絶対に電波が入らない部屋を考えてみたら、電波が悪いときの対策がわかった
特定の場所で、なぜか携帯電話やスマートフォン、ポケットWi-Fiなどの電波が入らなくなることがある。自宅やオフィス、とあるデパートの一番端のエレベーターなど、そのエリアだけなぜか電波が入らない。
携帯電話等を振って電波が入るようになるんじゃないか、金属に当てたらアンテナの代わりになるんじゃないか、そう思って試してみるが大抵の場合、状況は変わらない。
一歩前に出ると電波が入る、一歩戻ると圏外になるという場所を見つけると、この境界でいったい何が起きているんだろう、と宙を見てしまう。
電波が届かない場所というのは、どういう状態なのかを知りたい、そして、電波を入りやすくするためにやれることがあるなら試したい。そんな気持ちで、So-netのネットワークに詳しい方に話を聞いてみた。
これが絶対に電波が入らない部屋の条件だ!
So-netの清水さんは無線通信についても知見があり、電波の気持ちも判るらしい。
早速、なぜ特定の場所だけ電波が届かないことがあるのか質問してみると、「どんな部屋が“絶対に電波が入らない部屋”なのかを考えるとわかりやすいんです」と清水さん。
屋外からの電波の入らない条件すべてを兼ね備えた部屋がわかれば、電波の特性も理解できるとか。清水さんが教えてくれた、電波の入らない条件はこちら。
- 窓もなく四方が鉄筋コンクリートで覆われている部屋
- 金属で覆われている
- 地中に埋まっている
- 海底にある
絵にしてみるとこんな感じだろうか。
素人の私でも、電波が届かなそうな感じだけはとても伝わってくる。
意外と身近にある、電波の邪魔モノ
絶対に電波の入らない部屋のイラストを見ながら、清水さんは、大きなビルで急に電波が入らなくなるエリアがあるのは、鉄筋コンクリートが原因の可能性が高いと教えてくれた。「このイラストは極端に描いていますが電波を通しづらいモノは意外とたくさんあります。鉄筋は網目状なので電波状況が著しく悪くなることがあります。鉄筋コンクリートの建物よりも木造の建物のほうが電波は通りやすいですよ」
鉄筋コンクリートのほかに、イラストには部屋が金属で囲まれ、海底にあったりする……それにはどんな意味があるのか。
「さきほどの鉄筋もそうですが、金属など電気を通すものは、電波を通しづらいんです。海水も同様の性質があります」
急にお勉強っぽくなってきたが、とてもわかりやすくおもしろい。
「水はけっこう大敵なんです。以前、海岸から船に向かって、電波を飛ばす実験をしたことがあるんですが、海には障害物が少ないから、一直線に電波が船に向かって飛ぶと思いきや、実際は海面で反射したり吸収されたりしてしまうので、船まで到達させることがとても難しい。たとえば、自宅で水槽のそばにWi-Fiルーターを設置していると、水槽の反対側は電波状況が悪くなる可能性があるから気をつけましょう」
電波が悪いときには「窓」と「基地局アンテナ」を探すとよい
携帯電話などにおいて実際に電波が悪いときにはどうすればいいかたずねると、清水さんは「まずためしてほしいのは、携帯電話等を窓際に置いてみたり可能なら窓を開けてみる事です。できるだけ障害物をさけ、見通しのよいところに置くことで、電波状態が改善するはずです」と教えてくれた。
窓に近づけると電波が入りやすくなる気がしていたけれど、これは正しかったようだ。
自宅でポケットWi-Fiが電波を受信してくれないときに、ステンレスボウルのにルーターを入れて窓際に置くと、電波が入りやすくなる気がしてよくやっていたことを思い出し、清水さんに効果があったのか聞いてみる。
「有効だった可能性はありますね。ボウルがパラボラアンテナの役割をして、電波を効果的にキャッチしてくれたのかもしれません」
なんと効いていた。即席のアンテナを自分でつくっていたのだ。
携帯電話を振るのも効果があるのか問うと、「携帯電話を振り飛ばさないように強く握っていますよね。持ち方そのものが、アンテナを覆い隠す可能性もありますし、振り上げたときの位置と振り下ろしたときの位置はせいぜい十数センチ。電波状況を変えるほどの効果はないかと……。むしろ体から離したり、電源を入れ直す方が効果があるかもしれませんね」と返され、もう振るのはやめようと心に誓った。
電波状態を良くするためにできることをさらに聞いてみると、「携帯電話基地局アンテナがある方向の窓に近づくのがおすすめ!」と清水さん。いやいや、基地局アンテナなんて素人が見つけられるわけがないと訝しんでいると、「ほらあそこ」と外を指差す。その指先を見てみると。
「あのビルの屋上にあるのが基地局アンテナです。障害物をさけるために、高いビルの上や鉄塔に設置されていることが多いので、付近のビルやマンションの屋上などを探してみると見つかることがあります。自宅の窓から基地局アンテナを発見できれば、その窓がいちばん電波をキャッチしやすいポイントのひとつです。もちろん自分が使っている通信会社以外のアンテナの場合もあるので、全てが正解という訳ではありませんが…。」
これまで、「電波の入らない場所は目に見えない膜やバリアのようなもので覆われていて、電波がなかに入れないようになっている」と思っていたのは、だいたい合っていたのだ。
そして、電波を阻害するものは、ビルの壁や金属や水など身近なものだった。
電波が入らないとき、窓に近づく以外にできることはあまりないけれど、今後は「ああ、ここたくさんの金属が壁の中にあるのかも、あの水が電波を反射吸収してるのかな……」と今までより少しだけ、電波が入らない理由を想像することに楽しみを見出だせるようになるかもしれない。
清水さん
So-netで接続サービスのネットワーク設計・構築に携わる。基地局アンテナを見ると、どこの事業者のアンテナか妄想してしまう“電波オタク”。
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PHOTO:大橋裕之、くまみね(マンガ)
TEXT:PreBell編集部
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