加速する日本と世界のボーダレス化。グローバルな組織で最大限に実力を発揮する方法とは
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2022.09.06 加速する日本と世界のボーダレス化。グローバルな組織で最大限に実力を発揮する方法とは

世界は「インターネット創世記」と呼ばれるWeb1.0から「双方向のコミュニケーション」が可能となったWeb2.0、そして、NFTや仮想通貨を活用した新しい経済圏の構築する「Web3.0」へと大きな転換期を迎えようとしています。

今回は、世界的なビッグテック企業で、アジア太平洋地域の統括本部長として、最新テクノロジーを駆使してDX化をサポートする佐藤芳樹さんに「Web3.0」という視点からお話をお伺いしました。

佐藤さんのインタビューは前編と後編の2回に渡ってお送りします。

後編では、透明性が確保されたフラットな組織を実現するDAOの可能性、世界と日本のボーダレス化に向けてユーザーや企業は世界とどう向き合うべきなのかをご教授いただきます。

POINT

  • DAOとは「Decentralized Autonomous Organization」の略称で、運営者(組織の長)がいない分散型自立組織。
  • 就職活動ではDAOに所属し、インターンとして経験を積んで、卒業後もDAOを継続する学生と、従来通りの就職活動をする学生で二極化が進む可能性がある。
  • 英語は、コミュニケーションツールであると同時に、グローバルな環境で夢を実現させる切符でもある。
  • 世界の日本語人口が1億数千人に対して、英語人口は約15億人であることを考慮すると、英語が使えるだけでチャンスが何倍にも増える。
  • ビジネスの現場で何度も冷や汗をかき、悔しい思いをして、改善を繰り返すことで英語力が磨かれる。
  • チームビルディングが重視されるグローバルな組織では、結論ファーストで、ネガティブにならないようにテンションを上げて明るい振る舞いを心がける。
  • マネジメントでは、国や地域によって、言葉だけでなく常識や文化などバックグラウンドが異なることを考慮して、必ず事前に結果に対する期待値のすり合わせをする。
  • 「自分の仕事が世の中の需要としてなくなってしまうリスク」を常に意識しながら、バランス良くキャリアアップに向けた行動を積み重ねることが大切。

DAOによって就職活動が二極化?時代の波に乗るために必要なスキルとは

DAOによって就職活動が二極化?時代の波に乗るために必要なスキルとは

Web3.0を通じたDAOが注目されていますが、概念などをわかりやすく教えてください。

DAOとは「Decentralized Autonomous Organization」の略称で、運営者(組織の長)がいない分散型自立組織を意味します。

報酬はガバナンストークンという声の大きさを決める仮想通貨の量で決まります。

議論はDiscordなどの公開チャンネルで実施され、すべての行動が実質改ざん不可能なブロックチェーンに記録されるので透明性が確保されます。

複数のDAOに所属することもできますし、ノルマがあるわけではないのでワークライフバランスは現在より良くなるかもしれません。

DAOについて

一般的に会社を設立する際には、弁護士や税理士、行政書士さんの力を借りて準備を進めますが、DAOはどのようにスタートするのでしょうか?

DAOは、組織というよりはプロジェクトですから、「こんなアイディアがあるけれどDAOでやってみない?」という流れでスタートし、報酬は仮想通貨で支払われます。

立ち上げのスピードは一般的な会社に比べて非常に早いですし、プロジェクトがうまくいかなかった場合の撤退も比較的速やかに行われるでしょう。

DAOはどのようにスタートするのか

今後、世の中はDAOが中心の社会に移行していくのでしょうか?

既存の企業とDAOが共存しながら進んでいくでしょう。

今の世の中であっても、世界には、スマートフォンもインターネットも使用していない地域が存在します。

対面でなければ成立しないサービスや、実際に工場でモノを生産するなど、DAOでは物理的に難しい業種はそのまま残っていくのではないでしょうか。

ただ、就職活動は、DAOに所属してインターンとして経験を積んで、卒業後もDAOを継続する学生と、従来通りに就職活動をして企業に入る学生というように二極化が進むかもしれません。

今後、世の中はDAOが中心の社会に移行するのか

DAOと既存の企業が共存する時代において、私たちユーザーや就職活動中の学生は何を意識すべきですか?

今後、日本において年功序列や終身雇用が衰退することを考慮した場合、特殊な技能を持っていたり特定の業務に特化して仕事をするスペシャリストが求められる時代に移行していくでしょう。

ですから「これは誰にも負けない」という専門性を身に付け、しっかりとアンテナを張って、情報をキャッチすることをおすすめします。

例えば、NFTは2年前から話題になっていましたが、日本で先駆けて取り組んだ学生はほとんどいなかったのではないでしょうか。

海外からの情報をしっかりとキャッチするために英語は必須ですから、語学力を磨くことも必要です。

英語ができるかどうかで生涯年収が2億円違う?ビジネスで通用する英語力とは

英語ができるかどうかで生涯年収が2億円違う?ビジネスで通用する英語力とは

佐藤さんは、アジア太平洋地域の統括本部長としてコミュニケーション手段は全て英語とお聞きしていますが、どのようにして英語力を磨かれたのでしょうか?

