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2019.09.30 【ITとスポーツの今・データ編】データでスポーツ観戦はどう変わる? データスタジアムが取り組む「新しい視聴体験」

テクノロジーとは無縁のイメージだったスポーツの世界。しかし、最近では「プレイ」「観戦」など、スポーツのさまざまな面とテクノロジーが融合し、スポーツをよりエキサイティングに楽しめるようになっています。「ITとスポーツの今」について、全3回にわたってレポートする本連載。第2回は「データ」についてです。

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データ活用でスポーツ観戦に起きた変化

ITの発展によって、スポーツにまつわるさまざまなデータが詳細に取得できるようになりました。例えばテレビの野球中継も、ピッチャーの球種はもちろん、ボールの軌道や配球などもデータ化され、リアルタイムで画面に表示されるようになっています。それによって、私たちはこれまで目で見ただけではわからなかったさまざまな情報とともに、試合の観戦ができるようになりました。

そこで今回は、データスタジアム株式会社の高瀬健一郎さんにデータを活用したスポーツ観戦の今と未来について伺いました。

高瀬健一郎さん

PreBell編集部:データスタジアムでは、プロ野球やJリーグなどの試合で取得したデータを活用してビジネスにしていると伺っています。具体的にどのようなところでデータが使われているのでしょうか?

高瀬:ひとつはスポーツの話題を扱っているネットメディア。スポーツナビ、スポーツブル、スパイア、グノシー、スマートニュースなどネットメディアを中心に幅広く、試合の途中経過や結果などのデータを提供しており、速報記事やデータを活用した記事の制作に活かされています。

一球速報等の画面スポーツ好きにはお馴染みの1球速報。実はデータスタジアムの提供データにより可能に。| ©スポーツナビ/スポナビ 野球速報

また、ゲーム会社へのデータ提供も行っています。野球やサッカーのゲームに実際の選手が登場していることがありますよね。各選手のステータスを決める際に、私たちのデータが活用されているんです。

PreBell編集部:スポーツゲームにも活用されているんですね。

高瀬:以前だったら選手の能力を途中で変更することはできませんでした。ところが近年は、インターネットを通じてゲームデータを更新できるようになっているので、シーズン途中でも選手の能力値を決めるパラメータを変更できます。

調子の良い選手は途中で数値を上げたり、逆に成績の悪い選手は能力を下げたり。そうするとデータ更新を定期的に行う必要が出てくるので、私たちのようなデータを取っている企業が定期的に情報を提供しているんです。

 株式会社コロプラが配信するスマホゲーム「プロ野球バーサス」 株式会社コロプラが配信するスマホゲーム「プロ野球バーサス」

PreBell編集部:テレビでスポーツを観戦していると、リプレイなどで球の軌道などが瞬時にビジュアライズされたりしますよね。そういった場面でもデータが活用されているのでしょうか?

高瀬:そうですね。ネットメディアの他にも野球中継時には配球データや球種などを提供しているほか、現地のオペレータと連携してリアルタイムでデータをビジュアライズしていくこともあります。そうやってさまざまなメディアでデータをどのように展開するかを考えるのも私たちの役割のひとつなんです。

PreBell編集部:それでいうと、最近は解説者のコメントもデータを引用する機会が増えたように感じますが、そういった場面でも使われているのでしょうか?

高瀬:はい。解説者の方々には各チームの選手の特徴をまとめて事前にお渡しすることもあります。それによって、これまで以上に深い解説ができるようになっています。それと同時に視聴者の方々にも、いろんなデータを同時に観ながら試合を観戦するスタイルが少しずつ浸透しているのではないかと思います。

高瀬さん

PreBell編集部:以前とは楽しみ方も格段に広がっているわけですね。

高瀬:そうですね。かつてはラジオで実況を聞いて楽しむか、家に帰ってテレビで観戦するしかなかったのが、今ではスマホやタブレットを使っていつでもどこでも視聴できるようになっています。そうしたインターネット技術の発展があることで、私たちが取り扱うデータもさらに多様な使い方がされるようになっていると感じています。

PreBell編集部:データが活用されるようになったことで、スポーツ自体も進化しているのでしょうか?

高瀬:それはあると思います。選手自身もデータが取られていることをわかったうえでプレイをしているので、心理戦や情報戦が見えないところで繰り広げられているはずです。実際、私たちもさまざまなチームにデータの提供を行っているのですが、例えばシュートシーンだけ、特定の選手だけを抽出して連続で映像を確認することもできます。

PreBell編集部:そう考えると、データはリアルタイムで楽しむ場合にも利用できるし、ずっと残して閲覧できるようにすることで価値が生まれる場合もありますよね。

高瀬:取得したデータは時間の情報と紐づけて管理するようにしているので、映像と組み合わせることによって、自分が観たいシーンを検索して視聴できる仕組みになっています。それをベースにプロチーム用のサービス『Football BOX』を開発しました。

Football BOX画面

これを活用するとJリーグのJ1からJ3までの全試合を基本的な試合情報から詳細なスタッツまで確認できます。対戦相手の戦術やセットプレーの決まりなどを分析していて、対策を練ることができるんです。

データを活用すればバーチャル体験もさらにリッチに!

