20年に一度の大転換期が到来!NFTからメタバースまで「Web3.0」を徹底解説
世界は「インターネット創世記」と呼ばれるWeb1.0から「双方向のコミュニケーション」が可能となったWeb2.0、そして、NFT「Non-Fungible Token(ノン・ファンジブル・トークン)」や仮想通貨を活用した新しい経済圏の構築する「Web3.0」へと大きな転換期を迎えようとしています。
今回は、世界的なビッグテック企業で、アジア太平洋地域の統括本部長として、最新テクノロジーを駆使してDX化をサポートする佐藤芳樹さんに「Web3.0」という視点からお話をお伺いしました。
佐藤さんのインタビューは前編と後編の2回に渡ってお送りします。
前編となる今回は、ブロックチェーン、メタバース、NFTによって私たちのライフスタイルはどのように変化するのか、「Web3.0」に向けて私たちユーザーは何をすべきかについてご教授いただきました。
POINT
- 「Web3.0」では、一極集中型で巨大テック企業が主導権を握っていた「Web2.0」の障壁や不安が解消され、全ての人が対等な関係を保持しながら支え合うことが可能になる。
- 突然「Web3.0」に変わるのではなく、当分は、巨大テック企業の既存のサービスとNFTや仮想通貨などの新しいテクノロジーの併用が続く。
- NFTを生活に浸透させるためには、誰もが喜んでやってみたいと思えるコンテンツが必要。
- 現在のNFTは、画像や仮想世界の土地がメインになっているが、山古志地域のように地方創生を目的とした免許証、住民票などに利用される可能性も秘めている。
- メタバースが当たり前の世界になるためには「仮想世界で得た資産でリアルな生活が潤う」ことがひとつの条件になる。
- NFTなど最新のテクノロジーに関する情報の多くは英語なので、アンテナを高くすると同時に英語力を磨くことが重要。
- 仮想通貨のウォレットをインストールし、仮想通貨を扱える環境を作り、収穫ゲームや育成ゲームで遊んで仮想通貨を稼いでみる。Web3.0と身構えずに、楽しく経験を積み重ねることが大切。
最初に、インターネットやテクノロジー初心者の方に対して、Web3.0の簡単な説明をお願いできますでしょうか?
既存のインターネット環境は、一極集中型で巨大テック企業が主導権を握っています。
そこで問題視されるのが、企業側が強くなり過ぎたために生じるさまざまな弊害です。
例えば、Amazonのアカウントがなんらかの理由で消えてしまった場合、購入したKindle本は全滅し、今までに費やした何百万円という金額が一瞬で消えてしまうかもしれません。
一方、権力分散型の「Web3.0」の世界では、そういった不安が解消され、全ての人が対等な関係を保持しながら支え合うことが可能になります。
そして、この「Web3.0」を実現するのが、ビットコインなど仮想通貨の仕組みに使われている「ブロックチェーン」の技術です。
最近、私たちの生活でもブロックチェーンが身近になってきましたが、どのような可能性を秘めているのでしょうか?
ブロックチェーンは、分散したコンピューター(ノード)でお互いが台帳を管理する履歴付き分散台帳システムです。
ブロックチェーンのメリットとしては、データを改ざんしにくいためセキュリティレベルが格段に向上します。
また、中央集権的なサーバーが存在しないので、国境を超えた取引も可能になるでしょう。
現在、Web3.0がまさに始まろうとしているわけですが、今までWeb2.0を牽引してきた巨大テック企業は敵対視されるのでしょうか?
敵対するというより、しばらくは共存する関係が続いていくでしょう。
例えば、ここ数年、コロナ禍でリモートワークが当たり前になりました。
しかし、ようやく見えてきたポストコロナの時代では、オフィス勤務か在宅勤務のどちらかに振り切るのではなく、オフィスでの対面とリモートのそれぞれの良いところを臨機応変に使い分けていく会社が増えていくことが予測されます。
同じように、Web3.0においても、「今日から仮想通貨のウォレットのみ使用可能で現金は使えません。」という世界が突然始まったら困りますよね。
ですから、巨大テック企業の既存のサービスを利用しながら、NFTや仮想通貨など新しいテクノロジーの併用に移行していくでしょう。
Web3.0によって私たちのライフスタイルや仕事はどのように変化するのでしょうか?
