テック起業家やセレブが投資する「フードテック」、「アグテック」とは何か?初心者にもわかりやすく徹底解説
現在、ブロックチェーンやクラウド等のIT技術が注目されるようになってきました。
どの業界・業種でもITなしに語ることは不可能です。
今まではいわゆるホワイトカラー職の事務職への影響が強かったITも、食品や農業といった、いわゆる「第一次産業」にも影響を与えるようになってきました。
たとえば、農業ではクラウドを用いた作物状況の把握や、ドローンを用いた農薬散布など、大きな影響を与えるようになってきました。
この記事では、農業に関わるITの「アグテック」、食品に関わるITである「フードテック」について解説をしていきます。
POINT
- フードテックとは「食もしくはその周辺の分野とテクノロジーが結びついた分野」のこと
- アグテックは「農業とテクノロジーが結びついた分野」のこと
- フードテック、アグテック両方の今後の市場の伸びが予想されている
- フードテック、アグテックの市場の伸びに両方に共通する要因は「高齢化による生産人口の減少」であるとされている
フードテックとは、食(Food)もしくはその周辺の分野とテクノロジー(Technology)が結びついたものです。
特に食品ロスの問題や、食料資源の問題とかなり密接に結びついています。
例えば、最近話題となっている「完全栄養食」といった分野ではフードテックが深く関わっています。
食とテクノロジーが関わる分野は主に以下の2つの分野です。詳しく解説をしていきます。
1.食料の生産開発
2.食品販売
食料の生産開発の分野にはテクノロジーが大きく関わっています。
例えば、以下のような食品はフードテックによって開発された食品です。
・一品で1日分の栄養がとれる完全栄養食
・人間にとって必要な栄養を調整して品種改良された野菜
こういった食品を作るためには、「人間にとって必要な栄養素は何なのか」といった計算が必要不可欠です。
その計算のために、AI等の技術が用いられています。
日々発表される栄養学、人体生理学等の膨大な量の論文から、「人間にとって本当に必要な栄養素は何なのか」といった情報を、AIを用いて抽出します。
その後、集められたデータを元に、その栄養素を含む食品の生産開発を実施することで、完全栄養食といった食品が開発されています。
食品の生産だけではなく、最終的に消費者の手に食品が渡る際にも、テクノロジーが活用されています。
最も大きな例が「OMO」というビジネスモデルです。
OMOは「Online Merges with Offline」の略です。
オフラインでの飲食(飲食店での飲食)、オンラインでの飲食(オンラインで注文するデリバリー等)の垣根を無くそうするビジネスモデルです。
例えば、最近のファストフード店では、メニューを飲食店の席のQRコードを読み取って注文し、決済もスマホ上で行う店が存在します。
この流れは、デリバリーアプリでメニューを選択して、スマホ上で決済するという、自宅でオンライン注文するのと同じ流れです。
このように、「スマホで注文→飲食→スマホで決済」という流れを、実店舗での飲食でも実行をしていこうとするのが、OMOというビジネスモデルです。
こうすることで、実店舗での「配膳」や「レジ決済」といったスタッフが不要となり、人手不足の解消の手立てにすることが期待されています。
一方でアグテックとは、農業(Agriculture)とテクノロジー(Technology)が結びついたものです。
「アグリテック」とも呼ばれますが、今回の記事では「アグテック」と呼びます。
主に農業分野でテクノロジーを活用すること全般を指して、アグテックと呼ばれています。
最近の例としては、「ドローン」、「AI」といったテクノロジーが農業分野と深く結びついています。
以下にアグテックの例を紹介していきます。
・種まき、農薬散布
・収穫作業
アグテックの一例がドローンを用いた種まき、農薬散布です。
米を例に取ると、米は春〜夏の種まきと農薬散布が必須の作業です。
春先に田んぼに種を植え、その後防虫効果のある農薬を散布するイメージです。
従来、種まきと農薬散布は人の手、もしくは農機具を用いて実施されていたため、重労働になりがちでした。
アグテックが進展するにつれて、種まきおよび農薬散布の作業がドローンに置き換わりつつあります。
ドローンに種もしくは農薬を格納し、田んぼに上空から散布する作業が可能となりました。
この結果、農業分野の深刻な人手不足の助けになると期待されています。
アグテックのもう一つの一例がGPSを用いた収穫作業です。
米を例に取ると、夏の終わり頃〜秋にかけて米の収穫作業が発生します。
現在、その作業は人の手、もしくはコンバイン(米の収穫用農業機械)といった機械で実施されています。
アグテックの発展により、この作業が自動化されてきています。
現在、多くのコンバインは人が乗って操縦をするものでありますが、その操縦がGPSにより自動化されてきています。
ドローンによる種、農薬の散布に加えて、収穫作業を完全に自動化することが出来れば、一連の農作業を自動化することが可能となります。
この結果、大規模な農作でも少人数で実施することが出来るようになり、人手不足の解消につながると期待されています。
上記に解説をしてきたフードテック、アグテックの市場は今後大きく伸びることが予想されています。
実際、ビルゲイツやJAYZといった投資家がフードテック、アグテックといった分野に積極的に投資を行っています。
以下に詳しく解説していきます。
フードテックの市場は今後も伸びていく事が予想されています。
三菱総合研究所が2020年に行った調査によると、2020年には24兆円、2050年には279兆円になることが見込まれています。
大きな理由の一つが、高齢化です。
日本を含む高齢化が進むにつれて、若年層が少なくなってくると、それに伴って、食糧生産や物流に従事する人口も減少してきます。
結果、少ない人数でより効率的に多くの食料を生産する必要性が出てきます。
この理由から、効率的に生産したり物流を行ったりする技術が必要となり、フードテックの市場が大きくなると予想されています。
アグテックの市場もフードテックと同様で、今後の伸びが予測されています。
市場調査会社のグローバルインフォメーション株式会社が実施した調査によると、2019年時点のアグテックの市場は約1兆円600億円(約75億ドル)であり、2027年には5兆8000億円に到達するとの試算がされています。
アグテックの市場の伸びの大きな理由の一つが、フードテック同様、「生産人口の高齢化」です。
農業に従事する人口が減少するにつれて、農業も作業の効率化が求められてきています。
実際、日本では高齢化に伴って、農場従事人口が減り、食料自給率が低下しているとされています。
こういった問題を解決する手段としてアグテックへの投資が増え、今後の市場が伸びていくのではないかと予想されています。
フードテックとは「食もしくはその周辺の分野とテクノロジーが結びついた分野」のことです。
フードテックの一例は「栄養が計算された完全栄養食」、「実店舗でのスマホ注文、決済(OMO)」等が存在します。
一方で、アグテックは「農業とテクノロジーが結びついた分野」のことを指しています。
アグテックの一例は、ドローンを用いた農薬散布や自動運転を用いた収穫作業が挙げられます。
両方の市場は今後数倍の規模に伸びることが予想されています。
双方に共通する理由としては、「高齢化による生産人口の減少」です。
ぜひ今後、テクノロジー系のニュースを見る際には、「農業」や「食品」といった第一次産業への影響も意識しながらチェックをしてみてください。
PHOTO:iStock
TEXT:PreBell編集部
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