稿歴6年目になるユーチューバーの華凛さんに、ちょっと不思議なASMRの世界を教えていただきます。この記事を読み終える頃には、あなたもASMRの虜になっているかも……?

「焚き火の音だと、どこか遠い感じがする」

「焚き火の音だと、どこか遠い感じがする」

──いつからASMRを好きになったのでしょうか?

子どもの頃からずっと音フェチでした。もちろん当時はYouTubeなんてなかったし、ASMRという言葉も知りませんでした。日常で何気なく聴こえてくる、本をめくる音や、キーボードのタッチ音を聴いて「いい音だな、気持ちいいな」って思っていたんです。

──当時は収録された音からではなく、生の音から心地よさを感じていたのですね。

はい。学校に通っていた頃は「ノートや黒板に書く音」が好きでした。「紙をめくる音」も好きだったので、試験中も眠くなってしまうことも(笑)。

──華凛さんはASMRを視聴すると、ゾクゾクするというより眠くなる、と。

そうですね。だから寝る前に聴くことが多いです。私はASMRを聴くと眠くなるのですが、ゾクゾクするという方もいますし、落ち着くという方もいますし、反応は人それぞれのようです。

──他のASMR愛好家はどのような楽しみ方を?

私の動画の視聴者は10代~20代前半が多いんですけど、皆さん勉強するときに聴くみたいですね。環境音を聴くようにASMRを感じているというか。作業用BGMとして流していると、集中できるみたいです。

──作業用BGMとして環境音を聴くなら、焚き火の音や川のせせらぎでもいいような気がします。なぜそこであえて人間の出す音を聴くのでしょうか。

なぜでしょうか(笑)。たぶん焚き火の音だと、どこか遠い感じがするんじゃないですか? 私たちが普段出している音のほうがより身近に感じるというか。音を通して、その先にいる「人」の存在を感じているのだと思います。人間の出す音って、人によって全然違うんですよ。

──たとえば、「本をめくる音」でも違いはある?

ゆっくりとページをめくる人もいれば、雑に急いでめくる人もいます。音にはその人の個性が現れるんです。だから、ASMRのファンの人も、その人の出す音が好きで、YouTubeをフォローしているのだと思います。

「焚き火の音だと、どこか遠い感じがする」

──ASMRの動画には、どんなジャンルがあるのですか?

以前は「メイクポーチをあさる音」というように、ピンポイントの音が多かったんですけど、今はかなり凝っていて、いわゆるロールプレイの動画も多いですね。

──ロールプレイ?

投稿者がお医者さんになって、見ている人は患者さん、という設定で施術を受けてみるなど、そういうシチュエーションも含めてASMRを楽しんでもらおうというものです。ストーリー展開もあって、小道具とか衣装を揃える方もいますよ。

「ASMRを聴くようになって、すぐに寝付けるようになった」

──華凛さんは、なにがきっかけで自分からASMRの動画を配信しようと思ったのですか?

一時期、寝付きが悪くなることがあって、布団に入ってもなかなか眠れないことがありました。そんなときに、ASMRを聴くようになって、すぐに寝付けるようになったんです。

当時は3分くらいの短い尺の動画が多かったのですが、私と同じように眠りにつくために、長い尺の動画を求めている人も多いのではないかと思いました。そこから自分でやってみようと、動画を撮り始めたんです。

──ASMRを視聴してみると、録音にこだわっているように感じます。機材も高価なんでしょうね。

最初に投稿したときは、機材と言えるほどのものではなくて、スマホで撮影していました。専用のマイクも繋がずに、ただ部屋の窓を閉めて、静かな環境で撮っただけです。何も撮影に関する専門的な知識はありませんでした。

──それで撮影できてしまうものなんですね。今も同じですか?

今はこのミラーレスのカメラを中央に置いて動画を撮影しています。で、これはICレコーダーなんですけど、専用のマイクと繋げて録音していますね。

「ASMRを聴くようになって、すぐに寝付けるようになった」

──ずうずうしいお願いですが、ここで実際にASMR動画の撮影風景を見てみたいのですが……。

はい、いいですよ。ここだと周りの音も入ってしまうと思いますが、撮影の雰囲気はわかると思います。

「ASMRを聴くようになって、すぐに寝付けるようになった」
「ASMRを聴くようになって、すぐに寝付けるようになった」
「ASMRを聴くようになって、すぐに寝付けるようになった」
「ASMRを聴くようになって、すぐに寝付けるようになった」

取材当日に収録を実践してもらった映像がこちら。今回は周囲の音が入っていますが、ふだん撮影する際は音に配慮して収録しているとのこと。

──いつもはご自宅で撮影しているんですか?

はい、自分の部屋で同じようにセットを組んで撮影しています。家族にはASMRの動画配信していることを話していないので、もし部屋にこんなセットが組んであるのを見たら、驚くでしょうね(笑)

「わざと出した音って、逆に全然気持ち良くない

──正直なところ、ネタが尽きることってないですか?

私もいつかネタが尽きるんじゃないかって思ったこともあります。でも、ひとつの物でも無限に音の出し方があるんですよね。たとえば「メイクポーチをあさる音」でも、人によって手癖や独特のリズムや、その人にしか出せない雰囲気があります。だから自然と音が違ってくるんですよね。

──たしかに。ASMRを聴く側から作る側に変わって改めて気づいたことはありますか?

どうしても音を出すことを意識してしまうのですけど、わざと出した音って、逆に全然気持ち良くないんですよね。撮影のためにわざと音を出すのではなくて、あくまで自然に生まれた音というか…普通に物を置いて、いつも通りに触るように気をつけていますね。

──ということは、納得がいかなかったらリテイクすることも?

はい。自分で聴いて、わざとらしいなって思ったら撮り直すこともあります。

──これからどんな動画を投稿していきたいと思っていますか?

もっと凝ったロールプレイの動画を作りたいなと思っています。今までは自分が用意できる範囲の中で小道具を作って、実際のシチュエーションに近づけられるように演出していました。今後は、たとえば本物の衣装を用意したり、現地まで行ったりして、撮影してみたいですね。リアルを追求して、本物に近い動画を作りたいと思います。

──華凛さんの中にはリアルというキーワードがあるのですね。

そうですね。見ている人が、本当にその場にいるかのような体験をしてほしいですね。

──是非、華凛さんのリアルな動画、視聴してみたいです。ありがとうございました!

華凛さんが語ってくれた、とても不思議で魅力的なASMRの世界。ASMRの撮影中は周りの空気が一変し、そこにいるだけでも心が浄化されるような不思議な体験をすることができました。

さまざまな音や情報が飛び交う現代。そんな状況に疲れた人々が、いまASMRを求めているのかもしれません。

TEXT:PreBell編集部
PHOTO:河合信幸
MOVIE:華凛

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