結論から言うと、一般ユーザー目線では、しばらくの間それほど大きな変化は感じられないでしょう。
ただし、将来的には、DAO(Decentralized Autonomous Organization)が本格化することで既存の就職活動がなくなるかもしれません。
また、メタバースが市場に浸透し、NFTなどによるデジタルデータの取引の活性化、それに伴う雇用の増加が実現すれば、国境を超えて自由に働く選択肢も増えるでしょう。
当分はWeb2.5のような状況が続いていくということですね。Web3.0の世界を生きている人は1割にも満たないということですか?
厳密に言えば、現在はWeb2.5ではなく、Web2.1くらいだと思います。
今後、Web3.0の概念がしっかりと定まって、基盤が整備されることで徐々に進んでいくでしょう。
ですから、今の段階で、Web3.0に到達している人は世界中で1割どころか1%にも満たないのではないでしょうか。
ただ、Web1.0からWeb2.0への移行には、ネット回線、デバイスの種類、ノートPC、スマートフォン、家電をつなげるインフラ整備に10年という歳月を費やしました。
しかし、次のWeb3.0が、もっと短いスパンで変わっていく可能性は十分にあると考えています。
Web3.0の象徴のひとつである「メタバース」の未来について教えていただけますでしょうか?
まず、「メタバースといえばVRゴーグル」と思っているユーザーが多いのではないでしょうか。
しかし、メタバースとはインターネット上の仮想空間でユーザーが活動できる場所ですから「VRゴーグル」イコール「メタバース」ではありません。
そもそも、実生活でVRゴーグルをかけ続けるのは現実的ではありませんし、一般ユーザーの取り込みを考慮した場合、VRゴーグルなしで参加できる環境整備が必要です。
ユーザーが「是非体験したい」と思えるようなモチベーションを上げる工夫が重要なのでしょうか?
これは私の一つの仮説なのですが「渋谷の女子高生が興味を持たないものは流行らない」と思っています。
今でこそ、渋谷の女子高生みんながガラケーではなくスマホでインターネットに接続するサービスを当たり前のように使っているように、彼女たちが喜んでやって、”使ってみたい”と思えるコンテンツが必要かもしれません。
私は女子高生であった経験はないので男子中高生の視点になってしまいますが、具体的には、ドラえもんのひみつ道具、ガンダムの操縦、ドラゴンボールのかめはめ波、ヨガテレポート、銀河鉄道999に乗る、ネコバスで仮想化された現実世界を走り回るなど、子供の頃に誰もが夢見たサービスを提供できれば「メタバースの未来」は開けるのではないでしょうか。
実際にVRゴーグルをつけてメタバース上で仕事をしたことがありますが、非常に働きにくかったです。実生活でメタバースはどのように浸透していくのでしょうか?
「仮想世界で得た資産でリアルな生活が潤う」世界になれば、メタバースは私たちの生活に浸透するでしょう。
一般的に、メタバース上で得た資産は、仮想空間上のお財布に入り、その後、実際の通貨に変換されて、リアルな世界で利用する流れになります。
リアルな世界で今まで通り働くだけでなく、メタバース上で遊ぶことによって金銭的な収益を得られる「Play to Earn」で生計を立てるなど選択肢が増えていくのではないでしょうか。
今後、メタバースの定義が確立され、国境をこえた経済圏を作れるかどうかが鍵になります。
不動産をメタバース上で購入できるとお伺いしましたが、どのようなイメージなのでしょうか?
