引っ越し時、インターネット回線の手続きは何をすべき? 解約・移転の手続きも解説
引っ越しをする時に忘れてはいけないのがインターネット回線の手続きです。いまやインターネットは、水道や電気・ガスなどのライフラインと同じくらい生活に欠かせないものといえるでしょう。
手続きが遅れると、引っ越してからインターネットを利用できない期間が生まれたり、余分に料金を支払ったりするトラブルにつながるため、余裕をもって手続きを進めておくことが大切です。
本記事では、引っ越し時のインターネット回線手続きですべきことや、具体的な手順・注意点をわかりやすく解説していきます。
引っ越しを機にインターネット回線の乗り換えを検討している人にも役立つ情報ですので、ぜひ参考にしてください。
インターネットの回線事業者とプロバイダを引っ越し前に確認しよう
インターネットを利用している人の多くが、回線事業者とプロバイダの2社と契約しています。しかし、どの会社と契約し、どのプランに加入しているのか、すぐに答えられる人は多くありません。
引っ越し時のインターネット回線手続きを円滑に進めるためにも、まず現在利用しているインターネットについて「回線事業者とプロバイダとどのような契約をしているのか」を確認しましょう。
回線事業者とプロバイダとは
回線事業者とプロバイダの違いは以下のとおりです。
回線事業者は、インターネットに接続するための回線(光回線やADSLなど)を提供する事業者です。代表的な回線事業者には、NTT東日本やKDDI・So-netなどがあります。
プロバイダは、回線事業者から提供されている回線をインターネットとつなげる事業者です。接続事業者やISP(Internet Service Provider)とも呼ばれます。IP電話やメールアドレス・セキュリティソフトなど数多くのサービスも提供しています。OCNやBIGLOBE・Plala・So-netなどが代表的なプロバイダです。
セット契約か別契約かを要確認
回線事業者とプロバイダでは役割が異なるため、先述のとおりインターネットを利用するためにはどちらとも契約を結ぶ必要があります。
そして、契約には次の2パターンがあります。
- 回線事業者とプロバイダをセットで契約
- 回線事業者とプロバイダで個々に別契約
セット契約か別契約かは、契約書を見れば確認できます。万が一、契約書を紛失してしまった場合は、以下の方法でご確認ください。
- 通帳の取引履歴やクレジットカードの利用明細などから料金の請求元を確認する
- 通信速度計測サイト(Speedtest)で確認する
- メールアドレス(@以降の部分)で確認する
- (集合住宅なら)管理会社に確認する
契約がセット契約の場合、引っ越し(移転)や契約解除の手続きはプロバイダにお願いすれば、回線事業者の分もまとめて手続きできることが多いです。別契約の場合は、回線事業者とプロバイダの両方の手続きが必要となります。
例えば、NURO光はプロバイダがSo-net1社のみで判別が簡単ですが、auひかりはSo-netの他にも多くのプロバイダが存在します。 引っ越し時に慌てないためにもあらかじめ契約内容を確認しておきましょう。
インターネット回線の種類によっては引っ越しを機に解約を検討しよう
インターネット回線には、光回線・ADSL・ISDN・CATVおよびモバイル回線の5種類があります。
それぞれの回線で引っ越し時にすべきことは下表のとおり異なります。
インターネット回線の種類 | 特徴 | 引っ越し時に すべきこと |
---|---|---|
光回線 |
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移転手続き |
ADSL |
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解約を検討 |
ISDN(電話回線) |
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解約を検討 |
CATV(ケーブルテレビ) |
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移転手続き |
モバイル回線 (ホームルーター、モバイルルーター) |
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ホームルーターのみ地域変更手続き
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以前はインターネット回線として主流だったADSLやISDNは2023年に終了することが発表されています。現在ADSLやISDNを利用している人は、引っ越しを機に解約し、別の回線への乗り換えを検討しましょう。
