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2020.01.23 新たなカルチャーを生み出す!ゲーム大会を、カッコいいショーに変身させるeスポーツイベント制作ユニットの仕事内容とは?| TTe【eスポーツお仕事図鑑】

会場には数万人が押しかけ、配信を含めると数千万人にも登るファンたちが選手の戦いに熱狂するeスポーツのリアルイベント。今やゲームの枠を超え、新たなエンターテインメントとして、かつてない盛り上がりを見せているのをご存知でしょうか?

そんなeスポーツに関わるさまざまな職業にスポットを当て、お仕事の内容や魅力を伺う「eスポーツお仕事図鑑」。2回目の今回は、eスポーツイベントの演出や運営、配信といったすべてを取り仕切る「eスポーツイベント制作ユニット」のお仕事について、「TOW×T2 Creative e-Sports Unit TTe」(以下、TTe)のみなさんにお話を伺いました!

左から松井一生さん、和田謙一郎さん、近藤大輔さん、三瓶博史さん左から松井一生さん、和田謙一郎さん、近藤大輔さん、三瓶博史さん

TOW×T2 Creative e-Sports Unit TTe(ティー・ティー・イー)
リアルをコアに最適なブランド体験をデザインする会社、体験デザインプロダクション「TOW」の eスポーツ領域における専門ユニット。専門性の高い制作進行・イベント演出と配信映像の統合・システム全体のテクニカル統括の3要素を一貫して行うことを強みとする。これまで手掛けたeスポーツイベントは、荒野行動全国大会「荒野Championship-元年の戦い」、高校生eスポーツ甲子園「STAGE:0 2019」など。

eスポーツイベントをショーアップする、個性豊かなプロフェッショナル

TTeは、2019年9月、設立40年を超えるイベント・プロモーション会社「TOW」から生まれたeスポーツ専門のプロデュースユニットです。今後ますます盛り上がりが見込まれるeスポーツシーンでこれまで培ってきた豊富な実績とノウハウを生かし、より専門的にイベント作りに携わっていこうと、選抜メンバー13人を集めて、少数精鋭のユニットを結成しました。追求するのはかつてないクオリティのeスポーツイベント。それを生み出す専門家集団がTTeなのです!

TTeは、その専門分野が大きく4つの役割に分けられています。今回は、それぞれの役割担当する4名に、お仕事の内容を伺いました。

<1>イベント演出家
はじめにお話を聞いたのは、演出家の近藤大輔さん。イベントプロデューサーを経て、入社4年目の2007年から演出の仕事に専念しています。

近藤大輔さん近藤大輔さん 好きなゲームは「ダービースタリオン」。「実は一人でコツコツやって育て上げるゲームが好きなんです(笑)」

「イベント業界における演出の仕事を一言でいえば、“舞台を仕切り、空間を作り上げること”です。主催者であるクライアントの意向をヒアリングし、企画を考え、効果的な音響や照明を使いながら イベントを“よりエキサイティングに見せる”のが演出の仕事。また、eスポーツイベントの場合は、舞台上ですべてが完結するわけではなくインターネットでの配信での見せ方も重要になります。映像技術や機材操作も複雑になるのでチームでの連携が必須なんですよ」(近藤さん)

リアルと配信。どちらで観ても「かっこいい」eスポーツイベントに演出することこそ、近藤さんが目指すところです。

<2>テクニカルディレクター
そんな、かっこいいeスポーツイベントの演出を技術面でサポートしているのが、テクニカルディレクター。これまでにもさまざまな企業のイベントを手掛け、音響・照明・映像・配信などの機器操作やシステム構築といったノウハウを身につけてきたというテクニカルディレクターの三瓶博史さんにお仕事の内容を伺いました。

三瓶博史さん三瓶博史さん 好きなゲームは「Pokémon GO」。「対戦系もやりますが僕もコツコツ系が好き(笑)」

「特に音響、照明、映像、ネットワーク配信といった、ゲームの映像切り替えなどを、演出家のプランを聞きながら1個の現場でまとめ上げていくのが主な仕事ですね。また、作業時間や予算面を考慮し、『(技術的に)これはできる/できない』と、各所と調整しながら進めていくことも重要な役割の一つになります。やっぱりゼロから現場を立ち上げていくまで時間がかかりますし、いろんな辛いこと、苦しいことがありますが、TTeのような仲間がいるからこそ乗り越えられるというところはありますね」(三瓶さん)