メタバース上の不動産とは「仮想空間の上に存在する土地」です。The Sandboxというイーサリアムのブロックチェーン上で提供されているNFTゲームがわかりやすい例となりますが、ゲーム内ではLAND(ランド)と呼ばれるメタバース上の仮想の土地を提供しており、ユーザーはLAND上でプレイできるオリジナルのゲームの作成や、ゲームで使用するキャラクターやアイテムの作成を楽しむことができます。
そして、そのLANDこそがメタバース上の不動産となります。
例えば、誰もが知っている有名な企業がLANDを購入し、そこに拠点となる建物やアトラクションを作ったとします。
すると、周辺には多くのユーザーが往来し、リアルな世界と同様に、さまざまなビジネスチャンスが生まれるでしょう。
すると、その周りのLANDの価値が高騰し、人気のあるLANDの近郊に少しでも多くのLANDを所有しておきたいと考える投資家も出てくるはずです。
メタバース上の不動産売買にはどのような技術が使われているのですか?
メタバース上の不動産売買を可能にしたのが、先ほどお話ししたブロックチェーンの技術です。
もし、現実世界の土地が簡単にコピーできるのなら、その土地に価値はなくなり、暴落してしまうでしょう。土地はコピーできないからこそ価値があるのです。
今までは、ネット上のデータは簡単にコピーできましたが、ブロックチェーン技術を使ったNFTにより、唯一無二の土地であることを証明できるようになりました。
メタバース上の土地はNFTなので所有者は明確になりますし、例えばThe Sandboxの例であれば、将来的にはDAO(自律分散型組織)を目指しているため、土地の供給量を誰かが勝手に増やすことはできず、無限に土地を広げて土地の価値を下げることは起こらなくなるでしょう。
先程のメタバース上の不動産でも登場しましたが「NFT」の概念について簡単に教えてください。
NFTとは「Non-Fungible Token」の頭文字を取ったもので、日本語では「非代替性トークン」という意味です。
ブロックチェーン上に改ざんできない取引情報を記録し、代替えのきかない唯一無二のデータとして保持できます。
最近では、9歳の子が描いたデジタルアート『zombieezoo』の取引総額が4000万円相当になったことや、インドネシアの大学生が自撮り写真のコレクションをNFT化して販売し、1億1400万円の価値をつけた話題が記憶に新しいのではないでしょうか。
インドネシアの大学生の自撮り写真にはどのような価値があるのでしょうか?
確かに、普通の感覚でインドネシア人の大学生の自撮り写真をお金を出してまで欲しいと思う人はいないでしょう。
しかし、インドネシア人の学生は10年という歳月をかけましたが、今から同じことをしても10年かかってしまいます。
この積み上げて10年に価値があり、その努力を保有したいと考える人がいるから高価な値段がつくのでしょう。
もちろん、スタートは100万円でも、ネットニュースなどを介して広がり、その話題性も後押しして、何倍、何千倍と価値を押し上げたのも事実です。
実際にNFTを購入する人は何を求めているのでしょうか?
所有による高揚感や満足感、それがNFTの価値と言っても良いかもしれません。
1980年代、男子小学生を中心に爆発的ブームを巻き起こしていた「ビックリマンチョコ」はご存知でしょうか?
そのなかには「ヘッドロココ」というキラキラのシールが入っていて、それを手に入れるために、当時の小学生男子は血眼になってヘッドロココを探したものです。
しかし、ヘッドロココをクラスの女の子に見せびらかしても、ほぼ無反応だったのではないでしょうか。
NFTの所有は「俺はヘッドロココ(本物)を持っている」という「オタクの満足感」に似ているかもしれません。
NFTは一度売却すると自分の手元には何も残らないのですか?
NFTのもうひとつのメリットは、転売されるごとに決められた割合の報酬が入ることです。
例えば、1億円で手に入れたNFTを3億で転売すれば、単純に2億が手に入りますが、NFTでは、その後も、流通・販売を繰り返す度に最初の所有者に継続してロイヤリティが支払われます。
5億円で転売され、手数料を10%に設定していれば、5000万円が入るという仕組みです。
今後、私たちの生活の場面でNFTはどのように使われていくのでしょうか?
