ゲーム実況動画って何が楽しいの? 「観る専門」の人たちに理由を聞いてきた
ゲームをプレイしながら攻略方法を解説したり、高難易度のゲームを華麗にクリアしたりするなどさまざまなスタイルで視聴者を魅了する「ゲーム実況動画」。最近はゲームをせず、実況動画を観るだけで満足している方が増えているほどだといいますが、どんなところに魅力があるのでしょうか。今回はゲーム実況動画にハマっている方々にお話を伺いつつ、ゲーム実況の配信プラットフォーム運営会社の中の人に話を聞き、その実態に迫りました。
皆さん、最近ゲームをプレイしていますか?
Nintendo SwitchやPlayStation®4などの据え置きゲーム、ニンテンドー3DSやPS VITAなどの携帯型ゲーム、さらにはスマートフォン向けのゲームなど、世の中にはたくさんのゲームが溢れています。
これまでゲームといえば自分でプレイするのが当たり前でしたが、最近は他人がプレイしている「ゲーム実況動画」を観て楽しむことが世界的に流行しているそうなのです。
が、物心ついた頃からスーパーファミコンやプレイステーション、ゲームボーイ、ニンテンドー64などのハードが世の中に溢れていた、いわば「ゲーム全盛期」で生まれた僕にとっては、この「ゲーム実況動画」の楽しみ方が全く分かりません。ゲームといえば「プレイして楽しむもの」という概念が抜けないからです。
「現代人はゲームをする時間がない」と言われることもありますが、僕に言わせればそれは怠慢。時間は作ろうとすれば、作れるものなのです。ゲーム実況動画を観る時間があれば、プレイする時間だって作れるはずです。というか、絶対にプレイした方が楽しいし。
でも、それはあくまで僕の個人的な主張であるし、もしかしたら僕が知らない「ゲーム実況動画」の楽しみ方もあるかもしれない。
ということで今回は、「ゲーム実況動画」を観るだけで楽しい、ゲームをしなくても楽しいと言う皆さんにお話を聞いて、さらに後半では、動画を配信するプラットフォームを提供する「OPENREC.tv」さんにお話を伺ってきました。
ゲーム実況は「友人がプレイしている様子を一緒に観ている感じ」
集まってもらった3人は、暇があるたびに「ゲーム実況動画」を観て過ごすとのこと。僕から言わせてみれば、「この人たち、本当にゲームが好きなの?」と思ってしまいます。
それでは早速聞いてみましょう。(プライバシー考慮のため、仮面を被ってもらい取材をしています)
皆さんはどんなゲームの動画を観ることが多いのでしょうか。 |
僕は格闘ゲームのプレイ動画を観ることが多いのですが……。まずこの話をする前に、前提にゲーム実況動画にどんな種類があるのかを説明したほうが良いかもしれません。 |
あ、ぜひお願いします。 |
まず、プレイヤーがおしゃべりをしながらゲームをプレイする「実況プレイ動画」。これはゲームをプレイしている様を録画・編集をし、プラットフォーム上にアップしているものです。YouTubeやニコニコ動画に多い傾向ですね。約10年くらいの長い間、コンスタントに盛り上がりを見せています。 |
RPGゲームとかに多いってことでしょうか。 |
そうですね! どんなゲームでもできますが、そう考えて頂けると分かりやすいかもしれません。そして次に、格闘ゲームやシューティングで高得点を出す「スーパープレイ動画」。これは、ストーリーというよりも配信者のテクニックを見せることに重きを置いています。 |
エースコンバットとか……。 |
はい、ただシューティングゲームだけではなく、例えばマリオなどのアクションゲームでも、どのくらいの速度で全てのステージをクリア出来るかなど、それぞれ皆さんが各ゲームのテクニックを駆使してプレイしている方がいらっしゃいますね。 |
なるほど。 |
その他にも本来の遊び方ではないプレイスタイルでゲーム行う「ネタ動画」。これはニコニコ動画に多いのですが……。幕末志士さん(編集部注:「坂本さん」と「西郷さん」の2人による超人気ゲーム実況グループ。視聴者からは「笑いの神に愛された」と評されている)がアップをし、伝説となっている「緑の悪魔」はご存知でしょうか? |
