話題のSTEM(ステム)教育とは。米では数十億ドル規模の予算。対する日本は?
科学、技術、工学、数学の学問領域に関しては一括した教育を行う国が増えています。それがSTEM(ステム)教育です。
日本でもプログラミング教育が必修化される未来が来る…。
「先輩、こんなコードも書けないの?」
そんなことを言われる自分に不安を覚えたPreBell編集部が、STEM教育の今を調べました。
STEM教育の歴史をたどると、1990年代に“アメリカ国立科学財団”が
・サイエンス
・マスマティクス(数学)
・エンジニアリング
・テクノロジー
の頭文字をとったSMETという教育方針を打ち出しました。これらの分野は密接に関わり合っており、個々の学問を一元的に学ぶのではなく関連づけて学ぶという教育システムです。これが2003年ごろから“STEM”という呼び名に切り替えられました。
「アメリカ国立科学財団」Webサイトより
なぜこれらの分野、特に科学と数学を一元的に教育されるようになったのでしょうか。それはテクノロジーの分野で国際競争力を高めるために他なりません。
海外のSTEM教育
アメリカの場合、STEM教育が本格化したのはオバマ大統領就任後です。年間で数十億ドルもの予算を使い、タブレットや教育・研究用の組み立て式ロボットを子どもの頃から触れさせたり、プログラミングの授業を加えたり、教科書の内容を現在の技術に即したものに変えるなどの施策を打っています。またプロトン・プリスクールという、3歳からSTEM教育が受けられる施設も造りました。
東南アジアにおいてもSTEM教育は活発です。特にシンガポールでの注目度は高く、国が運営している体験型の科学学習が行える施設National Science Centreもあるほど。ここで受けた授業の単位は小中学校の単位として数えることもできるため、科学技術に興味をもつ子どもを、国を挙げてサポートする体制が整っています。
インドもSTEM教育に力を注いでいます。2015年よりRashtriya Avishkar Abhiyanプロジェクトを開始。6歳から18歳までの子どもたちを対象に、科学分野で活躍できる人の育成を行っています。
日本におけるSTEM教育
2016年4月、文部科学省は小学校でのプログラミング教育必修化を検討すると発表しました。しかしこれは2020年度からの新学習指導要領に盛り込むためのもの。日本でSTEM教育を受けるには少し先になりそうです。
しかし目線を民間に向けると、STEM教育を受けられるサービスや、STEM教育を意識した製品が増えつつあります。
ソニー・グローバルエデュケーションはロボット・プログラミング教育向けのキット「KOOV」をリリース。思考力、創造力、探究力を育てるもので、7種類のブロックを組み合わせることでロボットの形を作り、プログラミングによって様々な動きを与えることができます。
マイクロソフトは11月1日より「Minecraft: Education Edition」をリリースしました。世界中で大ヒットしたゲーム・マインクラフトを使った教育用のバージョンで、画面内のみとなりますがプログラミングすることで行動を自動化するなどの技術と概念を学べます。価格も1教員あたり120円/月、児童・生徒は無償で利用可能とリーズナブルなんですね。ビジュアルライクなプログラミングを学ぶには、確かにぴったりのゲームといえるでしょう。
プログラムと物の仕組みを学べるステモン、こどもたちの創造・表現力をテーマにしたワークショップ・イベントを開催している特定非営利活動法人CANVAS、ブロック・サイエンスやロボット・サイエンスの授業を行っているトゥルース・アカデミーなど、学習スクールの分野においてもSTEM教育は取り入れられています。
日本ではちょっと先のSTEM教育ですが、このような“おもちゃ”感覚のサービスから入ると、子どもと一緒に楽しく遊べて、来る未来で現れる後輩対策のために、自分も学べて一石二鳥かも!?
TEXT:武者良太
Image via. Thinkstock / Getty Images
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