【なるほど!5Gの世界】ライブ中にアーティストとハイタッチできる日も近い!? 未来の音楽ライブやスポーツ観戦で体験できることとは? ニュース

【なるほど!5Gの世界】ライブ中にアーティストとハイタッチできる日も近い!? 未来の音楽ライブやスポーツ観戦で体験できることとは?

ついにこの春から商用サービスが開始される5G。暖かい陽気も5Gも待ち遠しい今日この頃……。

さて、前回は5Gによってスマホがどう変わっていくのかを学びましたが、今回は5G技術をいち早く体感できるというエンタテインメントの領域について、深掘りしていきたいと思います!

昨年行われたさまざまなスポーツ大会では、今までにない映像体験をしたという方もいるかと思うのですが、どうやらそれは5G技術のプレサービスによるものだというのです。一体何が起こっていたというのでしょうか……!?

今回お話を伺ったのは、ソニー株式会社R&Dセンター 事業探索・技術戦略部門 部門長の山口周吾さん。映像の分野を中心に、技術とエンタテイメントの融合と進化を牽引するキーパーソンです。

スポーツ情報にはちょっぴり疎いカルチャー男子のライター早川大輝(左)と、ソニーで5G技術を活用したエンタテインメント事業の開発に携わる山口周吾さん(右)。スポーツ情報にはちょっぴり疎いカルチャー男子のライター早川大輝(左)と、ソニーで5G技術を活用したエンタテインメント事業の開発に携わる山口周吾さん(右)。

山口周吾(やまぐち・しゅうご)

ソニー株式会社 R&Dセンター 事業探索・技術戦略部門 部門長、So-netを運営するソニーネットワークコミュニケーションズ株式会社 取締役を兼任。1992年に入社し、ビデオやカメラ商品の事業管理などに携わり、2017年から現職。5GやIoT技術を活用した同社のリアルタイム/リアリティサービスのプラットフォーム開発に尽力し、特に映像体験を中心としたエンタテインメント事業を牽引する。

スポーツ観戦に改革!5Gがあれば自分好みのアングルで観戦できる!?

早川 スポーツや音楽ライブに代表されるエンタテインメント領域では、5G技術がどのような観点から注目されているんですか?
山口 まずは映像の分野での活用が期待されていますね。早川さんはこの間のバスケットボールやラグビーの大会の試合をテレビでご覧になりましたか?
早川 僕はスポーツになかなか疎いところがありまして…。でも、ニュース番組などで話題になっていたのは知っています!
山口 今、いろんな会社がそうしたスポーツ大会やイベントといった人の集まる場所で5G技術のプレサービス、いわゆる実験を行っているんです。
早川 へー! どんな映像が楽しめるようになるんですか?
山口 さまざまなアングルから撮った映像をスマートフォンなどの5G端末で同時に見ることができる“マルチアングル視聴”や、自分の好きなアングルからの映像を楽しめる“自由視点映像”が実現されています。
早川 たくさんの映像を同時に配信して、しかもリアルタイムで見られる……つまり5Gの特徴「大容量高速通信」「高信頼低遅延」「同時多数接続」が多いに活用されているってことですね?
山口 そうですね、そうするとお客さんの一人ひとりが自分の見たい映像を、手元にある端末で選んで見ることができるようになると考えられています。
早川 うーん、どういうことですか?
山口 昔は、テレビ放送もチャンネル数が少なくて、みんなが同じ番組を同じ時間に見るという時代でしたよね。でも今は個人が見たいものを選んで楽しむ時代になっています。
早川 なるほど。それは、スポーツ中継だとどのように影響するんですか?
山口 たとえば、野球だったらずっとピッチャーを見ていたいという人もいれば、キャッチャーを見ていたい人もいる。それが選べるわけです。
早川 1つの画面で試合を見つつ、もう一方の画面でピッチャーを追い続けるなんてことができるんですね!
山口 そうです。ラグビーが好きで戦術まで分かっている人からしたら、アップの絵ではなくもっと試合全体を見たいと思うでしょう。たとえばスタンドの上からとか。
早川 自分の見たい視点、角度から試合が見られるなんて、なんだか贅沢だなあ。相撲だったら決まり手だけアップで見たいなんてことも叶うんですね。
山口 そうですね。だから今後はプレーヤーもそんな視点を意識したパフォーマンスを見せてくれるようになるかもしれませんね。

アイドルファンはうれしい悲鳴!「推しだけを見たい」「リアルタイムでハイタッチ!」が実現する!?

山口 音楽ライブシーンでも同様に、5人組のバンドボーカルだけを見たいとか、ギターのプレーだけを見たいとか。演奏を楽しみつつ、自分の見たい人だけを追うことができます。
早川 40人以上メンバーがいるアイドルのライブなんか、ものすごく需要ありそうですね…。自分の推しだけを見たい! とか。
山口 スポーツや音楽ライブ中継の現場には、たくさんの数のカメラがあるんですが、テレビ放送の番組制作現場では、これらの映像を切り替えながら1つのコンテンツに仕立てています。
早川 5Gの活用によって、新たにこれからは全部のカメラ映像が同時に自分の元に入ってきて自由に選択できる。自分好みに楽しむこともできるというわけですね!
山口 そうですね。アイドルといえば、バーチャルアイドルってわかりますか?
早川 バーチャルーユーチューバー(VTuber)とかですか?
山口 そうです。そうした架空のキャラクターやアイドルとの握手会が実現する可能性もありますよ。
早川 ん?
山口 自分のアバターがバーチャル空間上で、リアルタイムにアイドルとハイタッチしたり、会話したり、他にもライブ会場から離れた場所にいてもライブを見たりといったことが可能になります。背景の映像を自分の部屋に切り替えれば独り占めもできるかもしれません(笑)。
早川 5Gの高速性や低遅延性を生かすと映像の楽しみがぐんぐん広がりますね!