大学卒業後、外資系企業に就職しましたが、英語を使う機会はそれほどありませんでした。

その後、海外を拠点としたポジションを求めて、オンライン英会話と併用しながら英語で面接を受け続けました。

佐藤さんはどのようにして英語力を磨いたのか

現在は、シンガポールに移住し、3年前にチームをリードする立場になってから管理職に昇進したこともあり、上司もチームメンバーも全員外国人という環境です。

チームメンバーの査定ができないとみんなが困りますので、ミーティングでの司会進行やディスカッションなどは可能なレベルになりましたが、今でも英語に対する苦手意識は拭えません。

実務経験を通して英語力を磨かれたのですね。私たち日本人が英語を学ぶメリットについて教えてください。

英語は、単なるコミュニケーションツールではありますが、より高みを目指すための切符と考えていただけると良いのかなと思います。

例えば、非常に素晴らしいアイディアを思いついて、それを世界中に広げたいと思っても、日本語だけでは、1億数千人にしか伝えることはできません。

日本人が英語を学ぶメリットについて

しかし、世界の英語人口は、3億人のネイティブスピーカーを含む15億人ですから、英語が使えるだけでチャンスが何倍にも増えます。

今後、少子化が進む日本において、マーケットをつなぐツールとして、完璧な英語でなくても構いませんので、情報の発信ができるように語学力を磨くことが重要ではないでしょうか。

情報の発信ができるように語学力を磨くことが重要

これからグローバルな企業で世界を舞台に仕事をするユーザーに英語力を磨くための秘訣などあれば教えてください。

「恥をかきながらやるしかない」と腹を括って、頭の中で冷や汗をかく、その経験こそが力になると思います。

私の場合、オンライン英会話で勉強は日々積み重ねてきましたが、突然外国人の上司に変わった時は、何を言っているのか全く分かりませんでした。

英語力を磨くための秘訣

今でもそうですが、何度も冷や汗をかき、悔しい思いをして、実体験として改善を繰り返してきました。その過程で経験することが出来た、多くの国でビジネスをしたという経験は自分の市場価値を押し上げてくれると信じています。

ですから、グローバルな組織で英語を使って働くチャンスがあれば、思い切って挑戦してほしいと思います。

能力を最大限に発揮し、目標を達成できるチームを作り上げる「チームビルディング」とは

「チームビルディング」とは

グローバルな組織で活躍する佐藤さんが日頃から意識していることなどあれば教えてください。

最も大切なのはチームの仲間に顔と名前を覚えてもらうことです。

名刺は役に立たないと考えて、自分を簡潔に一言で表現するフレーズを用意しましょう。

例えば、私は「佐藤芳樹」で、今までに35冊の本を出版してきたので「35冊の本を執筆したヨシです」と自己紹介しています。

すると相手は「ああ、ヨシという人は本をたくさん書いているのか」「それは一体どんなジャンルだろう」というように興味を持ってくれるので、比較的早く覚えてもらえるでしょう。

名前と顔を覚えてもらうことが重要なのですね。会議などのコミュニケーションで気をつけることはありますか?

日本の文化では、相手が話している時は、最後まで耳を傾ける文化がありますが、海外では、話している最中でも容赦なくカットインが入ります。

日本のルールに従って、仲間の話を傾聴し、最後まで黙っていた場合、何の意見もない「価値のない人」とみなされる可能性があります。

会議などのコミュニケーションで気をつけること

ですから、会議ではしっかり自分の意見を伝えましょう。

また、一般的に、日本人は「NO」と言うのが苦手ですが「この仕事はできません。なぜなら、私の役割はこれだからです。代替案としては、◯◯が考えられます。」そして代わりになるアイディアの提示ができれば、むしろハッキリと「NO」ということはムダを省くため歓迎されると思います。

