アメリカのスタートアップ投資は日本の34倍|日本にGAFAが生まれない理由
アメリカのスタートアップへの投資は日本の34倍といわれています。アメリカでは、ユニコーン企業といわれる成長を期待されるベンチャー企業が多くありますが、日本は数社程度です。
アメリカでは、なぜGAFAのような巨大企業が次々と誕生するのでしょうか?
この記事では、アメリカと比べてスタートアップが少ない理由や、日本のユニコーン企業とその今後について徹底的に解説します。
POINT
- 国内スタートアップが少ない理由は、「資金調達の難しさ」や「起業家マインドが育ちにくい風土」にある
- アメリカのスタートアップが多い理由は「資金調達手段の豊富さ」や「起業家教育の充実」にある
- 政府の支援や民間の教育により、今後日本のスタートアップは増加が見込まれる
目次
アメリカと比べて日本のスタートアップが少ない理由は、以下の3つが考えられます。
1.クラウドファンディングは小規模企業向けが多い
2.上場後の資金調達が難しい
3.日本社会は失敗に厳しい
何故このような問題が起こるのかについても、説明していきます。
日本のクラウドファンディングは、非上場企業の資金調達の場になっています。しかし、その多くは小規模な企業向けで、調達額も少ない傾向です。
一方、アメリカのクラウドファンディング大手Kickstarterの累計資金調達額は累計6000億円以上と、日本の「READYFOR」の200億円と比べて30倍の差があります。クラウドファンディングの調達額の少なさも、スタートアップが少ない理由の一つでしょう。
日本のスタートアップは、上場後の資金調達が難しい傾向にあります。日本のIPO(新規に上場する株式)では、初値(上場初日に成立する株価)が公開価格(上場時の販売価格)を大幅に超えることが多い傾向です。
初回の成立価格が最高額のケースも多く、投資家は上場と同時に売ることで多くの利益を得られます。そのため、企業の大半は上場後に株価を大きく下げ、その後の資金繰りに苦しみます。
日本社会の失敗に厳しい文化も、スタートアップが少ない理由の1つと考えられます。起業家は失敗を恐れず、挑戦し続けることが求められます。
しかし、日本社会はミスに厳しく、サラリーマンは1回の失敗で出世コースから外れてしまうことすらあります。設立5年以内のベンチャー企業1,459社に対して、2020年に実施したアンケートでも、起業家が日本で起業が少ないと考える原因の1位は「失敗に対する危惧」でした。
一方アメリカは、失敗に寛容な文化だといわれています。日本では考えにくいですが、店の閉店時に新しい門出を祝して、パーティーを開くという話もあります。失敗は成功にはつきものだという考え方は、スタートアップ企業にとって、大きな助けになることでしょう。
日本と比べて、アメリカにスタートアップが生まれやすい理由は以下の3つが考えられます。
1.起業家マインドを育てる教育がある
2.非上場企業の資金調達手段が多い
3.SPACが増加している
日本にはないアメリカ独自の仕組みなども含めて解説します。
アメリカには、起業家マインドを育てる教育があります。CEE(アメリカ経済教育協議会)は起業家教育を重要視しており、地元の経営者などと連携して起業家教育を行っています。
また、投資などの金融教育も進んでいるため、雇用されること以外で収入を得られるという考えが、日本よりも強くあることでしょう。
アメリカは、非上場企業の資金調達手段が多くあります。非上場企業と、スタートアップに投資したい投資家のマッチングサイトが充実しています。
日本でもコロナ禍でIPOが延期する事態を踏まえ、数は少ないですがマッチングサービスが増えてきました。こうしたサービスの充実により、スタートアップに投資する人が増えれば、IPOでの公開価格の見極めにも役立つでしょう。
アメリカでは、非上場企業が設立直後から上場できる特別買収目的会社、通称SPAC(Special Purpose Acquisition Company)の上場件数が増加しています。IPOとほぼ同額にまで迫っており、スタートアップはSPACで多額の資金調達が可能です。
ドラマでも話題のユニコーン企業とは、創業10年以内・評価額10億ドル以上・未上場・テクノロジー企業の4つの条件に当てはまる企業を指します。
アメリカのユニコーン企業は約400社ですが、日本のユニコーン企業は数社程度です。ここでは、その中でも特に有望視される3社について紹介します。
株式会社Preffered Networksは、2014年に設立された評価額3,549億円の、機械学習・深層学習(ディープラーニング)など最先端技術を実用化する企業です。
Preffered Networksは、特にコンピューターが自力で学習する深層学習の優れた技術を持っています。自動車の自動運転にも役立つ技術で、トヨタ自動車などの大企業と、次々に業務提携や共同開発をしています。
2012年に設立された評価額2,017億円の、日本とアメリカでニュースアプリSmartNews(スマートニュース)を運用する会社です。スマートニュースは、個人の関心にあったニュースを表示するだけでなく、個人の興味をさらに広げるニュースを提供するアルゴリズムも持っています。
これまでは、偏った記事ばかり表示される問題もありました。しかし、スマートニュースは政治的な思想のバランスが取れた記事を配信するアルゴリズムを導入するなど、世界のメディアと提携して革新的なサービスを提供しています。
2013年に設立された評価額1,731億円の、クラウド人事労務ソフトの開発や販売を行う企業です。
SmartHRの人事労務ソフトを使用すると、年末調整などの労務手続きがペーパーレス化されます。また、社員名簿が一元管理でき、変更の手続きをすると自動で情報が更新されるなど、常に最新の情報が表示されます。
岸田総理はスタートアップへの徹底支援を掲げています。日本政府の支援策とは、一体どんなものなのでしょうか?ここでは、国のスタートアップ支援策と、今後のスタートアップの動向について解説します。
岸田総理は、2022年をスタートアップ創出元年としています。大企業からスタートアップへの投資が拡大し、中小企業の事業再構築や生産性向上への支援も継続される見通しです。
また、現状のスタートアップ支援策も、イノベーターを育成するプログラム「始動 Next innovator」や、無担保・無保証人で融資を受けることができる「新創業融資制度」など数多く存在します。
日本政府は、2022年末までに「スタートアップ育成5か年計画」を策定する方針を示しています。今後もスタートアップを支援する取り組みは増えていくことでしょう。
また、海外では「KOSEN」として高等専門学校(高専)が注目されています。起業のアイディアを競うコンテストでは、企業評価額10億円とされるアイディアを出した高専チームもあります。
神山まるごと高専では、起業家精神を育てる教育が行われる予定です。神山町は徳島県の山間部にある過疎地ですが、日本のシリコンバレーを目指す取り組みがなされ、企業のサテライトオフィスが10社以上作られました。地域と企業が一体になって、起業家を育てる取り組みがされています。
このようにスタートアップを支援する教育や政策が行われることで、現状の資金調達や起業家精神の育成に関する課題は解決されていくでしょう。
日本はアメリカと比べて、スタートアップが少ない傾向にあります。その原因は、資金調達の難しさや起業家マインドが育成されない教育にあります。しかし、アメリカのように、スタートアップを支援する取り組みや教育が行われることで、日本のスタートアップを増やすことは可能です。
岸田総理が掲げる成長と分配の方針の中でも、スタートアップへの支援は重要視されています。今後も日本のユニコーン企業は増えていくことでしょう。
時価総額の高い企業が増えることで、日本に資金が流入すれば経済の活性化も見込めます。この機会に、スタートアップへの投資を考えてみるのも良いでしょう。
PHOTO:iStock
TEXT:PreBell編集部
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