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2022.02.18 5Gのサービス「ローカル5G」と「プライベート5G」どんな違いがある?

携帯電話の新しい通信規格「5G」は利用できるエリアが広がっています。すでに5Gの電波を利用している人も多いことでしょう。

5Gならではの特徴的なサービスとして「ローカル5G」があります。また、2022年度からは「プライベート5G」のサービスの提供が始まる予定です。

ローカル5Gやプライベート5Gとはどんなサービスで、どのような違いがあるのでしょうか。5Gの普及が進みつつある今こそ、これらのサービスについて理解しておきましょう。

そのほか、ローカル5Gやプライベート5Gに関連して、パブリック5Gについても説明します。

POINT

  • ローカル5G:自社内向けの5Gのネットワーク 構築・運用は自社で行う
  • プライベート5G:自社内向けの5Gネットワーク 構築・運用は携帯電話会社が行う
  • パブリック5G:一般の利用者向けの5Gネットワーク

5Gとは

5Gとは、携帯電話など移動通信端末向けの通信規格の一種です。特徴的な点として下記の3種類があげられます。

・高速で大容量の通信が可能
・遅延が発生しにくい
・より多くの端末に接続可能

5Gの整備が進んでいる背景は、今後、インターネット通信を利用した機器が大幅に増えると想定されているためです。

現在ではあらゆる分野で技術革新が進んでいますが、これらの技術を活用するにあたっては、高速かつ大容量のインターネット通信が必須となります。

例えば、スマート家電や自動運転車などIoT機器を利用する場合や、VRやメタバースを利用する場合、5Gを利用すれば通信がスムーズに行われます。

5Gが整備されれば、最新技術を活用したサービスが今まで以上に利用されることでしょう。

なお、5Gには「ローカル5G」と「プライベート5G」と呼ばれるネットワークサービスがあります。

以降の項目では、これらのネットワークサービスについて説明します。

ローカル5Gとは

光回線の速度は、多くのサービスで下り最大1Gbpsとなっています。なお、この速度はあくまでも最大値であり、実際の速度とは異なります。

光回線の実際の速度については、インターネットの通信速度を比較できる測定サイト「みんなのネット回線速度(光回線の通信速度レポート一覧)」を参照します。

それによると、光回線の実際の速度は200~500Mbps程度となりました。

速度が100Mbpsであれば、オンラインゲームや高画質動画の視聴を十分に楽しめるレベルです。そのため、光回線ならインターネットが快適に利用できます。

ローカル5Gを利用するメリット

ローカル5Gを利用するメリットとしては、下記があげられます。

・セキュリティ対策をより万全にできる
・通信障害を防ぎやすくなる
・特定の場所にネットワークを構築できる

セキュリティ対策をより万全にできる
ローカル5Gを利用することで、セキュリティ対策をより万全にできます。

ローカル5Gは企業または自治体が独自に構築するネットワークであり、電波が届く範囲を決められます。

例えば、電波の範囲を企業内、または自治体の施設内にとどめておけば、通信の内容が外部に漏れてしまう可能性は低くなります。

つまり、ローカルネットワークとはネットワーク環境が外部から遮断されている状態であるため、セキュリティの強化に適しています。

通信障害を防ぎやすくなる
また、ローカル5Gを利用すれば通信障害を防ぎやすくなります。これが可能となるのは、ローカル5Gに割り当てられる周波数帯と一般的な5Gの周波数帯が異なる点が関係しています。

一般に利用されている周波数帯の場合、大勢の利用者が同じ周波数帯を用いて通信します。

そのため、通信が混雑した場合は、通信がつながりにくくなることがあります。

その点、ローカル5Gなら一般の周波数帯とは異なるため、一般的な周波数帯で通信障害が発生したとしても通信が可能です。

通信障害のリスクを回避するなら、ローカル5Gが適しています。

特定の場所にネットワークを構築できる
ローカル5Gを利用する免許を持っていれば、特定の場所にネットワークを構築することもできます。

例えば、工場で生産された製品の検品作業を自動化するために、高画質の画像を認識するAIを活用するとしましょう。

ローカル5Gを利用し、工場に5Gのネットワークを構築すれば、工場内で生産されている製品の画像が外部に流出する可能性が低くなり、セキュリティ対策を強化できるメリットがあります。

