「失くしものの在り処がわかるやつ」スマートタグで暮らしはどこまで便利になるのか?【スマートにいかない私たちの話】
近頃何かと話題のIoT。家電やAV機器をより便利に操作して楽しく生活できるIoTですが、簡単そうに見えて意外な落とし穴が待っていることも……。そんなトラブルとその解決策を紹介する「スマートにいかない私たちの話」。今回はスマートフォンや財布にとりつけることで落とし物を見つけてくれる「スマートタグ」に関するお話です。
貴重品につけておくと安心なアイテム、スマートタグ
忘れ物防止タグとも呼ばれているIoT機器「スマートタグ」。鍵や財布など、なくしては困る持ち物に取り付けておくIoT機器です。スマートフォンとBluetoothなどで接続されており、その接続が切れた(つまり持ち物を紛失した)場所を記録、それによって落し物を探すことができます。また、スマートタグによっては、紛失した落し物を追跡する機能があるものも。代表的な商品としてはTile Inc.のTile、AppleのAirTagがあります。
スマートタグの代表格、Tile
Tileは、スマートタグの代表格と言えるアイテムです。前述のようにスマートフォンとBluetoothで接続されており、専用アプリでそれぞれのタグを管理することができます。キーホルダー型のMate/Pro、財布に入れておけるカード型のSlim、室内でなくしがちなリモコンなどに貼り付けて使えるStickerと、用途別に様々な形状が発売されているのが特徴です。
TileはiOSにもAndroidにも対応しているため、接続するスマートフォンの選択肢が広いのも特徴。また、GoogleアシスタントやAmazon Alexaなどのスマートスピーカーを経由しても操作することができます。また、2022シリーズではすべてIP67という高い防水性能を持っていることも特徴です。
持ち物を落とした際には、まず紛失したTileをアプリ内で「見つかったら通知」に設定。すると、スマートフォンに専用アプリを入れているTileユーザーが落し物の近くを通った際に、スマートフォンが「見つかったら通知」に設定されたタグの情報を検知します。その情報がクラウドに保存され、持ち主のスマートフォンに現在地が通知されるという仕組みです。
追跡は完全に匿名で行われ、情報は暗号化されているので、プライバシーにも配慮されています。また、より簡単に紛失したタグを見つけられるよう、Tileは駅やタクシーの車内にアクセスポイントを設置しています。
また、室内などBluetooth接続範囲内でTileをつけた貴重品をなくした場合、スマートフォンからの操作でTileから音を出すことができるので、簡単になくし物を探すことができます。さらに逆に、Tile側のボタンを2回押すことでスマートフォンから音を出すことも可能。スマートフォンがマナーモードになっていても音を出せるので、「Tileがついた鍵は手元にあるけど、スマホが見つからない!」という時にも使える機能です。
Tileには「Premium」という有料プラン(月額360円、年額3600円)もあります。これに加入することで使えるのがスマートアラートという機能で、これは「Tileとスマートフォンが離れた時に、スマートフォンに通知が出る」という機能。これにより、なくした場所がわかるだけでなく、貴重品が手元を離れたタイミングで即通知を受け取ることができるようになります。またPremiumで追加される機能としては、「人数制限なしでTileを共有できるので、ひとつのTileを複数人で使える」「検知された場所のログが、過去30日間に遡って確認できる」「1年間の保証期間が3年に延長される(電池交換不可モデルやTile搭載パソコンは対象外)」といったものがあります。
Apple製品のネットワークを駆使するAirTag
一方、Appleが販売しているスマートタグがAirTag。「貴重品に取り付けて使う」「スマートフォンとBluetooth接続されており、その接続が切れた地点を記録する」という機能はTileと同じですが、異なる点も色々とあります。
まず、対応しているスマートフォンに関して。TileはAndroidにも対応していましたが、AirTagではiPhoneのみとなります。また専用アプリではなく、iPhoneに入っている「探す」アプリにAirTagを登録し、そこから管理することになります。Tileのように様々な形状が発売されておらずコイン型のみなので、キーホルダー型やカード型などの各種ケースに入れて使う必要があるのもAirTagの特徴です。
AirTag最大の特徴が、タグがついた持ち物を探索する時。なくし物に気がついたらアプリ内で「紛失モード」を有効にします。すると紛失モードに設定されたAirTagの位置を世界中のiPhoneやMacBookなどApple製品が検索。探知した位置情報を持ち主のiPhoneに通知します。大量に流通しているApple製品が作り出すネットワークで位置情報を探知するので、探索の精度も高く範囲は広いと言えるでしょう。また、追跡は完全に匿名で行われ、情報は暗号化されているので、プライバシーにも配慮されています。
また、AirTagの特徴が「AirTagとiPhoneが離れたら通知が来る」という機能が標準搭載されている点。iOS15には「手元から離れた時に通知」というメニューが搭載されており、貴重品がiPhoneから離れた時に通知されるようになっています。またUWBにも対応しているので、近距離であればAirTagが置かれている方向を割り出してアプリ内に表示することが可能。なくし物がある方向が大まかにわかるというのも、AirTagの特徴です。
とにかく忘れがちな電池交換に注意!
スマートタグは常時スマートフォンとBluetoothで接続されているため、何もしなくても確実にバッテリーは減っていきます。TileもAirTagも、電池の寿命を把握しておかないと、いざという時に電池切れしていた……なんてことも。
2022年2月現在発売されているTile(2022)モデルはキーホルダー型のMateとPro、カード型のSlim、貼り付けて使うコイン型のStickerの4種類ですが、そのうち電池交換ができるのはProのみ。他は定期的に買い替える必要があります。CR2032のボタン電池交換が可能なProの電池寿命は最大約1年、電池交換不可の3モデルの電池寿命は最大で約3年となっています。
一方、AirTagは本体のカバーを取り外すことで電池交換が可能です。CR2032 3Vのボタン電池を使用し、標準的な使い方であれば1年以上の電池寿命があります。
Tileは初回アクティベーションから1年で電池交換の通知が出ます。またAirTagはアプリ上で電池残量が確認可能。いざという時にバッテリーが切れていたということのないように、電池切れの通知には注意しましょう。
スマートタグはいざという時には頼りになる存在
スマートタグの基本的な機能は、あくまで「Bluetooth接続が切れた位置とタイミングを記録する」というもの。公共交通機関やタクシー、飛行機などでの移動中に落し物をしたときは、そのまま落し物が移動してしまうためスマートタグのみでの追跡は困難です。
その点をタクシーや駅などのアクセスポイントやユーザーを含めたネットワークで解決しようとしているのがTile、大量に流通しているApple製品のネットワークで解決しようとしているのがAirTagです。しかし、たとえば山の中や人口の少ないエリアなど、そもそもネットワークを構成している機器が近くを通過する可能性が少ないロケーションでは検索に引っかかりません。
それでも、忘れ物や落し物への対策としてはスマートタグは有効なアイテムです。また、家の中での探し物にも使えるため「パッと持ち物を置いたけど、どこに置いたかうっかり忘れた」というトラブルの際にも威力を発揮します。電池残量に注意しつつ、有効に取り入れたいIoT機器と言えるでしょう。
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TEXT:しげる
イラスト:くまみね
監修:三上洋
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