スマートオフィスとは?IoT技術の導入で得られるメリットをご紹介
Internet of Things(略称:IoT)とはモノにセンサーなどを搭載し、インターネットで管理することです。2021年時点ではIoT技術が導入された製品は多く作られ、複数の機器を採用したスマートオフィスと呼ばれる言葉まで生まれています。
スマートオフィスで働くと、社員にはどのようなメリットがあるのでしょうか。本記事ではスマートオフィスのメリットや導入時の注意点を主にご紹介いたします。
POINT
- スマートオフィスはIoT技術が導入されたオフィス
- スマートオフィスにはさまざまなメリットがある
- IoT技術を導入するならセキュリティ面は特に気を配る
スマートオフィスとは、IoT技術の導入で最適化された環境を提供するオフィスです。職場の環境調整や人員配置、作業効率化などさまざまなメリットを利用者に与えてくれます。
例えば会議室の空室状況を管理したり、室温を検知して空調を自動調整したりとさまざまな機能を持っています。職場をスマートオフィス化することにより業務のムダが減る、社員の作業効率が上がるなど働き方改革にもつながるでしょう。
オフィスをスマート化するという事は、インターネットを通じてさまざまな情報をやり取りする環境を構築することです。そのため、IoTの導入にあたっては、なによりも強固なネットワークの構築が不可欠です。
安全にIoT技術の導入を行うには、下記の要素が必要です。
●IoT技術を導入する際に必要な要素
・円滑にデータ通信を行うためのネットワーク構築(VPN)
・データ漏えいやハッキングに対するセキュリティ対策
既存の公衆回線を利用し、本社や支社、社員のスマートフォンなどの間に専用のネットワークを構成する手法としてVPN(バーチャル プライベート ネットワーク)があります。VPNは安全に情報交換を行うための装置ともいえ、仮想の専用回線でデータをやり取りすることで、さまざまなリスクを回避します。外部からはアクセスができないだけでなく、VPNで通信したデータは暗号化されるため、第三者には簡単に読み取れません。
とはいえ公衆回線を経由するVPNは、大枠で見れば不特定多数の人間が利用しているということを忘れてはいけません。インターネット接続のリスクを十分理解し、データのアクセスログやサーバーのアクセス権限設定などの対策も忘れないようにしましょう。
IoT技術を導入するメリットをご紹介いたします。主に下記4つのメリットが挙げられます。
1つ目は業務の見直しができる点です。IoTでよく活用されるネットワークカメラを例に見てみましょう。
ネットワークカメラを利用すると、遠くの支社に勤める社員の働く様子を撮影し、レコーダーやPCに映像を録画できます。この映像をもとに本社と支社の働き方を比較し、業務の改善や勤怠管理の見直しをはかることができます。
活用はオフィスだけにとどまりません。ネットワークカメラで撮影した高品質な映像は、AIを使った顧客解析に活用することもできます。これはどういうことかというと、防犯カメラとしての役割はもちろん、店内の売り場に設置するとAIで店内の混雑状況や顧客の年齢層などを分析することができます。顧客の行動パターンを可視化することで、売り上げアップを狙える商品配置など、販売戦略に役立てることも可能です。
遠隔地で多くの店舗を展開する大手ホームセンターや家電量販店では、防犯カメラのクラウドサービス『safie』を導入しています。広大な面積を誇る店舗内での死角管理や万引き抑制など、防犯をはじめ、その鮮明な映像をマーケティングや社員教育などにも役立てています。またレジの混雑状況を解析し早めに通知させることで、レジ担当者の配置対応を効率的に行うなどの業務改善にも積極的に活かされているようです。
2つ目のメリットは意外に思えるかもしれませんが、人間関係の活性化が図れるということです。オフィスのスマート化は業務の効率性には効果がありそうですが、人間関係や人の「気持ち」といった数値化できない事象に関しては一見不向きな印象をもたれがちです。
一例を見てみましょう。日立製作所は、名札型のウェアラブルセンサーを開発し、組織の活性度や社員の幸福度といったものの可視化を実現しました。プライバシーを考慮し、このデバイスには音声や詳細な位置情報などを記録する機能はありません。搭載されている加速度センサーと赤外線センサーから、誰と誰がどこで会話したか、その結果幸福度はどの程度であったか、といったデータを収集します。
さらにそれらのデータをAIによる分析と組み合わせ、具体的にどのような行動をとれば人間関係が改善され、組織が活性化するのかといった具体的なプランを端末で確認できる「組織活性化支援サービス」をはじめました。これは「生産性が上がっているとき人は無意識に細かく、多様性のある動きを長く続ける」という行動パターンに基づいたものです。
オフィスの人間関係は、そこで働く社員のストレスに大きく関係する要因です。この問題を解決するためには、アンケートを実施するといった方法が考えられますが、アンケートはとかく主観的・感覚的なものであり、多くの社員の環境改善に活かされる対策をとることは難しいものです。
しかしこのようなデバイスによるデータ収集を一定期間、さまざまなグループを対象に行えば、社員の個人的な行動パターンの集積が最終的には社員全体をカバーし得るビッグデータとなり、最適な対策をAIが提案してくれるという仕組みです。
これはほんの一例に過ぎませんが、IoTを活用したオフィスのスマート化は、業務効率の改善だけでなく人間関係や組織の活性化に役立つという効果も期待できるのです。
3つ目は社員の健康に気遣える点です。例えば照明や机、空調管理などをIoT化することにより実現します。