引っ越し先で安定した通信品質と通信速度を得たい場合は、光回線が適しています。自宅だけではなく外出先でもインターネット環境が必要な場合や、回線開通工事を避けたい場合は、モバイル回線の利用がおすすめです。
インターネットを引っ越し先で利用するための選択肢
インターネットを引っ越し先で利用するための選択肢は次の2つです。
- インターネット回線を移転して継続利用する
- インターネット回線を引っ越しを機に解約して乗り換える
引っ越し先がマンションやアパートなど集合住宅の場合は、指定のインターネット回線があったり、回線開通工事の許可を得られなかったりすることもあるため、事前に管理会社やオーナーに確認しておきましょう。
インターネット回線を移転して継続利用する
インターネット回線の継続利用のメリットとデメリットは以下のとおりです。
メリット | デメリット |
---|---|
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まず、新規契約や解約の手続きが発生しないため、解約料や違約金を請求されません。また、移転手続きは新規契約に比べてシンプルでわかりやすく、引っ越しの忙しい時期に手間がかからない点も大きなメリットです。
一方、新規契約時のキャンペーンや特典が適用されない点はデメリットといえるでしょう。さらに、サービスによっては移転手数料や工事費が発生するため、別の回線を新規契約したほうが費用負担を軽減できる場合もあります。
「インターネット回線の新規契約手続きは複雑で面倒だから」「スマホとのセット割がなくなると月額料金の負担が大きいから」など理由はさまざまですが、できるだけ手間をかけずにインターネットを利用したい人には継続利用がおすすめです。
インターネット回線を引っ越しを機に解約して乗り換える
インターネット回線の乗り換え(新規契約)のメリットとデメリットは以下のとおりです。
メリット | デメリット |
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乗り換え(新規契約)時は、多くの事業者でキャンペーンやキャッシュバックなどの特典が用意されています。現契約の解約料や違約金を負担してくれたり、契約初月から期間限定で料金割引を受けられたりすることもあるため、経済的負担が軽減される点は乗り換えの大きなメリットです。
しかし、継続利用に比べて、乗り換えは手間や労力がかかります。また、お得なキャンペーンやキャッシュバックは必ず適用されるわけではなく、内容や期間が常に変わります。
「乗り換えのキャッシュバックが受けられて月額料金が安くなるから」「現在のインターネット回線は通信が不安定だから」という人には乗り換えがおすすめします。ただし、複数の事業者について、キャンペーンや特典・サービス内容などをよく比較したうえで選びましょう。
移転と乗り換えどちらを選ぶべきか
ここまでお話ししてきたとおり、インターネットを引っ越し先で利用する方法は「移転(継続利用)」と「乗り換え(新規契約)」の2つです。
どちらを選ぶべきかについて明確な答えはありません。それぞれのメリットとデメリットを吟味して選ぶことをおすすめします。
ただし、引っ越しを機にインターネット回線の「乗り換え」を行ったほうが、キャッシュバックや料金割引などを受けられるため、毎月の料金とトータルコストが安くなるケースが多いです。
インターネット回線を引っ越し先へ移転して継続利用する場合の手続き
それでは、具体的な手続きの手順について見ていきましょう。まずは、継続利用の場合について解説します。
引っ越し先が集合住宅なら、管理会社へ回線設備が導入済みか確認する
引っ越し先がマンションやアパートなど集合住宅なら、管理会社またはオーナーに引っ越し先の住居にインターネット回線設備が導入済みかを問い合わせましょう。すでに導入されている場合、回線の種類と回線事業者の名前もあわせて確認します。
もしくは、現在利用中の回線事業者またはプロバイダに問い合わせれば、引っ越し先の集合住宅に同じ回線事業者の回線が導入済みかどうかを確認できる場合もあります。
回線事業者やプロバイダへ移転する旨を伝える
契約している回線事業者とプロバイダに、引っ越し先でも同じインターネット回線を移転(継続利用)することを伝えます。
移転を伝える際は、回線事業者とプロバイダを別々に契約している場合は2社へ、セットで契約している場合は契約元1社へ以下の項目を伝える必要があるため、あらかじめまとめておきましょう。
- 契約者名
