中学までテクノロジーとは無縁のシュタイナー教育とは?
現代の私たちの生活には「テクノロジー」が欠かせないものとなりました。
世界中で老若男女問わず、テクノロジーに全く触れずに生活することはかなり難しいことです。
これは子供の教育でも例外ではありません。学校教育でもタブレットやオンライン授業が導入され、現代の子供たちは幼少期からテクノロジーに触れて生活をしています。
この流れの中で、子供にテクノロジーに触れさせない「シュタイナー教育」が出てきています。
実際、あのスティーブジョブズも、自分の子供にはある程度の年齢になるまでテクノロジーに触れさせていませんでした。
今回は、テクノロジーに触れさせない「シュタイナー教育」について、可能な限り専門用語を使わず、初心者にも分かりやすく解説をしていきます。
POINT
- シュタイナー教育では、おおよそ15歳〜16歳になるまでIT機器をほとんど使わず教育を実施する
- シュタイナー教育の目標は「自らの意思で行動して人生を切り開く人物を育てること」
- シュタイナー教育では、年齢を0〜21歳のなかで3つの段階に分けて、自分で思考が出来る15〜16歳までは、IT機器を導入しない教育を実施している
- アメリカではシリコンバレーのIT経営者の子供が通うようになってきており、日本を含めた東アジアでも発展し始めている
シュタイナー教育とは、オーストリア出身の哲学者ルドルフシュタイナーの名前から取った教育法です。
ルドルフシュタイナーによって体系化された教育法で、主に0〜21歳向けの教育です。
日本では保育園から高校卒業までの年齢(0〜18歳まで)を対象に教育が実施されています。
シュタイナー教育では、おおよそ15〜16歳になるまで、テレビやスマートフォンといったIT機器も可能な限り排除されます。
IT機器を排除した上、自然の中で実施する教育に特徴があります。
幼児〜小学生の年齢までに取り入れられる遊び道具はほぼ自然素材で出来ています。
加えて、シュタイナー教育を実施している幼稚園に通っている子供たちは、「四季のお祝い事」、「パンを焼く」、「生き物の世話」等、可能な限り自然環境に近い活動を日々おこないます。
なぜ、シュタイナー教育が自然の中での教育を大事にして、IT機器を排除しているのか、その理由を解説していきます。
シュタイナー教育の目標は、「自らの意思で行動して人生を切り開ける」人間になることです。
この考えから、「自らの意思で行動が出来る」の基礎が出来るまでは、IT機器への関わりを少なくします。
「自らの意思で行動出来る」ようになるためには、以下の三つが重要になるとされています。
・意思
・感情
・思考
この三つを身に付けるため、0〜21歳を3つに分けて教育を実施する考えがあります。
以下にそれぞれ解説をしていきます。
シュタイナー教育では、0歳から7歳の時期は「自分の意思」を育む時期だとしています。
「自分の意思」を育む0〜7歳の時期には、IT機器にはほとんど触れさせない教育を実施します。
「意思」を育むためには二つのことが必要だと考えられています。
1つ目は健康な身体です。
大人になった後に「自分の意思」を持って行動していくためには、健康な身体が土台となります。
この理由から、0〜7歳の時期には、なるべく自然の中に出て様々な活動で体を動かすことで、健康な身体の基礎を作ります。
具体的には、「四季のお祝い事」、「生き物や植物の世話」等の活動を多く実施します。
自然の中で身体を動かす重要性から、多くのシュタイナー教育を実施している多くの学校では、IT機器には触れさせない教育を実施します。
2つ目がクリエイティブ性です。
「自らの意思に基づいて行動する人生」を生きるためには、他人の考えとは自分自身の考えを持つ必要があります。
そのためには、他人に指示されるのではない、個性的なクリエイティブ性が必要となります。
シュタイナー教育では、自分の体を動かすことの外から刺激を通じてクリエイティブ性を養うことが出来ると考えられています。
この考えから、シュタイナー教育を行っている多くの学校では、「青空教室」等の活動で必ず1日1回は外に出て学ぶような機会が設けられます。
7〜14歳の時期は、「感情」を形成する時期だとされています。
「自らの意思に基づいて行動する人生」を生きるためには、他人の考えとは自分自身の考えを持つ必要があります。
ただ、「他人の感情」も同時に大事にする必要があるとの考えから、周囲の人とのコミュニケーションが積極的に図られるようになります。
「周囲の人」とのコミュニケーションが重要になってくる時期のため、IT機器は可能な限り排除されています。
「感情」を育むために、生徒間や教員との密接なコミュニケーションを重要視していきます。
たとえば、通常の5教科の教育に加えて、「農業実習」や「演劇」等の授業が組み込まれていることがあります。
こういった、「他人と共同する」ことを通じて「感情」を育むことを重要視していきます。
この時期になる目標は「思考」を形成する時期です。
今まで培ってきた「意思」と「感情」を元にして、他者や意見に積極的に関わっていきます。
この時期になると、他者や意見への関わりを重要視するため、IT機器の排除はほとんど無くなります。
他者の考えと自分の考えを比較する中で、論理的な思考力を培っていきます。
教育の一例をあげると、論理的な思考力の集大成として、高校卒業時(18歳)に「卒業論文」をまとめることがあります。
0〜21歳の教育(日本では高校卒業(18歳)までの教育)を通じて、「自分の意思と論理的な思考力をもって、自分の人生を切り開いていく」基礎を作っていきます。
幼少期に「ITに触れない」ことの選択肢は、シリコンバレーでも注目されてきています。
実際、スティーブジョブズも、自分の子供にはある程度の年齢になるまでテクノロジーに触れさせていませんでした。
シリコンバレーの経営者も同様の考えを持っている人も増えてきています。
全米に136校存在するシュタイナー教育を実施している学校に、シリコンバレーのIT経営者は自身の子供を通わせています。
シュタイナー教育の発祥となったヨーロッパにおいては、ヨーロッパ全土で827校あり、2022年現在、約18万人以上の生徒が通学しています。
日本では、2005年に正式に認可されてから、合計21校のシュタイナー学校が存在しています。
日本や中国、韓国といったアジアの国でシュタイナー学校が増えてきており、今後は東アジアでの発展も見越されています。
シュタイナー教育とはその目標を「自らの意思で行動して人生を切り開ける」人を育てることとしています。
この目標を達成するために、以下の3つが必要になると考えています。
・意思
・感情
・思考
「意思」と「感情」を育むことが目標の0〜14歳の時期は、IT機器に触れさせない教育を実施しています。
一般的には、教育(Education)とITを掛け合わせた「Edutech(エデュテック)」が発展してきており、教育業界にもITは必要不可欠になってきています。
このように、教育のIT化が進んでいる中で、逆に「ITに触れさせない」という教育を実施している学校が発展してきています。
このような教育があるということもぜひ念頭に入れつつ、今後のIT業界、特に教育に関わるニュースをチェックしてみてください。
PHOTO:iStock
TEXT:PreBell編集部
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