現在のNFTは、画像や仮想世界の土地がメインですが、免許証、住民票などに利用される可能性もあります。
例えば、新潟県の山間部にある人口800人の山古志地域では、世界で初めて「電子住民票」の意味合いを兼ねて「錦鯉」をモチーフにしたNFTが発行されました。
この地域では、17年前、中越大震災が襲い、一時は全村避難になるほど、壊滅的な被害をもたらしています。
山古志地域を存続させるためのアイデアや事業プランをリアルタイムで、NFTホルダーであるデジタル住民専用のコミュニティチャットで展開しています。
このように、NFTを利用した民主的な地域づくりは今後も増えるのではないでしょうか。
最後に、Web3.0に向かってテクノロジーが進化するなかで、私たちユーザーが取り組むべき課題などあれば教えてください。
まず、仮想通貨のウォレットをインストールし、仮想通貨を扱える環境を作っておくことをお勧めします。
そして、「STEPN」などのウォーキングゲームや収穫ゲーム、育成ゲームで遊んで仮想通貨を稼いでみましょう。
慣れてきたら、デジタルアートを作成してOpenSeaなどNFTのオンラインマーケットプレイスで出品します。
最初はなかなか売れないかもしれませんが、売れるまで頑張ってみましょう。
佐藤さんはNFTを保有しているとお伺いしていますが、それはどのようなものですか?
私は、歩いたり移動した分に合わせてトークンやスニーカーを集めて遊ぶ「Aglet」というアプリを入れて、スニーカーのもとになる原資を稼いでいます。
将来的に歩いているだけでadidasのNFTを手に入れることもあるかもしれませんし、そのNFTに高額な価値が付くかもしれません。
ただ、私の場合は、毎日1万歩程度は歩く習慣があるので、それでスニーカーが貰えるならラッキーという軽い気持ちでトライしています。
遊びの一環で構いませんから、日常生活のなかに無理のない範囲でNFTを取得してみたり、メタバースを体験してみてはいかがでしょうか。
いかがでしたでしょうか?
2022年になり、Web3.0やメタバース、NFTなどのキーワードをテレビや新聞記事などで頻繁に目にするようになりました。
耳慣れないIT用語や時代の変化に不安や戸惑いを覚えるユーザーも多いかもしれません。
しかし、Web3.0はこれから少しづつ普及、発展していくインターネットの新しい形であり、今までの生活をより豊かに楽しくする可能性に満ちています。
リスクを伴わない範囲で、仮想通貨を扱える環境を整えて、好みのゲームをインストールし「Web3.0」の第一歩を踏み出してはいかがでしょうか。
佐藤芳樹
大学卒業後、世界的なIT企業3社にて、日本、アメリカ、シンガポールの3カ国を拠点に20年以上勤務。
現在は巨大テック企業にてシンガポールをベースとし、アジア太平洋地域を統括するエンジニアチームの責任者として、企業の働き方改革から最新テクノロジーのビジネスでの活用支援まで、技術とビジネスの橋渡し役としてデジタルトランスフォーメーションを支援。
最新テクノロジーをフル活用する術を広めることで日本と海外をつなぎ、ビジネスや人生のボーダーレス化を目指す活動を行っている。
書籍執筆/監修35冊
Web/紙媒体/TVなどのメディア出演もほどほどに経験済み。大中小規模や地域・国を問わず講演経験は500回以上。
最近の主な書籍
『もしかわいいキツネのお財布を持っている海外在住のおおきなおともだちからWeb3について聞かれたら: 身近な話題で理解するインターネットのこれから』
https://www.amazon.co.jp/dp/B09XKKXVDD
『もし仮想世界の海岸でペットのキツネを散歩させている姿に納得がいかない家族からNFTについて聞かれたら: お金をかけずに実体験で理解するNFTのこれから』
https://www.amazon.co.jp/dp/B09S1DB7JV/
『もしリビングのソファでVRゴーグルをかけて仮想世界で仕事している姿に納得がいかない家族からメタバースについて聞かれたら: 身近な情報と妄想で理解するメタバースのこれから』https://www.amazon.co.jp/dp/B09PVPHM7P/
PHOTO:iStock
TEXT:PreBell編集部
この記事を気にいったらいいね!しよう
PreBellの最新の話題をお届けします。