ちょっと存じ上げないですね……。 |
そうですか。電車で観ると思わず「うわぁ〜!?!?!」とか言っちゃって周りの乗客に変な目で見られてしまうような面白い動画なので、ぜひ観てみてください。僕はもう100回以上観ていますが、それでも電車の中では観られませんから。 |
はい。では家に帰ったら観てみようと思います。 |
そして、最近特に人気を博しているのが、プレイヤーが生放送でプレイをする「実況プレイ生配信動画」。ここ数年で爆発的に広まっているんです。 |
大仏さん、めっちゃ詳しいですね。 |
今日のために、業界の動向を予習してきました。ちゃんと喋らないとカットされるかなと思ったので。 |
さすがです。 |
えーと、では皆さんは、このような種類の動画をいくつも観て日々を過ごされるということだと思うのですが、動画を観るとそのゲームを実際にプレイしたくなることはないのでしょうか。 |
あんまり思わないんですよね……。観るだけで満足してしまうというか。 |
私もそうですね。そこにはあまり興味が湧かないんです。 |
僕もです。 |
(なぜ……?)というと、もしゲームをプレイする時間があれば、プレイしたいと思うのでしょうか? |
うーん……。そういうことでもないですね。私の場合は、ゲームの攻略方法を動画で知るというよりも、友人の家で友人がプレイしている様子を一緒に観ている感じに近いんですよね。 |
あー、なるほど……? |
なので別に、画面を凝視してちゃんと観なくてもいいし、“ながら見”くらいでちょうど良いというか。ラジオ感覚で聞いているだけということもあります。 |
(ゲームなのに、聞いてるだけ?) |
僕の場合は、テクニック系の動画を観ることが多いのですが、自分のプレイしているゲームと実況者さんがアップしたプレイ動画は、全く別のものとして捉えていて。 |
全く別のもの? |
自分では絶対に出来ないことを、実況者さんが挑戦してくれているというか。 |
あーわかりますそれ! 自分とはベクトルが違うんですよね。違う世界の住人というか。 |
そうです、そうです。 |
なるほど……。というか…… |
やっぱり、楽しさがよくわからない……。
お話を聞き続けても、ゲーム実況動画を観続けてしまう動機、なぜ動画を観て実際に挑戦したくならないのか、ゲーム実況動画の魅力とはなんなのか……。それらがまだイマイチ理解できていないのです。
ゲーム実況動画配信大手「OPENREC.tv」に聞いてみた
ということで、いっその事「ゲーム実況動画」のプラットフォームを提供している会社にお話を聞いて、どんな楽しみ方があるのかを聞いてみることにしました。
取材に協力していただいたのは、実況動画の人気プラットフォーム「OPENREC.tv」(オープンレック)を運営する株式会社CyberZの清水さん。
「OPENREC.tv」は2015年にサービスを開始し、先日3周年を迎えた、ゲームに特化したライブ配信・動画コミュニティプラットフォーム。「RAGE」という国内最大規模のeスポーツ大会の運営や、「OPENREC.tv」内でのオリジナル番組の展開、ゲームメーカーとのタイアップや、実況主を集めたオリジナルコンテンツの提供など、幅広く事業を行っているんだそう。
お忙しい中取材に協力いただき、ありがとうございます。 あの、率直にお聞きしたいんですけど……。ゲーム実況の動画をアップして収益を得るって、違法なのではないでしょうか? |
率直……。ですね(笑) |
すみません。ずっと気になっていて……。これを晴らさないと、取材を進めていけないような気がして……。 |
良く聞かれることなのですが、OPENREC.tvでは、配信者収益プログラム“OPENRECクリエイターズプログラム”を用意しております。 “OPENRECクリエイターズプログラム”とは、OPENREC.tvでの動画配信を通じて配信者が収益化できる公式プログラムのことでして。 視聴者からの“エール機能”と動画の再生時に表示される広告など、OPENREC.tvで発生した収益の一部を配信者が受け取ることができるので、これにより配信者は、利用するゲームメーカーの著作物を選択して収益化が可能になります。 つまり、ライブ配信においてゲームメーカーの著作物を利用したマネタイズが可能になるということなんです。 |