- 契約者の連絡先電話番号
- 連絡可能な曜日や時間帯
- 引っ越し(移転)先の住所
- 引っ越し(移転)先の開通工事日
- 引っ越し(移転)先の契約プラン
- 引っ越し(移転)の予定日(転出日や最終利用日)
- 引っ越し(移転)先の住居タイプ(集合住宅、戸建て)
現プロバイダが引っ越し先で利用できるかを確認する
プロバイダに移転の旨を伝える際は、引っ越し先で利用できるかどうかもあわせて確認しましょう。
先ほどまとめておいた「引っ越し先(移転)の住所」や「引っ越し(移転)先の住居タイプ」などを伝えて利用できるかどうかを確認します。
引っ越し先が提供エリア外であれば、現契約を解約して引っ越し先で利用できるプロバイダを新たに見つける必要があります。また、引っ越し先の住居タイプ(集合住宅や戸建て)によってはプランが変更になる可能性もあるため、引っ越し先の状況を詳しく伝えて不明な点をなくしておきましょう。
現住居の回線撤去工事の有無を確認する
引っ越しをする際は、引っ越し先だけではなく現住居でもやるべきことがあります。それが、現住居の回線撤去工事が必要かどうかの確認です。
回線設備を残すかどうかについては建物の所有者しか判断できません。そのため、現住居が賃貸物件の場合、建物の所有者である管理会社やオーナーに設備の撤去が必要かを確認する必要があるのです。
設備の撤去が必要といわれたら、回線事業者またはプロバイダに移転する旨を伝える際に、回線撤去工事や工事費についても確認しましょう。
新居での工事を行う
引っ越し先の新居でインターネットを利用するためには、基本的に回線開通工事が必要です。工事とは、電柱から引っ越し先の住居に光ファイバーを引き込んだり、室内に必要な設備を整えたりする回線開通工事のことです。
工事を行う場合は、契約者や利用者が工事に立ち会わなければなりません。3〜5月前後の引っ越しシーズンは予約が取りにくくなるため、インターネットを利用できない期間が発生しないよう、工事予定日は余裕を見て調整しましょう。
引っ越し先で回線設備が導入済みの場合は、工事をせずに指定ルーターを差し込めばすぐにインターネットを利用できる場合もあります。
新居でインターネット接続設定を行う
引っ越し先で回線開通工事が終わったら、利用者がインターネットの接続設定を行います。
具体的な接続設定の方法は、各社が提供するルーターや接続方法により異なりますが、マニュアルや公式サイトなどに従って利用環境を整えていきます。
うまく接続できなかったり、途中でトラブルが起きたりした場合はプロバイダに問い合わせましょう。
インターネット回線を引っ越しを機に解約して乗り換える場合の手続き
続いて、引っ越しを機に現契約を解約し、新しい回線事業者とプロバイダに乗り換える場合の手順について解説します。
現契約を解約する
まずは、現契約を解約する手続きを進めましょう。
インターネットを利用できない期間が生じないように、現契約を解約する際は、新たな乗り換え先との新規契約手続きと並行して行いましょう。
現在契約中の回線事業者やプロバイダに解約を申し込む
回線事業者とプロバイダを別々に契約している場合は、回線事業者とプロバイダそれぞれに解約の旨を連絡しましょう。契約者名や最終利用日などをあらかじめまとめておくと、円滑に進められます。
プロバイダを通して回線事業者と契約(セット契約)している場合は、プロバイダ1社にのみ解約の連絡を入れましょう。
現プロバイダに機器返却や違約金、回線撤去工事の有無を確認する
現プロバイダに解約の連絡を入れる際は、以下についても確認しましょう。
- レンタルしている機器は返却する必要があるのか
- 違約金は発生するのか、発生する場合はいくらか
- 現住居の回線撤去工事は必要か
- 利用料金の支払いはいくらか(日額、月額など)
マンションやアパートなど集合住宅の場合は、管理会社やオーナーに既存回線を撤去する必要があるかどうかも確認しておきましょう。入居契約時に勧められたインターネット回線であれば撤去は不要となりますが、個人的な都合で導入した場合は撤去を求められる可能性もあります。
新規で契約する
現契約の解約と並行して、乗り換え先の回線事業者とプロバイダとの新規契約を進めていきます。
回線事業者を選ぶ
先述のとおり、インターネット回線には光回線・ADSL・ISDN・CATVなどの「固定回線」と、モバイルWi-Fiやホームルーターを利用する「モバイル回線」が存在します。
自宅で安定した高速通信を希望する人には「固定回線」、特に光回線がおすすめです。外出先でもインターネットを利用したい人には「モバイル回線」が適しています。
回線事業者の比較検討をする際は、次の項目をチェックしましょう。