照明にIoTを取り入れると、人がリラックスしやすい明るさや色温度に、空調は室内の温度や湿度を自動で調整してくれます。机に関しては利用者の姿勢に変化を持たせるために机の高さを自動で変化させ、腰痛など生活習慣病の予防にひと役買っています。
該当する商品例としてミシガン州にあるオフィス家具メーカーHerman Miller社が販売しているスマートデスク。スマートフォンと連動させて机を昇降できるようになるため、同じ姿勢で働くのを防いでくれます。
スマートデスクの導入で意識せずに体を動かせるでしょう。
一方オフィスを離れ慢性的な人手不足に直面している建設現場では、作業員に腕時計型の端末を装着してもらい、現場の湿 / 温度の管理や作業員のコンディションの把握、作業中の転倒や落下、あるいは静止などの危険状況をアラームで管理者に知らせるなど、IoTの技術が安全や健康管理に活かされています。
また資材にIC端末を取り付けて在庫の自動管理をしたり、危険な重機や建機などを自動化するなど、さまざまな場面でIoTが現場とオフィスを繋ぎ、重大なヒューマンエラーによるケガを未然に防いでいます。
4つ目は社員の時間を有効に使える点です。IoT技術は利用者の手間を省くのが得意で、例としては下記が挙げられます。
■IoT技術の採用で手間が省ける例
・会議室の利用や予約状況をオンラインで把握できるようにする
・単純な入力作業などの簡単な仕事を自動化できる
・取得したデータを分析して効率的に動かせる人員配置ができる
・スマートマットの通知でオフィスの備品を無くなる前に追加購入できる
煩雑な日常業務の手間を省くと、社員は自分の行うべき本業に集中することができます。またムダを省き効率的な働きかたが定着すると、これまでに無かったような新しいアイデアが生まれることも期待できます。
該当する商品例として会議室やミーティングルームを効率的に活用できる『Robin』。搭載されたセンサーが室内に誰がいるのかをリアルタイムで確認し、iPhoneやAndroidアプリから閲覧できます。
会議室やミーティングルーム内が可視化できることで、急な会議や面談があっても部屋を探し回る必要がなくなります。
便利な部分が目立つスマートオフィスですが、IoTを導入する際に気をつける点があります。ここからそれぞれご紹介いたします。
1つ目はIoT技術を導入する際の試算についてです。
スマートオフィス化を急ぐあまり、さまざまな機器を一気にIoTで連携しようとすると、多大な費用がかかってしまいます。ですから自社にとっての優先順位は何か、どのような改善を求めるかについて慎重に検討する必要があります。
またIoT技術の導入は、全てのものをデータ化し効率良く情報収集ができるメリットがあると同時に、膨大な顧客データを預かることになるため、以前よりセキュリティを強化する必要があり、想定よりもコストが大幅に増える場合があります。導入を検討する場合は、広い視野と計画性を持ってコストを試算する必要が出てくるでしょう。
2つ目はセキュリティに関する問題です。
IoT技術を有効活用する場合は、常時インターネットにつなげなければなりません。外部からのハッキングなどのサイバー攻撃を受ける可能性が考えられるため、セキュリティ対策は必須です。
たとえサイバー攻撃の対策ができていても社員ののセキュリティ対策が甘ければ、外部のフリーWi-Fiを使用した際、端末がマルウェアに感染する可能性も考えられます。マルウェアに感染した状態の端末でスマートオフィスにつなげてしまうと、重大な情報漏えいが発生する恐れがあります。
オフィスのセキュリティ対策はもちろんのこと、社員一人ひとりがセキュリティ意識を高く持つことも、スマート化には欠かせない要素です。
3つ目は社員のモチベーションが低下する可能性がある点です。効率良く業務を進めるためにスマートオフィス化に賛同する社員もいますが、中には新しい技術の導入に抵抗のある社員もいるでしょう。
これまで使っていたパソコンなどの仕事道具を新しいデバイスに切り替えると、使い方に慣れるまで業務負担が増えてしまうでしょう。業務効率化のために導入したはずなのに業務負担が増えてしまったとなると社員の意識がスマート化についていけず、モチベーションが低下する可能性が考えられます。
IoT技術の導入によるメリットやデメリットを把握した上で、社員の意見を考慮しつつ、スマートオフィス化を検討すると良いでしょう。
4つ目は通信環境を整備しなければならない点です。
IoTによるオフィスのスマート化はインターネット環境が整っていなければ機能しないものです。導入前に現在の通信速度に遅延はないか、セキュリティ対策や契約内容が昔のままになっていないかなど、オフィスのIT環境を把握しておくことをおすすめします。
また、本社と支社のような拠点が複数ある場合は安全性の高いVPNを使うのもひとつの選択肢です。VPNはその機能を搭載した装置を使い、インターネット上に仮想の専用回線を設けることができます。専用線よりもコストがかからず、通常のインターネット回線契約を利用するため導入しやすいというメリットがあります。またデータを暗号化しやり取りするため、セキュリティの面でも安心して利用することができます。
今回はスマートオフィスのメリットや導入時の注意点を主にご紹介いたしました。IoT技術を導入するには円滑にデータ通信を行うためのネットワーク構築と、徹底したセキュリティ対策をとる必要があります。
導入するための初期費用や環境改善の手間などは避けて通れませんが、そのような事前の準備にかかる時間をはるかに上回るほどのメリットを得られます。社員の満足度を向上させる働き方改革にもつながるので、導入を検討・意見してみるのも良いでしょう。
PHOTO:PhotoAC/Unsplash/Pixabay/Pexels
TEXT:PreBell編集部
この記事を気にいったらいいね!しよう
PreBellの最新の話題をお届けします。