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2020.07.09 「クリムトのあの絵って、怖い意味があるんだよな」…絵画の背景を知ると、世界が変わって見える⁉文化や芸術、表現について思い巡らせた美術系チャンネル【暮らし、楽しむ、YouTube】

さまざまなジャンルの動画が存在する、YouTube。日々の暮らしに役立つ情報が意外と眠っているので、ただの暇つぶしで見ているだけではもったいないです!!

今回の「暮らし、楽しむ、YouTube」では、ミュージシャンでマンガ家の劔樹人さんが、気軽に学べて、ちょっとした教養が身につくといいなと見始めた美術系チャンネルについて。

神話や聖書のエピソードなど、絵画の歴史的背景を知ることで、世界の見え方まで変わったんだとか。さらには「文化や芸術、表現とは、私たちにとって何なのか」……そんな哲学的な問いにまでたどりついたYouTubeチャンネルとは……!?

文化に触れたい自粛中、西洋絵画を短時間でわかりやすく解説してくれるチャンネル発見!

皆さま、ご機嫌いかがですか?
劔樹人と申します。
マンガを描いたり、ミュージシャンをしたりの傍、家事育児をメインで担当する主夫として日々を送っています。

我が家は妻と娘と私、家族3人で生活しているのですが、日頃最も楽しみなことといえば、仕事のない週末に3人でどこか出かけることです。

私も妻も、不定期な仕事の自由業であるため、週末に仕事が入ることも多いのです。
なので1日何もなく家族3人が揃う休日は貴重で、そんな日は朝からどこに行くか考えます。

それが何より心躍る時間です。

出かける先で多いのは美術館です。
夫婦2人だったら映画でもいいのですが、小さな子どもがいると、2時間おとなしく見るのは難しいのです。

しかもうちの娘は、2019年の夏には「新幹線女児誘拐の疑い事件」で一躍有名になったことでお馴染み。

映画館で騒がれたらひとたまりもありません。
(「新幹線女児誘拐の疑い事件」……私と娘が2人で帰省のために新幹線に乗っていた時、娘が泣き出して止まらなくなったのを、「誘拐の疑いあり」と通報され、新幹線が止まってしまうまでに至った事件。インターネットで話題となり、新聞、報道番組などでも取り上げられました)

まあ、3歳はまだ美術館でも騒ぐ可能性があるので、展示を見るのも若干気が気でないというのが正直なところではありますが……。

それでも、十分楽しいことには変わりありません。

一応、出かける美術館は、あんまり厳かなところよりも、若者や家族連れも多いような、多少賑やかな現代アート系を選ぶことが多いでしょうか。

とまあ、新型コロナウイルスが出てくる前はそんな感じの我が家でしたが、このコロナ禍での家族3人ステイホーム生活により、例に漏れずすっかり美術館とはご無沙汰になってしまいました。

そんな非常事態の最中、世間ではライブハウスや映画館の休業と保障に関する問題を発端に、文化・芸術の存在意義に対する議論がありました。

人の気持ちに、余裕のない、ささくれ立ったものを感じる。それは自分も含めてです。

そういう気持ちになると、逆に文化に触れてみたくなります。

何となくインターネットをのぞくと、美術館によってはオンライン展示なども行われていまして、結構気になるものもありました。

そんな中、私がちょっと見てみたいと思ったのは、YouTubeのこちらのチャンネルです。

「美術系YouTuber」いとはる

西洋絵画を短い時間でわかりやすく解説してくれるチャンネルです。

私は美術を見るのは好きですが、絵と作者くらいは知っているような作品でも、それにまつわる知識は基本的にありません。

でも、絵を見る時に、時代背景であったり、作者についてだったりの知識があれば、また楽しみ方は広がるかもしれない。

そもそも、有名な西洋絵画なんて、昨年のコートールド美術館展やフェルメール展、クリムト展のような、よほどの企画展示がないと日本で実物を見られることなんてなかなかないですからね。

私は、数年前フランスに行った時にルーブル美術館やロダン美術館を訪れましたが、せっかくのめったにない機会に、知識があればもっと楽しめたのかなという気もしていたのです。

文化に触れたい自粛中、西洋絵画を短時間でわかりやすく解説してくれるチャンネル発見!

まさかモナリザがあんなに小さいとも知らなかったし!

なので、気軽に学べて、ちょっとした教養が身につくといいな、くらいの気持ちでいとはるさんの動画を見始めました。

街を歩けば絵画が目につく。あの絵の背景は実は……

動画は、落ち着いたトーンの語りとクラシックピアノのBGMでリラックスした雰囲気。

このまま教育番組でもいいくらいにスッキリ端的に編集された1~3分の解説に加え、おまけ的にいとはるさんの個人的な語りが入っているものもあります。
前半の解説と語りのトーンの変わるその部分が、深夜ラジオ感覚でまたいい空気なのです。

西洋絵画というのは、印象派が登場してくる19世紀以前は、聖書やギリシア神話の歴史画ばかりなので、その絵の意味についてのいとはるさんの再生リストにある<キリスト教>や<ギリシア神話>の動画を見ていると、聖書や神話の知識も身について行きます。

街を歩けば絵画が目につく。あの絵の背景は実は……

名画は意外と街にあふれていますので、絵に詳しくなってくることで目に入るものも変わってくるような、そんな感覚もありますね。

街を歩けば絵画が目につく。あの絵の背景は実は……

こんな動画もあったり。

サイゼリヤの西洋絵画の意味~知っておいて損のない名画の解説~

確かに、ファミリーレストランのサイゼリアには絵画がいろいろありましたが、全然気にしてなかったなと……。

逆風を芸術に昇華させた画家たちの姿に、コロナ禍の自分たちが重なる

そんな中、見ていて私がハッとしたのは、<ルノワールの生涯~女性の「透明感」を描いたフランス印象派の画家オーギュスト・ルノワールの生涯~>という動画の、いとはるさんによる解説。

「批評家は作家にとっては疎ましかったかもしれないが、批評家の言葉によってその当時の社会の考え方や時代背景がわかる側面がある」という部分です。

確かに私も音楽の活動や仕事をしていて、評論家という存在に対して疑問を感じたこともあります。
過去マネージャーをしていた神聖かまってちゃんというバンドが、「インターネットから出てきたロックバンド」という触れ込みで2010年にデビューした時は、音楽評論家からも賛否があり、「何でこんな批判的なことを大々的に書かれているんだ!」と憤りを感じた記憶も。

でもその時の言われ方を思い出してみると、この10年で大きく変わり、より一人一人にとって身近になった「インターネット観」みたいなものを実感できたりもするのです。

そんなことを思いながら、いとはるさんの動画を見進めていくと、苦しみを抱えた生涯を送った画家たちに思いを馳せるようになってきました。

精神疾患を抱え、画家としては生涯1枚しか絵が売れなかったというゴッホ。

批判に対する不満を、仮面と骸骨の絵を描き続けることでアウトプットしていたアンソール。

プロテスタントの偶像崇拝の否定により、絵画のメインストリームだった歴史画を描けなかったフェルメール。

こういった逆風を、自らの芸術に昇華させてきた当時の画家たちの姿に、このコロナ禍で苦境に立たされているライブハウスや映画館などの文化施設の状況を重ね合わせて考えてみたりします。

逆風を芸術に昇華させた画家たちの姿に、コロナ禍の自分たちが重なる

文化や芸術、表現とは、私たちにとって何なのか。

そんなことまで考えるきっかけになったYouTubeチャンネルです。
皆さまもいかがでしょうか。

「美術系YouTuber」いとはる

マンガ・文:劔樹人

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