【1万RT超えも!】なぜ "妄想ツイート"は同世代の女性に強く支持されるのか?-さえりさんの「ネタモト」
Twitterのタイムラインを日常的に見ていると、数百・数千RTされるようなツイートをコンスタントにし続けている方々を見かけることがしばしばあります。ネット上でこうした「素敵なアウトプット」をするのが得意な方々は、何を通じて情報をインプットしているのでしょうか。
今回お話を聞いたのは、フリーライターの夏生(なつお)さえりさん。“さえりさん”こと夏生さえりさんは、恋愛の妄想を日々Twitterに投稿し、2つのアカウントで合計18万超のフォロワーを獲得しています(2018年3月現在)。
彼と喧嘩してこれで終わりかもって思ったら怖くなって「ごめん」て送ったけど返事がなくて。泣きそうになりながら「ごめんね。好き。ほんとに好き」って送ったら電話がかかってきて「俺も」って言うので泣きながら「会いたい」って言ったら「もう家の前」て声が届く、そんなハートフルな金曜日どこ
— さえりさん (@N908Sa) 2015年11月13日
彼氏、だいぶ前に「大好きだけど、だからと言って君もそうとは限らないってことはわかってる」と言い出したから「ん?わたしも大好きだよ?」と答えたら、しばらく黙ったのち「そんなの…」と言うから「うそだ」と疑われるのかと思いきや「すごいじゃん…」って言ってきたのかわいすぎて爆裂愛す愛す
— さえりぐ (@saeligood) 2018年1月23日
妄想ツイートやフリーライターとしての記事企画、書籍の出版など、様々な分野で活躍する彼女は、なにをどのように「インプット」し、どう解釈して世の中に「アウトプット」しているのでしょうか。その秘密に迫りました。
その人が押した「いいね」を見るのが好き
——今日はさえりさんの情報源について話を聞きたいのですが、まずはスマホで普段どんなアプリを使っているか見せてもらってもいいですか?
はい。
——バッテリーの消費量だとやっぱりTwitterが一番多いですね! Twitterはどんなふうに使っているんですか?
みなさんと同じように、ツイートを読んだり書いたり…息抜きのように使っています。もちろん気になる人がいれば知らない人でもフォローをするのですが、ツイートと同じくらいその人が押した「いいね」を見ることが好きなんです。「私が気になるツイートをするこの人は、どんなものに関心があるんだろう」と覗いてみたくなる。ちょっとストーカー気質かもしれませんね(笑)。
——自分が「いいね」と思ったものを見られるのって、考えてみるとかなり恥ずかしいです。
私も気楽な気持ちで押しているので、人に見られると恥ずかしいんですけどね(笑)。でも、これが本当に面白くって。その人がRTするほどではないけど面白いと思った記事なども見ることができるので、便利ですよ。
——その人の“本当の気持ち”が垣間見れそうですね。ちなみに、他にはどのようにTwitterを使っていますか?
普段から「みんなが何を考えているか」に興味があるので、「感情」の検索をよくしています。前職で仕事が本当に忙しい時、「仕事 終わらない 帰りたい」とか「眠い やばい」とか、自分の感情を検索していたのですが、そうすると、私と同じことを思っている人が結構いて。その他にも、例えば「彼 遠距離 さみしい」とGW後に検索をすると、たくさんの寂しさが画面にあふれます。今、こういうことを考えている人がいるかも? と気になったら、こんな風に感情を検索画面に打ち込んでみますね。
——なるほど。
さらにその人の過去のつぶやきを追えば、他にどういうことを思って、何に悩んで、何が好きかが分かりますし…。また、映画や漫画の感想もTwitterでよく検索するのですが、フォロワーが少ない人の意見は着飾っていないものも多いので、「こういう考え方があるんだ」と驚くことがありますね。
——さえりさんは普段、「インプットをしよう」と自ら心がけているのでしょうか。
正直、毎日何かをするなど「率先してインプットをしよう」とは、あまり思っていないんです。例えば駅から自宅までの帰り道、「いつもと違う道を歩きたい、新しい小路に入りたい」と、ふと思い立って行動する人っているじゃないですか。でも私、そういうのが全然なくって。むしろいつも同じ道を歩くようにしています。
——意外です。
でもそうすると、同じ道なのに昨日と変わったものに目が行くんですよね。そういう些細な違いを楽しむ方が好きで。それから「人」には本当に興味があって。先ほどの感情検索もそうですが、実際の生活でも知らない人を見ては「あの人はなんであの言葉を言ったんだろう、この人とあの人はどういう関係なんだろう」って妄想をするのは好きなんですよね。
——インプットをしようと考えるのではなく、妄想をしてしまうんですか。
どこにいっても人はいるので妄想できますよね。わたしはそういう身近なものから発想を得ていることが多いと思います。例えばサラリーマンの男の人だけど、手に持ってる袋が「LOWRYS FARM(ローリーズファーム)」(※女性物の服飾ブランド)の紙袋だった時、それはその人の彼女が持っていた紙袋を、女性用のショップの袋だと知らないで使っているのか、それとも女の子が「自分の男」ということをアピールさせるために持たせているのか。毎日こんな妄想をして過ごしています。