- 月額料金
- 提供エリア
- 通信速度や安定性
提供エリアが限定的・局所的な回線事業者も存在するため、希望する回線事業者が引っ越し先でも利用できるかどうかを確認しましょう。
プロバイダを選ぶ
プロバイダは回線事業者に比べて多く存在しますが、以下の項目を比較し、自身に合うプロバイダを選びましょう。
- 月額料金
- サポートの手厚さ
- 通信速度や安定性
- キャンペーンや特典
- サービスやプランの内容
回線事業者とプロバイダに新規契約を申し込む
回線事業者とプロバイダに新規契約を申し込む際、別契約とセット契約の2通りが存在します。
別契約の場合、回線事業者とプロバイダの2社に申し込みが必要です。回線事業者には提供エリアの確認、プランやプロバイダの選択、契約者の個人情報入力を行います。その後、プロバイダに、選択した回線事業者の名称や希望のサービス(プラン)、契約者の個人情報などを伝えます。
セット契約の場合は、プロバイダを経由して回線事業者への手続きも行われるため、プロバイダのみに申し込みをすれば手続きは完了です。
新居で工事を行う
先述のとおり、引っ越し先ではインターネットを利用するために原則として回線開通工事が必要です。マンションやアパートなど集合住宅の場合は、管理会社に工事可能かをあらかじめ確認しておきましょう。
引っ越し先で回線設備が導入済みの場合は、工事をせずに指定ルーターを差し込めばすぐにインターネットを利用できる場合もあります。
新居でインターネット接続設定を行う
移転(継続利用)のときと同様、引っ越し先で回線開通工事が終わったら、利用者がインターネットの接続設定を行います。
スマートフォンやパソコン・タブレットなどと接続し、問題なくインターネットに接続できるか、通信速度や安定性は十分かを確認しましょう。
インターネット回線の引っ越し手続きにおける注意点
インターネット回線の引っ越し手続きにおける注意点を3つ解説します。
引っ越し前後でインターネットを利用できないことがある
光回線のような固定回線を利用する場合、基本的には回線開通工事が必要です。工事が長引いたり、工事日が調整できなかったりすると、引っ越してからインターネットを利用できない期間が発生することがあります。
工事完了まで、スマートフォンのテザリングを使ってパソコンやタブレットでインターネットを利用することも可能ですが、通信容量の上限に達してしまい通信制限がかかるケースも少なくありません。
そのため「移転(継続利用)」と「乗り換え(新規契約)」いずれの場合でも、1週間〜2週間ほど前から余裕をもって手続きを進めておきましょう。
引っ越し先の新居では立会工事が必要となることがある
引っ越し先における回線工事や設置工事では、立会いが必要になることもあります。
例えば、光回線の場合、まだ回線が引かれていない集合住宅や戸建てであれば、2時間程度の工事が必要です。すでに建物に回線が引かれていて、屋内に回線を引いてルーターや機器を設置するだけの工事であれば、30分~1時間程度で終わります。
立会工事が必要となることも考慮して、余裕のあるスケジュールで手続きを進めておくとよいでしょう。
引っ越し先にインターネット回線を移転しても安定しないことがある
現契約の回線事業者とプロバイダを移転(継続利用)しても、引っ越し先で通信速度が遅くなったり、通信が安定しなかったりすることもあります。引っ越し先のエリアや建物の配線方法などが変わると、通信速度や安定性に影響を及ぼすためです。
ただし、混雑しやすいポイントを回避できるIPv6(IPoE)という接続方式を利用できれば、引っ越し先でも高速かつ安定した通信ができる可能性は高まります。
引っ越し先に移転(継続利用)して満足できるインターネット環境が得られなければ、乗り換えを検討しましょう。
まとめ
引っ越し時のインターネット回線の手続きについて、手順や注意点を解説しました。
移転(継続利用)と乗り換え(新規契約)では、手続きの内容が異なります。回線事業者とプロバイダの契約が個別であれば両者へ、セット契約であれば契約元に連絡しなければなりません。
現住居の回線撤去工事や引っ越し先の回線開通工事には立会いが必要ですが、引っ越しシーズンは予約が取りにくい状況が続きます。引っ越しが決まった段階から、余裕をもったスケジュールでインターネット回線の手続きを進めておくことをおすすめします。
インターネット回線の引っ越し手続きが円滑に進められるよう、本記事がお役に立てば幸いです。
TEXT:PreBell編集部
PHOTO:iStock
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