漫画の世界が現実に!? 世界大会、リーグ戦と人気急上昇中のテクノスポーツ「HADO」とは【ITとスポーツの今・テクノスポーツ編】
テクノロジーとは無縁のイメージだったスポーツの世界。しかし、最近では「プレイ」「観戦」など、スポーツのさまざまな面とテクノロジーが融合し、スポーツをよりエキサイティングに楽しめるようになっています。「ITとスポーツの今」について、全3回にわたってレポートする本連載。初回は「テクノスポーツ」についてです。
まるで漫画の世界! テクノスポーツHADOを体験
来年はオリンピックイヤー。スポーツといえば、オリンピック競技のように歴史ある種目が一般的です。しかし、盛り上がりの裏で、最近では「テクノスポーツ」と呼ばれる最新技術を駆使した新たなスポーツが注目されているのだとか。
テクノスポーツとは一体…? まるで格闘ゲームのように自分の手から必殺技を繰り出し、対戦する新しいスポーツ「HADO(ハドー)」の開発・運営をするmeleapさんに伺いました。
いざ、HADO FIGHT!
再開発が進む日比谷の高層ビル内にあるmeleap社。本当にここでHADOを体験できるの?…と一抹の不安を抱えていると、案内されたのは執務スペースの隣の大部屋。
ありました! お目当てのHADOのコート。高層ビルの一室にこんな空間があるとは…。
HADOのレクチャーをしてくれたのは、meleapで広報を担当する加藤さん。HADOは競技スポーツとして大会も頻繁に開催されていて、加藤さんは大会でのMCも務めているそうです。
格闘ゲームのようにビームで相手を攻撃できる、それを実現するのが写真でも装着しているヘッドマウントディスプレイとアームセンサーです。
◆HADOとは?
目の前の風景にビームなどの架空の映像を映し出す「ヘッドマウントディスプレイ(写真奥)」と、体の動きを伝える「アームセンサー」を装着。フィールド内で自由に動きながら「エナジーボール」というビームで相手を攻撃したり、「シールド(盾)」で防御したりと、アニメやテレビゲームさながらの世界観を楽しむことができます。
◆HADOのルール
相手に表示される4つの的を狙ってエナジーボールを発射。全ての的に当たるとポイントが入ります。制限時間80秒間で、ポイントをより多く取ったチームが勝利です。
1対1/2対2/3対3と、最大6人まで同時プレイが可能。ちなみにコンピューター対戦もできるので、ひとりでも楽しむことができます。
今回はコンピューター対戦で体験。相手のレベルは調節が可能なので、初心者向けのレベル2にしてもらいました。加藤さんの「HADO FIGHT!」の掛け声と共にスタート。
胸のあたりでガッツポーズのように腕を立てると、エナジーボールを出すためのエネルギーがチャージされます。エネルギーが溜まったら軽くパンチをするように腕を前に出し、エナジーボールを発射。
腕を下から上に振り上げると、目の前に四角い大きな壁、「シールド(盾)」が出現します。シールドが出ている間は、相手の攻撃を受けることがありません。シールドを出せるのは1ゲーム3回まで。
自分の動きと同時にエナジーボールが飛んでいく様や、相手のエナジーボールがこちらに向かってくる様は、テレビゲームより圧倒的な迫力があり、リアルスポーツとも違った臨場感があります。
予想以上に敵のエナジーボールが連続で飛んでくるし、ボールも思っていたより大きく、よけるのに必死。そして何より、攻撃がなかなか敵に当たらない…。
夢中でプレイしているうちに、あっというまに試合終了。1回目は、まさかの1ポイントも取れずに惨敗…。
終了後、加藤さんからアドバイスをいただきます。初心者はビームを出すときの動作に力を入れすぎてしまうことが多く、それゆえ無駄に疲れたり、ビームの方向が定まらなくなったりするそう。
ちなみにパンチの手は、グーでもパーでも、1本だけ指を立てても、自分好みのスタイルでOKとのこと。無駄な力が入らないよう、次はパーに変えることにしました。
どうしても勝ちたくて、再度挑戦(対戦コンピューターのレベルは1に下げてもらいました)!