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PreBell編集部:そうしたデータの取得はどのように行なっているのでしょうか?

高瀬:試合ごとに担当者がいて、映像を目視で確認、データ入力しているほか、トラッキングデータは球場に専用カメラを設置してデータを取得しています。

PreBell編集部:そうすると、ひとつの試合でたくさんの方が動いていらっしゃるんですね。

高瀬:プロ野球は最大で1日に6試合同時に行われているので、常時40〜50人が動いています。そのほかにもサッカーやバスケ、ラグビー、最近では卓球などでもデータを取るようになっているので、今まで以上に多くの人が動くようになっています。

PreBell編集部:そんなに多くの方が携わっているんですか! データの取得方法も進化しているのでしょうか?

高瀬:そうですね。例えば、卓球の試合では2台のカメラでトラッキングしているので、高速のラリーも見逃すことなくデータ化することができるようになりました。また、選手の身体の状態をセンシングして測ることもできるようになってきているようです。

例えば、心拍数の上がり方を試合前と試合中で調べることもできます。ただ、生態データは個人情報ですし、勝手に取得していいものではないので、ご本人やチームに許可を取ったうえで、自チームのためのみに利用するなど範囲を限定して、行うことがほとんどです。ですから、現状では選手の強化利用にとどまっているのが現状です。

PreBell編集部:そのほかにもデータを活用したユニークな事例がありますか?

©2018 Akatsuki Inc., All rights reserved.©2018 Akatsuki Inc., All rights reserved.

高瀬:卓球のトラッキングデータを活用したゲームがあります。卓球台の上にプロジェクションマッピングでブロックを映し出し、互いに球を打ち合いながらそのブロックを壊していくゲームです。球が落ちたところのブロックが壊れる仕組みになっているので、裏側では球の落下地点のデータを取得し、その座標をリアルタイムでシステム側に反映させています。これにかかわらず、データの活用方法はさまざまで、エンタメコンテンツとしての広がりも見せています。

視聴者一人ひとりに合わせたコンテンツの提供を実現したい

PreBell編集部:今後、取り組んでいきたいことはありますか?

高瀬:私たちがおもに取り扱っているのはデータですが、それをビジュアル、サービスと結びつけて領域を広げていくことで、新たな価値を生み出せると考えています。例えばデータとAIを組み合わせることで、「次はどんな球種を投げるか」をテーマに視聴者とAIで予測対決することもできます。

スポーツデータAI予想解析メディアCopyright© SPAIA | スポーツデータAI予想解析メディア データスタジアムがデータを提供するスポーツメディア「SPAIA」。AIによる試合のデータ予想・解析結果などを配信。

PreBell編集部:AIと予測勝負、面白そうですね。

高瀬:また、今後はスタジアムでの試合観戦も変わっていくと思います。現状、スタジアムのWi-Fi環境も整いつつあり、オーロラビジョンを通じて選手データやマッチアップデータなどを紹介したり、専用アプリやVIP席に設置されたモニターを通してリプレイを見られるようになっています。データを活用した事例はさらに増えていくのではないでしょうか。

これまでは人気スポーツに限られていたデータの取得もこれからさまざまなスポーツに広がりを見せていきます。

これまではスポーツ観戦をしても「ルールがよくわからない」「何がスゴイのかわからない」なんて思っていた人でも、データでわかりやすく説明されることで、気軽に楽しむことができるように。また、スポーツ通の人にとっても、自分の予想とデータを照らし合わせたりとまた違った楽しみ方が生まれるでしょう。

今後、データがスポーツ観戦をもっとエキサイティングなものにしてくることに、期待しましょう!

映像・メディア事業推進部 部長
高瀬 健一郎(たかせ けんいちろう)

1975年生まれ。2001年データスタジアム(株)創業時に入社し、サッカーデータ事業の立ち上げに携わる。以後メディア向けセールスや新規事業開発等、様々な競技のデータ事業やソリューション開発を経験し現職へ。現在は野球、サッカーを中心としたスポーツデータコンテンツを活用し、ファンエクスペリエンス向上の為のサービス開発、事業開発に従事する。

TEXT:PreBell編集部
PHOTO:森田輝

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