<3>配信映像プロデューサー
eスポーツ大会では、オープニングムービーや選手登場ムービーといったさまざまな映像がオーディエンスを大いに盛り上げます。

配信映像プロデューサーの松井一生さんは、これまで他社で映画、Web動画、CMのプロデューサーやディレクターを歴任してきた映像のエキスパートです。

「会場スクリーンで流す選手の紹介映像、配信に使用するCG映像など、イベントにかかわる映像の制作進行とクオリティの管理を担っています。eスポーツイベントは、会場でも配信でもリアルタイムに反応があって、それがイベントのボルテージにも直結するので、CMや映画では味わえないダイナミズムがありますね。演出セクションが考えた照明や演者の配置に合わせたカメラワークを考え、テクニカルディレクターの技術を生かして会場やネットでその映像を配信する。こうしたチームワークがあってこそ、多種多様な映像を一つにまとめ上げることができるんです」(松井さん)

松井一生さん松井一生さん 好きなゲームは「ファイナルファンタジー」。「僕は対戦が下手で、一人で楽しめるRPGが好きなんですよ」

<4>イベント統括プロデューサー
最後にお話を伺うのは、それぞれの役割をチームとしてまとめあげるイベント統括プロデューサーの和田謙一郎さん。TTeでの仕事の内容や魅力を次のように語ってくれました。

「eスポーツのイベントには、運営に携わる僕たちのようなイベント制作会社だけではなく、ゲームパブリッシャー(※)や広告代理店など、たくさんの関係者が関わっています。彼らの間に立って、イベントを成功へと導くのが僕の仕事。プロジェクトを円滑に進めるためのいわば潤滑油的な役割で、いろいろな視点からイベントに携わることができる面白さがあります」(和田さん)

※ゲームパブリッシャー…ゲームの企画・宣伝・販売・流通を行う会社のこと。有名企業として、スクウェア・エニックス、任天堂、コナミ、セガなどがそれにあたる。

和田謙一郎さん和田謙一郎さん 好きなゲームは「大乱闘スマッシュブラザーズ 」。「ゲームセンター世代なんで、週末は試合とかして遊んでましたね」
TTeのみなさん取材中も笑いが絶えないTTeのみなさん。そのやり取りからチームワークの良さが伺えます

TTeがこれまでに手がけたeスポーツイベント

TTeのみなさんがこれまでに手がけたeスポーツイベントにはどういったものがあるのか聞いてみると、いずれもeスポーツの歴史に名を刻むビッグ・イベントばかり。

■Coca-Cola STAGE:0 eSPORTS High-School Championship 2019
テレビ東京・電通が主催し、アイドルグループ・日向坂46が公式アンバサダーを務めたeスポーツの甲子園的イベント

■FIA Certified Gran Turismo Championships 2018 Asia / Oceania Regional Final
FIA(国際自動車連盟)と人気カ―ゲーム「グランツーリスモ」による全く新しいモータースポーツ大会

■荒野行動全国大会「荒野Championship-元年の戦い」
全世界で3億人のユーザー数を誇る大人気バトルロイヤルゲーム『荒野行動』のリアルイベント

・「荒野Championship」のイベント時の映像

「荒野Championship-元年の戦い」イベントの様子

なかでも、今回登場いただいた4名が携わった「荒野行動全国大会『荒野Championship-元年の戦い』」の運営は、中国の「荒野行動」チーム(※)から、クリエイティブの面で多くの刺激を受けたそうです。

※中国の「荒野行動」チーム…「荒野行動」は、中国のゲーム会社・NetEase Gamesによる、大ヒットオンラインゲーム。日本での大会開催にあたり、TOWがイベント運営を担当した。

「『荒野Championship』は、ライブ配信ではトータル1,000万回を超える再生回数を記録しました。企画から開催まで1年ほど要したのですが、この大会運営に携わる中でeスポーツイベントのノウハウも数多く得られたと思います。TTe設立のきっかけとなった仕事だったと言っても過言ではありません!」(和田さん)

「中国はeスポーツ大国とあって、イベントに対する考え方もとても先進的でしたね。打ち合わせを重ねながら日本の技術や規模感を共有し、そのなかで実現できる最高レベルの答えを探し出していきました。細かい演出にもこだわり抜く彼らの熱意に、多くの刺激を受けました」(三瓶さん)

ちなみに4人は、以前からeスポーツに詳しかったというわけではなく、だからこそ、イベントで取り扱うタイトルについては必ずプレーをしているといいます。前回インタビューしたeスポーツ実況者の平岩康佑さんも、実況前には100時間プレーするといっていましたね。自分がユーザーになってみることでどんなことが見えてくるのでしょうか?

