FEATURE 2016.12.15 インターネットの上手な歩き方 ~岩佐琢磨さんの場合~ vol.3 これからCerevoが作りたいモノ

大手メーカーによる大規模開発大量生産なモノづくりではなく、国際的な“水平分業”の一般化に基づく、新時代のモノづくりを推進する新興家電メーカー「Cerevo(セレボ)」。前回までは同社が考える家電の“これから”について、同社代表取締役・岩佐琢磨(いわさたくま)さんに教えてもらいました。

マニアの熱意には驚かされてばかり

そもそもCerevoは、どうやって次に作る製品を決めるのか。岩佐さんは「思いつきで作り始めちゃうことが多いですね」と笑います。

「現在はだいたい月に1製品くらいのペースで新製品を投入しているのですが、その6割くらいは私が企画を出したもので、2割が現場からの立案、残りの2割が外部とのコラボ案件となります」

例えば、アニメ『PSYCHO-PASS サイコパス』に登場する架空の武器をリアルに作り込んだ『ドミネーター』などはアニメ好きな岩佐さんの発案。数年前からおもちゃ業界で盛り上がっている大人向け変身ベルトなどを見て、そこに“家電メーカーのノウハウを盛りこんだらもっとスゴいモノが作れる“と感じたことが、発想の原点なのだそうです。

「大人向けの高級おもちゃが人気と聞いたとき、家電業界の人間としてちょっと悲しくなったんですよ。いやいや、もっとできるだろう、と。何より残念だったのが、おもちゃメーカーの体質として、バッテリーを積みたがらないこと。安全性が理由だとは思いますが、今どき誰もがスマホを使っているのに」

そうして、家電メーカーのノウハウをこれでもかとつぎ込み完成したのが、アニメと全く同じように動作・変形し、スマホなどとも連携する、それまでとは別次元のおもちゃ。価格も約10万円とケタ違いでしたが、これこそまさにCerevoならではのモノづくりと言えるでしょう。

「値段を聞いてほとんどの人が尻込みしちゃうんですが(笑)、それでも欲しいという人が10人、20人に1人はいてくれて、初回分は予約で即完売となりました」

業界の垣根を越えて、作りたいものを作る。それが岩佐さんのオリジナリティーであり、魅力ですね。

ドミネーター

ドミネーター

そして今、岩佐さんが注目しているのが、外部企業とのコラボ―レーション案件。 「最近の製品で特に印象的だったのが、NTTドコモさんと一緒に開発した『SIM CHANGER ⊿(デルタ)』。4枚のSIMカードを自由に切り替えて使えるという、マニアにしか理解できないような製品だったのですが、これをクラウドファンディングに乗せたところ、6~7時間くらいで目標金額を達成(最終的に725名、支援総額約869万円を調達)。日本の携帯電話マニアの底力を感じました(笑)」

SIM CHANGER ⊿(デルタ)

これまでであれば、一部の人たちのマニアックなニーズを満たすニッチな製品は、採算の壁に阻まれることがほとんどでした。しかし、インターネットで世界は拡大し、ニッチな商品でも地球の隅々にまで知れ渡ることが容易になりました。100人に10人しかほしがらないようなものでも、世界を市場にすれば十分に採算が取れる商品に。PR、そして市場拡大、そして流通と、インターネットの力を最大限に使っているのが、岩佐さんの強みです。

これからもっとIoTは楽しくなる!

新興家電メーカーとはいえ、Cerevoが生まれてから、もうすぐ10年。創業当初と比べて、インターネットと家電を取り巻く状況も変わっています。インターネットと出会って以降、岩佐さんが夢みてきた世界は実現しつつあるのでしょうか?

「まだまだ全然ですね。だって、まだ皆さんが着ている服はどれもインターネットにつながっていませんよね? カバンはどうでしょう? 誰も、どれも、インターネットにはつながっていません」

ネットにつながっていないのは身につけるモノだけではありません。むしろ、ネットにつながっているモノの方が少ないくらいでしょう。

「CerevoもIoTの会社と言いつつ、この部屋の机も、壁も、ホワイトボードも、エアコンもつながっていません。残念ながら、まだまだIoTは過渡期と言わざるを得ませんね」

では、その壁となっているのは何なのでしょうか?

「それは単純に“時間”の問題だと思っています。新しいテクノロジーが出てきてから、それが普及するまでにはやっぱり時間が必要なんです。内燃機関が発明されてから、皆が車をもつようになるまでは相当かかっていますよね」

それが普及するのは岩佐さんの予想では、おそらく2020年頃。ちょうどオリンピックの時期には、時代が変わるのではないかということ。

そんな未来の第一歩は、すでに目の前にあるそうです。

「今、注目しているのはずばりパーソナルモビリティ。セグウェイだったり、ホバーボートだったり、ああいったモノがこれから面白くなると思っています。日本は法規制がんじがらめで非常にやりにくいのですが、人間が時速20kmで移動できるようになったら世界はガラッと変わりますよ。技術的にもまだまだイノベーションが起きる余地が残されていると思うので楽しみにしています。僕らが参入するという可能性も十分ありそうですしね!」

すべてのモノがインターネットにつながる世界。そこに向けて、Cerevoがどのような可能性を提示してくれるか楽しみですね。次回は最終回。岩佐さん自身のインターネットの活用方法を紹介してもらいます。

岩佐琢磨(いわさたくま)
松下電器産業(現・パナソニック)でカメラやレコーダーなど、インターネット対応家電の商品開発に携わった後、2008年独立。ハードウェアベンチャー「Cerevo」代表取締役に就任。東京・秋葉原(あきはばら)近くの本社を拠点に、少数精鋭のスタッフたちと、これまでにはなかった、さまざまなガジェットの開発・販売を行っている。

TEXT:山下達也
PHOTO:合田和弘

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