リアル×バーチャルの新しいエンタテインメント

早川 バーチャル世界ならではの楽しみ方って他にもありますか?
山口 たとえばサッカーマンガのシュートシーンって、ありえないようなボールの動きをしたりするじゃないですか。あれは絶対にメッシでもマラドーナでもできません(笑)。でも、バーチャル空間ならどんなシュートもできる。
早川 ゴールネットを突き破ってみたい!(笑) そういう意味では、バーチャル空間のなかでスポーツをやったら楽しそうですね。
山口 僕はワールドカップの試合後半23分から、急にゲームに参加するみたいなシチュエーションができたらぜひやってみたいです(笑)。そこまでの展開と選手の疲れ、ピッチの状態、8万人とかの観客のなかにいる感覚を再現した世界に入って自分がプレーするなんてことができたら、ワクワクしますね。
早川 バーチャルだから楽しめることってたくさんあるんですね。
山口 eスポーツが盛り上がっているように、私たちはバーチャル世界でも十分楽しむことができるんです。プレイステーション🄬4用ソフトウェアタイトル『グランツーリスモSPORT(※)』は、ゲームのトッププレイヤーが実際のレースドライバーになったりもしていて、それこそバーチャルとリアルが混ざり合った世界ができているんですよ。

※ソニー・インタラクティブエンタテインメント ワールドワイド・スタジオ傘下のポリフォニー・デジタルが手掛けた、「実在する自動車メーカーの車」を使ったリアルドライビングシミュレーター。

早川 対戦相手も本物のドライバーと同じような実力とかだったらさらに楽しそうですね! ほかにもリアルとバーチャルが混在した楽しみ方ってあるんですか?
山口 今、私たちが検討していることにリアルタイムで楽しめる映像効果というものがあるんですよ。たとえばスマートフォンの画面をかざしたり、VRゴーグルを装着することで、プロジェクションマッピングみたいに見ることができるようなイメージですね。
早川 うーん、具体的にはどんなことでしょうか?
山口 たとえばライブ会場で、ステージ上のアイドルに向かってスマートフォンをかざすと、画面上の映像のなかでは、動きに合わせて星が出るとか。見ている人によって別の映像効果を使うことも技術的には可能です。
早川 え、同じ会場にいる観客それぞれが違う体験をすることができるっていうことですか?  たとえばライブ会場で、VRゴーグルの貸し出しが行なわれるようになったりもするんですかね。
山口 そうですね。もちろん、ゴーグルを使わずにそのまま見ても楽しいし、ゴーグルを被ればまた違った体験ができます。
早川 今のところVRゴーグルって、まだまだ一部の人だけが持っているモノじゃないですか。今後、みんなが自分のVRゴーグルを持つくらい、身近になっていくんでしょうか?
山口 それはまだわからないですね。ただ、VRゴーグルは軽量化して持ち運びしやすくなってくるでしょうから可能性はあるのかなとは思います。
早川 みんながVRゴーグルを被っている様子は、映画の世界みたいでワクワクしますけど……。
山口 今はまだ、想像しにくいですよね。それでも、かつてウォークマンが「耳を塞ぐことが自然になった」という文化の変化を起こしたように、そんな時代が来ても、おかしくないのかもしれないですね。

5Gエンタテインメントはもう僕らの目の前に!

早川 音楽ライブやスポーツ以外では、5Gによってどんな体験や楽しみ方が増えそうですか?
山口 僕はカーレースを観るのが好きなんですけど、あれって目の前を時速300kmくらいで走っているので、肉眼ではどの車が1位なのか2位なのかわからないんですよ。それを、リアルタイムで画面上に順位や速度が表示されるようにするなんてことはできると思います。
早川 映像の上に、情報を表示できるのは便利ですね。
山口 ほかにもサッカーだったら、グラウンド上での選手それぞれの運動量なんかをヒートマップ(データの強弱を色で視覚化したもの)で表示するということも可能です。リアルとバーチャルが同時に視界に入ってきて、情報が重なり合うというのが、新しいエンタテインメントの楽しみ方になるのだと思います。
早川 夢があるなあ。エンタメは5Gの技術を最も早く体感できそうですよね。
山口 そうですね。世のクリエイターたちは、最新技術やテクノロジーを積極的に取り入れようとしますから、実現も早いかもしれません。
早川 僕は音楽ライブの変化が楽しみなんですけど、一般の方々が5Gを利用した楽しみ方を体感できるのはいつ頃からなんでしょうか?
山口 制作期間を考えると音楽ライブシーンでは1年先、映画の世界では3年先くらいからだと思います。
早川 うわー、思っていたよりもうすぐそこって感じだなあ! 楽しみです!
山口 そうですね、2020年もきっと新しい映像体験が期待できると思いますよ。

5Gによって、エンタテインメント体験がどのように変化するのか伺った第3回。「大容量高速通信」「高信頼低遅延」「同時多数接続」が活用されると、映像体験の幅が広がり僕たちの楽しみ方もグンと増えるのだとわかりました。リアルとバーチャルが混ざり合う世界はもうすぐそこまで来ているみたいです!

次回は5Gの特徴をすべて生かせる大本命と言われる「自動運転」に注目したいと思います。

TEXT:早川大輝
PHOTO:宇佐美亮

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