話すときは、結論ファーストで、ネガティブにならないように意識してテンションを上げて明るく振る舞いましょう。

結果を重視するグローバルな組織で実力を発揮するために必要なことがあれば教えてください。

外資系それぞれに文化は違いますが、結果を出すために必要な場面では、躊躇せずに自己主張をしましょう。

また、国や地域によって、言葉だけでなく常識や文化などバックグラウンドは全く違いますから、事前に結果に対する期待値を確認しておくことが大切です。

期待値をもとにゴールを設定し、それを可能な限り素早くクリアしましょう。

結果を重視するグローバルな組織で実力を発揮するために必要なこと

結果を出すことをプレッシャーに感じるかもしれませんが、9時から5時までWebカメラで監視されるようなことはありません。

正々堂々、結果で勝負できるところが、グローバルな企業で働く面白さではないでしょうか。

マネージャーとして意識していることなどがあれば教えてください。

チームのメンバーが反対意見を言える文化作りを常に意識しています。

例えば、5人のメンバーのうち4人が既存のやり方で進めようとするなかで、1人が全く異なる方法を提案した場合、必ず少数派の意見も尊重するように心がけています。

そういった積み重ねによって、惜しみなくアイディアを出そうというモチベーションが生まれ、チームに明るさが宿るのではないでしょうか。

マネージャーとして意識していること

また、注意喚起を促す際には、最初に成果を褒め称え、その後に、指摘して改善を促すなど工夫をしています。

良いことも悪いことも全てメンバーにフィードバックすることでチームとしての信頼感が生まれ、それが最高のパフォーマンスにつながるのではないでしょうか。

今後の目標やキャリア形成に対する考えやアドバイスがあればお願いします。

自分の昇進よりも、チームのメンバーのキャリア形成をどこまで助けてあげられるかに重点を置いています。

メンバーが望むべきキャリアを積めるようにサポートできれば、これほど嬉しいことはありません。

そのために、先ほど申し上げたフィードバック力の向上に努めています。

自分のキャリアに関しては「3年に1度は、エリア、環境、役職のいずれかを必ず変える」というルールを課しています。

今後の目標やキャリア形成に対する考えやアドバイス

今の時代、突然、自分の仕事が世の中の需要としてなくなってしまう可能性は誰しもゼロではありません。

バランスを取りながら、スキルを向上し、キャリアアップに向けた行動を積み重ねることがリスク回避につながるのではないでしょうか。

そして、リスク回避と同時に大切なのは、過去を振り返ってばかりではなく、未来に夢中になることです。

長い人生ですから、これからたくさんの人との出会いが訪れ、ワクワクする体験が待ち受けているに違いありません。人生のピークはまだこれから。私は常にそう信じています。

終わりに

ビジネスにおける日本と世界のボーダーレス化は進んでいる

いかがでしたでしょうか?

急速なIT技術の発展により、世界経済の仕組みも大きく変化し、ビジネスにおける日本と世界のボーダーレス化が進んでいます。

ブロックチェーンの技術により、組織の長が存在せず、報酬はブロックチェーンで支払われる「DAO」など、今までにない新しい働き方を選択できる時代になりました。

多国籍メンバーによるグローバルな組織では、翻訳を介さないリアルタイムな英語によるコミュニケーション、会議での積極的な発言、期待値の擦り合わせなどさまざまな能力が求められます。

日本型の年功序列や終身雇用が終焉を迎えつつあるなかで「世界のボーダレス化」をチャンスと捉えて、外資系企業への就職や海外勤務、DAO組織へのインターシップなどの機会があれば迷うことなく挑戦することをおすすめします。

interviewer紹介

佐藤芳樹

大学卒業後、世界的なIT企業3社にて、日本、アメリカ、シンガポールの3カ国を拠点に20年以上勤務。

現在は巨大テック企業にてシンガポールをベースとし、アジア太平洋地域を統括するエンジニアチームの責任者として、企業の働き方改革から最新テクノロジーのビジネスでの活用支援まで、技術とビジネスの橋渡し役としてデジタルトランスフォーメーションを支援。

最新テクノロジーをフル活用する術を広めることで日本と海外をつなぎ、ビジネスや人生のボーダーレス化を目指す活動を行っている。

書籍執筆/監修35冊 

Web/紙媒体/TVなどのメディア出演もほどほどに経験済み。大中小規模や地域・国を問わず講演経験は500回以上。


最近の主な書籍

『もしかわいいキツネのお財布を持っている海外在住のおおきなおともだちからWeb3について聞かれたら: 身近な話題で理解するインターネットのこれから』
https://www.amazon.co.jp/dp/B09XKKXVDD

『もし仮想世界の海岸でペットのキツネを散歩させている姿に納得がいかない家族からNFTについて聞かれたら: お金をかけずに実体験で理解するNFTのこれから』
https://www.amazon.co.jp/dp/B09S1DB7JV/

『もしリビングのソファでVRゴーグルをかけて仮想世界で仕事している姿に納得がいかない家族からメタバースについて聞かれたら: 身近な情報と妄想で理解するメタバースのこれから』https://www.amazon.co.jp/dp/B09PVPHM7P/

PHOTO:iStock
TEXT:PreBell編集部

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