——それがTwitterでのツイートに役立つこともあるのですね。
そうですね。ツイートに役立つこともあれば、記事執筆などの企画に置き換えることもできます。例えば楽しそうな女子2人組の隣に座ると、若者らしい会話が聞こえてきて、その会話から妄想をすることもできちゃいますし。そこで新たな発見をすることもありますよ。会話の中で気になった言葉を検索してみて、何かを知ったり勉強したり。
——日々、自然にインプットをしているのかもしれませんね。Twitterでもタイムラインを見れば、他人の考え方も見られますし。
「100人中18人に深く共感されるツイート」が最も拡散する
——さえりさんはなぜ、Twitterで妄想ツイートをしようと思ったのでしょうか。そのきっかけを教えていただけませんか。
前職の会社にいたとき、毎日が忙しすぎたんです。でもある日、終電で帰って次の日の朝にまた会社に行ってを繰り返すだけだと、「想像力が死ぬ」ってことに気づいて。それで、通勤時間が40分ほどあったので、いまここにないものを考える時間を設けようと、トレーニングとして始めたんです。様々なジャンルを投稿していたのですが、その中で恋愛系が一番反応がよかったので、恋愛の妄想を毎日投稿していくことを始めました。
——それが続いて、今ではフォロワーが18万…。
私にとって妄想ツイートは、正直に言うと「私の本音」ではないんですよね。私はあくまで編集者・ライターだったので、「みんなが好きそうなもの」を書いていて。「この時間帯、みんなは何が欲しいかな?」とか「どういうことを言われたら気持ちが晴れるかな?」とか、常に読み手を気にしています。できるだけ日常に即していて「ありそうでなさそうなもの」を投稿しているんですね。
——それはなぜでしょうか?
1〜2人くらいが実際にあったと思え、4〜5人は憧れる! と思い、1〜2人はそんなやついないだろ! と思うツイートって、拡散されやすいんです。「全員は共感してくれないと思うけど、何人かはわかってくれるだろうな」という微妙なラインで投稿をすると、その人たちにとっては本当に響いたり共感できたりするみたいで、それに呼応するように拡散されたりして。それに当てはまらない人は当てはまらない人で「こんなのありえない」とRTしていたり。拡散したくなる理由が人それぞれ違う方が広く拡まるなという実感があります。
——他に、Twitterで投稿する際に気をつけていることはありますか?
誰かを傷つけるようなことは言わない、ですね。発信者のなかには強い意見を言ってみんなを引っ張っていくような人もいますが、私自身、そういう意見を目にしてグサグサ心に刺さって落ち込んでしまうこともあって。そのほかにも、有名な人が「あの映画は面白くない。ここが最悪だ」と語っているのを見ると、本当はその映画が好きでも言いづらくなったり。
言いたいことを我慢する、というほどではないですが、私は否定的な意見はあまり言わないようにしています。Twitterにはいろんな人がいますからね。できるだけ、今あるものや今の自分を好きになれるような、優しい世界を作りたいと思っています。
——さえりさんも、「妄想」という自分の好きなものを持ち続けていますもんね。
はい。そういうことですね(笑)。これからも「妄想」は続けていきますし、誰かをすこし「はっぴー」にしたいという気持ちをもって仕事をしているので、そういうものを作っていけるように頑張りたいと思っています。「期待してください」と言えるほど自信はないですが、「見守ってくれたら嬉しいな」と思いますね。
さえりさんの妄想ツイートは人への興味と鋭い観察眼によって生み出されていた!
「私自身、あんまりインプットをしてないんじゃないかとふと思い、それは私自身も不安になる」と語るさえりさん。とはいえ最近は、自分が興味あるものしか印象に残らないので、知りたいものだけをインプットするスタンスでも大丈夫なんだと気付き、そう考えるようにしたと言います。
ニュースアプリやSNSから得られる情報が主な情報源になっている現代人と違い、さえりさんは日常生活から得られる情報が主な情報源になっているようです。その鋭い観察眼と想像力を通じて、日常で接する何気ない情報を独自の解釈で妄想ツイートに変える。そして、世の全員に向けてではなく、共感される・されないのギリギリのラインを狙ってツイートをする。「妄想を続けていただけ」と語るさえりさんですが、何気ない日常から得られる情報を多くの人に支持される妄想ツイートに変えてしまうその観察眼にさえりさんの非凡さを感じました。自身で実際に見たこと、聞いたことが主な情報源になっていることからこそ、ユニークなアウトプットをすることができているのかもしれません。
みなさんもさえりさんのように、普段の生活で目にすることや耳にすることにアンテナを張って、「この男性が◯◯した理由は?」「この女性がこう発言した背景は?」と思いを巡らせてみてはいかがでしょうか。もしかしたら世界が変わって見えるかもしれませんよ。
TEXT:長橋諒
PHOTO:石川駿人
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