「イベントを手掛けるうえで、実際にプレーしてみないと、そのゲームの盛り上がるポイントを含めた勘所みたいなものがわからないんですよね。たとえば、プレーヤー100人を相手に、MCが入るベストなタイミングや、状況判断の仕方など、ユーザー心や目線を体感として知ることはとても重要なんです」(和田さん)

和田謙一郎さん

eスポーツイベント制作の仕事はここが面白い

TTeの一員としてeスポーツイベントにおける配信動画の制作に携わるようになり、松井さんはその面白さに気づいたと言います。

「選手たちの生のプレーを追ったリアルタイムの映像配信は、トラブルも含めて何が起こるかわからない。そのスリルやドラマをそこにいる観客だけでなく、多くの視聴者に伝えたいんです。今の時代は、作られた映像をただ消費するのではなく、リアルタイムに視聴ができたり、『ニコニコ動画』や『youtube』など視聴者参加型のサービスができたり、動画の受け手と送り手がインタクティブに楽しめることが当たり前になっています。今後、こうした領域はますます発展していくと思うんです」(松井さん)

「演出していて思うのは、eスポーツ選手たちがやっぱり魅力的なんですよね。一対一の手に汗握る駆け引きとか、緊張感、会場の一体感はゲームというよりリアルスポーツに限りなく近い。だからにわかファンも実際会場に行ってみるとすごく盛り上がるんですよ」(和田さん)

これからの時代、ますます求められるeスポーツイベントの制作に携わるなら、どんな人が向いているのでしょうか? 先駆者である皆さんに聞いてみました。

それぞれの視点から意見が飛び交う打ち合わせの風景それぞれの視点から意見が飛び交う打ち合わせの風景

「まずはイベントが好きな人。eスポーツに限らず、参加者としていろんなイベントに足を運んでみるといいと思います。どんな空間演出をしているのか、技術を使っているのか、会場で実際に観て、聞いて、感じたものがイベント作りに役立つことは多いので。あとは、そうしたことに反応できる好奇心も重要ですね」(三瓶さん)

三瓶博史さん

「コミュニケーション力が一番大事かもしれませんね。イベントを作るにはどの立場でもさまざまな人と関わる仕事です。だからこそ、性別・年齢問わずフラットに対話する努力をすることも大事だと思います」(和田さん)

TTeが見つめる先 日本のeスポーツの未来

日本のeスポーツイベントの在り方を変えていくTTe。今後eスポーツの大会やイベントはどのように進化していくのでしょうか。

「昔はゲーマーといえば、“オタク”という、ある意味ネガティブな見方も一部ではありましたよね。でも最近は、イケメンの選手に会うために、ゲームをしない女性ファンでも会場に駆け付けるなんてことも珍しくない。リアルスポーツと同じように、より多くの人に開かれたカルチャーになってきているように感じます。これからは、ゲーム大会という認識ではなくてゲームを中心に据えたフェスのような感覚で捉えられるようになるのかもしれません」(松井さん)

松井一生さん

「ゲームセンターが交流の場でもあったゲーセン世代の僕らが、今こうしてゲームを通じて新しいカルチャーを築こうとしているのは面白いですよね。日本のeスポーツはまだまだ可能性が大きい。先進国にインスパイアされながらも独自のイベントを生み出していけたらいいですね」(近藤さん)

さらに、TTeとしての今後の展望を聞いてみたところ、和田さんは「守備範囲を広げていきたい」と言います。

「僕らはユニットとしてまだ生まれたばかりなので、今後も、さまざまなゲームタイトルのイベントに携わっていきたいと思っています。経験を積み重ねて幅広いノウハウを構築することで、より多くの企業や関係者から必要とされるようになりたいですね」(和田さん)

TTeが見つめる先 日本のeスポーツの未来

とにかく取材中は笑いが絶えず、息もぴったりだったTTeのみなさん。毎回、最高のイベントを生み出そうと力を合わせ、苦楽を味わってきたからこそ築かれた信頼と絆を感じました。かつてないeスポーツイベントを生み出すため今日も彼らは切磋琢磨しています。

今後のeスポーツカルチャーを盛り上げ、華やかに進化させる、「eスポーツイベント制作ユニット」の仕事にこれからも注目です!

TTeが見つめる先 日本のeスポーツの未来

次回はeスポーツ選手たちを育て、世に送り出す「eスポーツコーチ」のお仕事を紹介にお話を伺います!

TEXT:小島浩平
PHOTO:宇佐美亮

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