そうなるとユーザーさんも「OPENREC.tv」を使えば安心して動画を配信できるということですね。ちなみにどんなゲーム会社さんとそうした取り組みをしていてらっしゃるんですか? |
ひとつ自信を持って挙げるのであれば「任天堂」さんと契約を結んでいます。 |
任天堂! |
OPENREC.tvが国内で初めて、ライブ配信に限り任天堂のタイトルを使って収益を上げていいという契約を結びまして。「Splatoon 2(スプラトゥーン 2)」や「ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド」などの人気ゲームのライブ放送をアップして、ユーザーが収益を得ることも可能なんです。 また、「OPENREC.tv」は他の動画配信プラットフォームのように誰でも配信できるわけではないんです。承認制を取っているので、審査を通過した方だけが動画を配信することができます。 |
すごい。ゲーム実況動画って、とても進化してらっしゃるんですね。実況者さんも収益を得られるということで、これまで以上にやりがいもありますでしょうし。承認制ってところも斬新です。 ただ、実況者さんではなく、一般の視聴者さんって、何を楽しみに観ているのでしょうか。先日「暇さえあればゲーム実況を観る」という人たちにお話を聞いたのですが、聞いても楽しみ方がいまいちピンと来なかったんですよね……。 |
ゲーム実況動画鑑賞はスポーツ観戦といっしょ
例えば長橋さんは、普段スポーツはされますか? |
小さい頃、少年野球をやっていましたが、ここ10年はちゃんと運動はしていないですね。 |
お、野球をされていたんですか。となると、プロ野球は結構お好きでしょうか? |
そうですね! 東京出身ということもあって、ジャイアンツファンです。今年はオープン戦の調子が良かったので、シーズンも上手くいくと嬉しいのですが……。 |
昔は野球をやっていて、でも今はやっていない。けど、プロ野球は好きで観ている……。要するに、これってゲーム実況動画鑑賞の世界と一緒なんですよ。 |
え? どういうことでしょうか。 |
長橋さんがおっしゃっていた、「ゲームをしないのにゲーム実況動画を観ている人の意味がわからない」という疑問。僕が考えるにこの人たちは、昔はゲームを楽しんでいて、でも今は何らかの理由でプレイしていない。それで…… |
ゲーム実況を観ていると……! |
そういうことです! ゲーム実況を楽しんでいる人たちは、プロ野球を観て楽しむ感覚と一緒なんじゃないかと。 |
なるほど……。野球をやったことがない人でもプロ野球を観て楽しむ人がいますよね。そう考えると、ゲームを昔プレイしていなかった人も、実況動画は面白くて観るという方もいらっしゃるのでしょうか。 |
はい、たくさんいらっしゃいますよ。実際にゲームはプレイしたことがなくても、実況者さんの成長を追いかけたり、動画にコメントして実況者さんとのコミュニケーションを楽しんだり……。例えば格闘ゲームはルールもわかり易いので、本当にスポーツを観ている感覚で観ることもできます。次の試合はいつだろう……となって、観続ける動機のひとつになっていることもあるかと思います。 |
要するに、ゲームをプレイすること同様、ゲーム実況動画を観ることも別個のエンターテインメントなわけですね……! |
そういうことです……! ゲームはプレイして楽しむものだけではないという時代に本格的になってきていて。また、あくまで僕の仮説ですが、ゲームメーカー側も大会や試合を通じて観られることを見越してタイトルを作っているような節もあるんですよ。 |
