スマートウォッチで、生活はどう変わる? 「wena wrist」事業責任者に聞いた「半歩先の未来」とは(前編) ニュース

スマートウォッチで、生活はどう変わる? 「wena wrist」事業責任者に聞いた「半歩先の未来」とは(前編)

IoT(モノのインターネット)化が進み、すべてのモノがインターネットにつながる。そんな未来はもう目の前まで来ています。一方で「スマートウォッチって何がいいの?」「モノがインターネットにつながると、生活ってどう変わるの?」など、多くの人にとっては、そんな未来がまだまだ想像できないのも事実です。そこで今回はソニー株式会社でスマートウォッチ「wena wrist(ウエナ リスト)」を開発した對馬哲平(つしまてっぺい)さんに、そんな未来のお話について開発秘話を交えてお伺いしました。

「wena wrist」で目指したのは「ちょっとした手間をなくすこと」

對馬さんの開発ノート

入社1年目で事業責任者として頭角を現した對馬さんは、元々大のガジェット好き。「ウエアラブルデバイスを開発したい」という思いでソニーに入社し、見事に新規事業プロジェクトとして「wena wrist」が採択され、開発のステップへと進んでいきました。

對馬さんが開発時に意識したのは「時計らしさ」。元々、腕時計もスマートバンドもスマートウォッチも全部つけていた對馬さんですが「どうしても違和感があるので、一つにまとめて自然な形で身につけられるスマートウォッチを作ろうと思った」のが「wena」の開発を思い立ったきっかけでした。そのため、スマートウォッチというと、最新テクノロジーのすべてを載せたハイスペックなデバイスを想像しますが「最初は自分のスケッチでも、本当にさまざまな機能を盛り込んだスマートウォッチを思い描いていました。ところがすぐに、その機能を全部盛り込むと、ゴテゴテしてとても大きくなってしまうことがわかりました。そこで『それだとダサいから着けたくない』ということになって、機能を絞り込みました」と、對馬さんは説明します。

その言葉通り「wena wrist」は「お財布ケータイ」「行動ログ」「プッシュ通知」という3つの機能にシンプルに絞り込まれています。その基準を對馬さんは「ちょっとした手間をなくすことを意識しました」と説明します。

「何かを減らせるということを基準に考えました。動作だったり、持ち物だったりというところですね。例えばお財布ケータイはポケットからお財布を取り出す動きが減りますよね。行動ログを取るには専用のバンドが必要でしたが、wena wristを着けていれば新しくつける必要もありません。スマホのプッシュ通知が時計でわかれば、バッグに入れておける。スマホも大きくなっているので、ポケットに入れるのは、特に女性は嫌だと思うんですよね」。

高機能よりも、生活の中でどう使われ、どうやって役立っていくのか。そんなことを對馬さんは考えたようです。

スマートデバイスは「ハイテク」と「自然な形で着けられるモノ」の2種類に

對馬哲平さん

對馬さんは「スマートウォッチを始め、スマートデバイスは2つの種類に分かれていくんだと思います」と予想します。一つはテクノロジーを追求した、ハイスペックなガジェット。もう一つは取捨選択した自然な形で使えるもの。「wena wrist」は後者です。

「この2つは全然ターゲットが違うと思います。スマートウォッチは機能面がより充実していくことになります。なのでwena wristは機能を絞りながら、深めていく方向で考えています。例えば活動量計だと、今は消費カロリーや歩数しか取れませんが、心拍や発汗も取れるとヘルスケアにつながっていきます。今後は同じコンセプトの上で、別のハードウエアを出したり、コラボレーションをしたり、ということを考えていきたい」

あくまでも自然に、そして無理なく、その上で新しくできることを少しずつプラスする。對馬さんの思い描く未来は、じんわりとですが、確実に生活に広まっています。

「考えて、考えて、さらに考える。好きなモノに対する“想い”が大事」

wena

「ウエアラブルが好きじゃなければ、wenaは作っていなかった」と話す對馬さん。漫画も大好きで「作者の主観や考え、こうあるべきだという想いが入っているモノが好きです。映画でも漫画でも、そういう作品に惹かれる。逆にそういうのがなくて、作品の良さよりも、政治的理由や大人の事情で純度が低いモノを見ると、少し興味が薄れるんですよね」と話します。

シンプルでユーザーを第一に考えるコンセプトの裏には「本当に好きなモノでなければダメ。そういった思いみたいなのがないと、他人は共感しないと思っています。若い人にアドバイス、という立場でもないですけど、頭がちぎれるくらい考えた方がいい」(對馬さん)という熱い想いが込められています。ただテクノロジーを追いかけるのでなく、使いやすさを考える背景には、こんな人間臭い一面も関係しているようです。

スマートウォッチの登場で、無理をすることなく、少しだけ暮らしが楽になる。そして、その「少しだけ」は、これからどんどん増えていきそうです。次回はウエアラブルデバイスを追求してきた對馬さんが見据える、未来のスマートライフについてお伺いします。

 

對馬哲平(つしまてっぺい)
wena projectリーダー。1989年11月生まれ、大阪府出身。2014年大阪大学大学院工学研究科卒業後にソニーモバイルコミュニケーションズ(株)入社。2015年3月よりソニー(株)新規事業創出部wena事業室の統括課長としてwena projectの事業開発に邁進中。

INTERVIEW & PHOTO:ワタナベダイスケ

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