ローカル5Gを利用するデメリット

ローカル5Gを利用するデメリットとしては、下記があげられます。

・通信コストが高くなる
・免許の取得が必要となる
・状況によって通信速度が低下する場合がある

通信コストが高くなる
ローカル5Gの導入には少なくとも数千万円、設備を充実させると数億円程度かかる場合があります。

そのため、資金に余裕のある企業でなければ、ローカル5Gの導入は難しいといえます。

なお、ローカル5Gを導入するメリットは、セキュリティ対策の強化や通信障害を防げる点です。

ローカル5Gの導入は高コストとなりますが、導入するかどうかは、コストをかけることで十分なメリットを受けられるかどうか、という観点で判断しましょう。

参考:5G設備の導入事業者は税制が優遇される

ローカル5Gの導入を検討しているなら、5G導入による税制優遇の制度を活用しましょう。

総務省は、特定の要件を満たして5G設備を導入した事業者に対して、税制を優遇する制度を設けています。

5G投資額の一部が法人税から控除されるほか、5G設備にかかる固定資産税は、取得後3年間にわたり課税標準が1/2となります。

詳しくは総務省が公表している資料を確認してください。

総務省 令和2年度税制改正要望の結果 5G投資促進税制

※2022年3月31日までのものが対象

https://www.soumu.go.jp/main_content/000660106.pdf

総務省 令和4年度税制改正要望の結果 

「5G導入促進税制の延長」の項目を参照

※2022年4月1日以降のものが対象

https://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/01kanbo05_02000157.html

免許の取得が必要
ローカル5Gを利用するためには、免許の取得が必要となります。

免許を取得するためには各地域の総合通信局に申請します。申請から審査・免許の交付までにかかる目安は1ヶ月半程度です。

5G環境をすぐに構築したいと考えていても、免許の取得にはある程度の時間がかかるため、すぐに構築することができません。

免許の取得に手間がかかる点はデメリットといえるでしょう。

状況によって通信速度が低下する場合がある

5Gは通信速度の速さが特徴的ですが、状況によって通信速度が低下する場合があります。

5Gで使用される周波数帯は「ミリ波」と「Sub6」の2種類です。

ミリ波の周波数は28.2~29.1GHzと高いため、高速の通信に適している反面、障害物に弱い性質を持っています。

壁が多くある建物の中では電波が弱まりやすいため、通信速度が低下することがあります。

Sub6の周波数帯は4.6~4.9GHzであり、4Gの周波数に近い数値となっています。大容量のデータを通信したり、多くの端末に接続したりすると、通信速度が向上しにくくなる場合があります。

プライベート5Gとは

プライベート5Gとは、携帯電話事業者が5G設備の構築・運用を行い、設備を顧客の敷地内に設置する方式です。

プライベート5Gは、ローカル5Gよりも導入しやすいサービスといえます。

なお、プライベート5Gのサービスはソフトバンクが2022年度から提供を開始する予定です。

プライベート5Gのメリット

プライベート5Gを利用するメリットは、自社に応じた5G環境の構築を容易に行える点です。

プライベート5Gなら、5G環境の構築・運用は携帯電話事業者が行います。ローカル5Gの場合は、無線局免許を取得する必要があり、5G環境の構築や運用を自社で行わなければなりません。

プライベート5Gを利用すればそのような手間がかからないため、自社に適した5G環境を構築できます。

プライベート5Gのデメリット

プライベート5Gを利用するデメリットは、通信障害が発生したときに通信ができなくなる可能性がある点です。

プライベート5Gは携帯電話事業者が構築・運用するものであるため、周波数帯は一般の利用者と同じものを使用します。

そのため、携帯電話会社の回線で大規模な通信障害が発生してしまうと、プライベート5Gも通信障害の影響を受けてしまうことがあります。

通信障害をできるだけ回避したいなら、ローカル5Gが適しています。ローカル5Gは一般の周波数帯とは異なっているため、通信障害の影響を受けにくくなります。

参考:パブリック5Gとは

ローカル5Gとプライベート5Gに関連して「パブリック5G」についても説明します。

パブリック5Gとは、全国の一般利用者を対象とした5Gのネットワークサービスです。携帯電話事業者が5Gネットワークの構築・運用を行います。

4G以前は、携帯電話事業者だけがネットワークの構築・運用を行ったため、言うならば全てパブリック方式で展開されてきました。

そもそも、4G以前は「ローカル」や「プライベート」の概念がありませんでした。これらの概念が発生したのは5Gが初めてとなります。

まとめ

まとめ

ローカル5Gとプライベート5Gに共通することは、いずれも自社内だけで利用できる5Gネットワークであることです。

両者の違いは、ローカル5Gがネットワークの構築・運用を自社で行うのに対し、プライベート5Gはネットワークの構築・運用は携帯電話事業者が行います。

容易に5Gネットワークを導入したいならプライベート5Gが適していますが、プライベート5Gは携帯電話会社のネットワークを使用します。

そのため、通信障害が発生すると影響を受けてしまう可能性があります。

通信障害の防止やセキュリティ対策の強化を目的とするなら、ローカル5Gが適しています。

ただし、ローカル5Gの導入は高コストとなります。なお、5Gの導入において一定の条件を満たせば、税制面で優遇を受けられます。

なお、プライベート5Gはソフトバンクが2022年度に提供を始める予定です。

ローカル5Gやプライベート5Gのメリット・デメリットを比較しながら、自社に適したサービスの導入を検討しましょう。

PHOTO:PhotoAC/Pixabay
TEXT:PreBell編集部

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