ほう……。10年前とはゲーム自体の作り方が異なっているんですね……。 ただ、今のお話は“格ゲーやスプラトゥーンのような対戦ゲームをスポーツ感覚で観る方が増えている”というお話だったと思うのですが、RPGゲームやアクションゲームなどは、どう楽しんでいる方がいるのでしょうか。 |
例えばゼルダなどのアクションゲームは、攻略法を調べるために観る人は多いと思います。ただそれ以上に多いのは、実況者さんが好きで観ているという視聴者さんですね。 |
実況者さんが好き……? |
ゲームのプレイが上手な人はもちろんなのですが、実況者さんの人柄や声が好きで観ている方が多いんです。おしゃべりが本当に上手い人が多いので、ラジオのような感覚で楽しんでいられるのかなと。それもゲーム実況動画の魅力のひとつなんです。 |
なるほど、だから「ながら見」や「聞くことだけ」で楽しめるってことですね。 |
はい。また、僕もゲーム実況を観ることが多いのでわかるのですが、観ることで自分自身を実況者さんに投影出来ると思うんですよね。プレイしている実況者さんのことを自分だと思えるんです。一緒にストーリーを進めている感覚があるんですよ。 |
っていうと、小さい頃、お兄ちゃんがゲームをやっていて、それを観ている感じに近いって感じですかね。 |
わかり易い例えですね。あとは、実況者さんよりも先にゲームをプレイしておいて、実況者さんが謎解きで困ったときに答えを教えてあげる視聴者の方とか……、いろんなタイプの方がいますね。要するに、ゲームの楽しみ方が多様化しているんですよ。 将来的にも「ゲーム実況」はどんどん伸びていくと思いますし、「週末何をする?」となった時に「ゲーム実況動画を観よう」という選択肢が若い世代を中心に生まれていくはずです。サッカーや野球、映画を観に行くことと同じように、「ゲームを観に行く」という選択肢が出てくるのではないかなと思っています。 |
なるほど……。清水さんにお話を聞いて、本当に良かったです! ゲーム実況動画の楽しみ方がわかったような気がします。 とりあえず家に帰ったら、「スプラトゥーン2」の動画を「OPENREC.tv」さんで観てみようかと思います。 |
ありがとうございます。いろんな実況者さんがいるので、ぜひお気に入りの方を探してみてください。ちなみに僕は「スプラトゥーン 2」の動画、AmazonのFire TVでテレビに繋いで食卓で観ています。ご飯を食べながら観る「スプラトゥーン 2」は楽しいですよ! |
ご飯を食べる時は「テラスハウス」を観ているので、それはちょっと遠慮しておきます。軽井沢編、めっちゃ楽しいんで、清水さんもご覧になってみてください。ぜひ副音声で。 |
交換条件ということですか……。検討しておきます。 |
みなさんにお話を聞いて。
最初に3名の方々にお話を聞いた際に思った、「ゲーム実況動画を観ているだけで、本当に楽しいの?」という疑問。
清水さんにお話を聞いて、その疑問がスッキリ解消されました。
僕がテレビを観るように、ラジオを聴くように、スマホでTwitterをいじるように、「ゲーム実況動画」はひとつの娯楽として存在しているのです。実況者と視聴者でコミュニケーションが取れるようになったり、違法ではなくなったりと、ゲーム実況を取り巻く環境も様々な進化を遂げている。多種多様になったからこそ、ゲームが好きとか嫌いとか関係なく、どんな見方があっても良いのです。
最後に、清水さんがお話の中で「据え置きゲームのハードの売り上げも、最近は回復傾向にもある気がします。その上、各ゲーム会社のビジネスの仕方も変わっている。ハード・ゲームを売るだけの仕事ではなく、コンテンツを売るという形にシフトチェンジするのかなと思いますね」とおっしゃっていました。
どんどん新しくなるゲーム業界の未来。今からチェックしていないと、数年後には乗り遅れちゃうかもしれません。記事をきっかけに「ゲーム実況動画」に興味を持った方は、まずは「OPENREC.tv」を覗いてみてはいかがでしょうか。
TEXT:長橋諒
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