米空軍、無人戦闘機の試作機を2025年夏に飛行へ
米空軍は2025年3月4日、共同戦闘航空機(CCA)プログラムの一環として、無人戦闘機2機の試作機を正式に発表した。機体の名称は「YFQ-42A」と「YFQ-44A」に指定され、それぞれゼネラル・アトミックス(GA-ASI)とアンドゥリル・インダストリーズが開発を担当している。空軍はこの試作機が2025年夏までに飛行可能な状態になると発表しており、無人機の軍事利用が次の段階へ進むことが予想される。
この2機は、従来の無人機とは異なり、自律的な戦闘行動が可能な点が特徴となる。従来の無人機はオペレーターが遠隔操作することが基本であったが、YFQ-42AとYFQ-44Aは戦闘の状況に応じて自ら判断し、目標の選定や攻撃の実行を行うことができる。米空軍のデビッド・W・オルビン参謀総長は、これらの機体を「戦闘機として正式に指定された初の無人航空機」と表現し、人間と機械が連携する戦闘の形が変化していくことを示唆した。
この試作機の開発には、長年無人機を軍に提供してきたゼネラル・アトミックスと、比較的新しい企業であるアンドゥリル・インダストリーズが関わっている。アンドゥリルは、シリコンバレーの技術を活用した防衛産業の担い手として注目されており、近年ではウクライナ向けの自爆ドローンや迎撃ドローンの開発を手がけている。伝統的な防衛企業と新興企業の組み合わせが、次世代の軍事技術の発展に影響を与えている。
無人戦闘機の役割と戦略的意義
YFQ-42AとYFQ-44Aは、戦場において有人戦闘機と連携し、さまざまな任務を担うことを目的としている。CCAプログラムでは、「ロイヤル・ウイングマン」という概念が採用されており、無人機がF-35Aなどの有人機を支援する形で作戦を遂行することになる。例えば、戦闘機の先行偵察、敵の防空網への攻撃、電子戦支援などの任務が想定されている。
このような無人戦闘機の導入には、コストや人的リスクの低減という利点がある。有人戦闘機のパイロットは年間数百時間の訓練を必要とするが、無人機であればその必要がなく、運用の柔軟性が向上する。また、敵の迎撃を引きつける役割を担うことで、有人機の生存率を高めることもできる。撃墜された場合でも人的被害が発生しないため、高リスクの作戦に投入しやすいという点も重要だ。
無人戦闘機は、従来のドローンよりも高度なAIを搭載しているため、戦闘状況に応じた柔軟な判断が可能となる。パイロットが「攻撃せよ」と指示を出せば、機体は目標の優先順位を自律的に決定し、最適な戦術を選択する。従来の遠隔操作型無人機に比べ、迅速な意思決定が可能になることから、より複雑な戦闘環境にも対応できると考えられている。
米空軍は今後、YFQ-42AとYFQ-44Aの試験を通じて運用能力を評価し、将来的な量産に向けた調整を進める方針だ。CCAプログラムの目標は、少なくとも1000機の無人戦闘機を導入することであり、今後の試験結果がその実現に向けた重要な判断材料となる。
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TEXT:PreBell編集部
PHOTO:iStock
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