そして2度目の「HADO FIGHT!」
加藤さんのアドバイスは効果てき面で、ついに待望のポイントをゲット。攻撃が決まった時の爽快感は格別です。バレーボールならスパイクが決まった、バスケやサッカーならシュートを決めたときの感覚に近いかもしれません。
——気づけば3-1で勝利。地味にめっちゃ嬉しい。
わずか80秒間、されど80秒。立ってしゃがんで動き回って、腕を振って…これは紛れもなく全身運動。
普段あまり運動をしない方は、筋肉痛になることもあるのだとか。運動が苦手で運動不足歴10年を越える筆者は、終わった頃には息も上がり気味、膝は若干笑っていました。
テクノスポーツの魅力を実感
試合終了後の疲労感はありましたが、それ以上に楽しさが上回っていたことは確かです。
HADOはしゃがむなどして相手の攻撃をよけるため、体は柔軟な方が戦いやすいという点はありますが、リアルスポーツとは違い、筋力やパワー、体格差といったものは関係ありません。
性別や年齢に関係なく、多くの人が楽しめるのも魅力だと感じました。
攻撃する・シールドで防御する・相手の攻撃をよけると、基本的な動きがシンプルで、細かいルールもなく分かりやすいという点も印象的。普段から体を動かしている方はもちろん、運動はあまりしない方もチャレンジしやすいと思います。
HADOの公式戦は3対3のチーム戦。選手ともなれば、攻防の仕方や全体的な動き、フォーメーションなど、高度なテクニックや戦略が求められます。
こういった点はリアルスポーツやeスポーツとも共通します。そして、勝つ喜びや負ける悔しさ、チームメイトと協力する、上達するために努力するといった点も、スポーツとしての共通点だと思いました。
HADO開発のキッカケは“かめはめ波”を撃ちたかったから
リアルな格闘ゲームのようなものをスポーツにしてしまおうという奇想天外な発想。そもそもなぜHADOを開発しようと思ったのでしょうか? HADOの生みの親の1人、取締役CCOの本木さんにお話を伺いました。
PreBell編集部:HADOを開発しようと思ったキッカケを教えてください。
本木さん:代表の福田の「かめはめ波を撃ちたい」という子どもの頃の夢が始まりです。ARを使ってかめはめ波を実現しよう、それを使ってゲームのようなものを作ろうと、スタートさせました。
PreBell編集部:そして、かめはめ波が実現したんですね! 開発時、どんなことに苦労されましたか?
本木さん:たくさんありますが、ひとつは競技レベルになると、人の動きに対する遅延が少なからず生じることですね。今も研究開発を重ね、レスポンスの向上を目指しているところです。
ゲームであれば許される曖昧さも、スポーツ・競技となると許されなくなります。より競技熱が上がっている今は、正確さが求められていますね。
PreBell編集部:動きと映像がピタッと一致しているように感じましたが、選手レベルとなると、そういったこともあるのですね…。競技としても盛り上がってきて、大会も頻繁に開催されていますよね。
本木さん:今あるHADOの体験施設や弊社会場で開催される小さな大会は、シーズン中ほぼ毎週開催しています。トップチームが集う日本選手権・ワールドカップといった大きな大会は年に3回開催されており、ワールドカップに至っては報酬総額300万円となっています。
近い将来、HADOをプロスポーツへ
PreBell編集部:競技としては3対3で行うチームプレイですが、トッププレイヤーの方たちはどのくらい練習しているのでしょうか?
本木さん:大きな大会前など時期によっても変わってきますが、実際にプレイする練習は多い時で週5回、1日2〜3時間くらいですね。場合によってはそれ以上もあると思います。施設での練習以外では、動画を見て研究したり、チームで作戦を考えたりといったこともされていますね。
PreBell編集部:現在、競技としてトップを目指している選手はどのような人たちなのでしょうか?
本木さん:皆さん今はお仕事や学業と並行して練習していますが、プロスポーツ化も視野に入れています。まだまだ課題も多いですが、HADOのプロ選手として活躍し、生計を立てられるような環境を作りたいですね。テクノスポーツ独自のマネタイズ方法もあると思うので、それを取り入れながら拡大を目指しています。
PreBell編集部:HADOは画面で観ても迫力がありますし「観て楽しみたい」という方も多そうですね。そういった方向けの取り組みはありますか?
本木さん:小さな大会も含め、試合を毎回YouTubeで配信していますし、賞金獲得を目指す参加型YouTube番組「HADO BEAST COLOSSEUM」もあります。プレイヤー・観戦者共に増やしていきたいですし、今後は世界中のメディアと連携して潜在視聴者数を増やしていきたいですね。
テクノスポーツは「テクノロジーがあることを前提に作られたスポーツ」
PreBell編集部:今後、HADOのようなテクノスポーツは他にも増えていきそうですね。
本木さん:どんどん増えてくると思います。その実現までの期間をいかに短くできるか。テクノスポーツを増やすためには、まず我々が事業として成功させることが必要です。新しいテクノスポーツが誕生した際には、ぜひ一緒に盛り上げていきたいですね。
PreBell編集部:最後に、本木さんの思うテクノスポーツとは何でしょうか?
本木さん:ARを使ったものだけがテクノスポーツではありません。僕が考えるテクノスポーツの定義は「テクノロジーがあることを前提に作られたスポーツ」です。
例えば、無限にエナジーボールが出せる、なかったところにシールドを張れる。そういったテクノロジーがないとできないもの、今まで人類が体験したことのないもので作られるルールというのが、完全に今までのスポーツとは違うところです。そこに楽しさが生まれるのだと思います。
HADOの体験施設は日本国内をはじめアジア、ヨーロッパ、中東など計23ヶ国、約50施設です。まだオリンピック競技にあるようなスポーツ種目と比較すれば、まだこれからのスポーツです。
しかし、テクノロジーを利用することで、観戦者もプレイヤーもエキサイトさせることができるHADOは、これからも競技人口を増やしていくでしょう。
もしかすると、eスポーツがオリンピック種目になることが噂されているように、テクノスポーツがオリンピック競技になる、なんていう未来があるかもしれません。
まだ歴史の浅い競技。今から本格的にはじめれば、いずれはオリンピアンに…なんてことも? 興味のある方は、まずはHADOの公式サイトからお近くの体験施設を探して、是非チャレンジしてみてくださいね!
TEXT:PreBell編集部、浅野智恵美
PHOTO:森田輝
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