みんなのインターネット

デジタル一辺倒の時代は終わった。帰ってきた PostPet「モモ」と新しい時代を探しにいこう!

世界的なインターネットの普及により、私たちの生活にデジタルが深く浸透する一方で、「ポストデジタル時代」における産業や人間の営みを模索する兆しがみられます。

インターネット黎明期と呼ばれる1989年に、株式会社ゼルスを創業した田口健次氏は、企業コラボTシャツをはじめ「人と企業をつなぐマーチャンダイジング・プロダクション」MDPの運営など、常に時代の先端を駆け抜けてきました。

そんな田口氏が手がける「POSTPOP展」が、2023年7月14日(金)〜29日(土)までMDP GALLERY 中目黒で開催され、作品の展示や中目黒の街を巻き込んだ大々的なプロモーションが行われます。

POSTPOP展

今から25年以上前、インターネットの普及率が10%未満だった1997年に、ソニーコミュニケーションネットワーク株式会社(So-net)が立ち上げたPostPet「モモ」を、現代のポップアーティストたちはどのように表現するのでしょうか?

今回は、田口氏が歩んできた人生を振り返り、かえってきた「モモ」と私たちが歩む「ポストデジタル時代」の展望、イベントの見どころなどについてお話をお伺いしています。

「母親が亡くなり、この道を選択した。だから成功している」そんな人生にしたかった。

「母親が亡くなり、この道を選択した。だから成功している」そんな人生にしたかった。

現在、田口さんは様々な事業を展開されていますが、どのような理由で起業を決意したのですか?

田口氏:
私は、一流大学を卒業して一流企業に入ることを目標に友人達と勉学に励んでいましたが、17歳で母が亡くなり、描いた未来は諦めざるをえなくなりました。

その時に、母が亡くなったから自分の人生設計が狂ってしまったと言い訳するのではなく、この出来事があったからこそ成功できたという、そんな人生にしようと決意しました。

働きながら夜間の大学を卒業した後は、ファッションが好きだったこともあり、アパレルの会社にデザイナーとして就職し、3年ほどサラリーマンを経験しました。

成功における指標のひとつとして「一流大学に進学した友人達の生涯年収をできるだけ早く稼いでしまいたい」と考えたのが起業のきっかけです。

僅か17歳で田口さんのような決断をするのは簡単なことではないと思います。現在に至るまでの事業展開や心境の変化などについて教えていただけますでしょうか?

現在に至るまでの事業展開や心境の変化などについて

田口氏:
最初は、ブランドを立ち上げて、自分でデザインしたアイテムを幅広く展開していましたが、ふと入った蕎麦屋で転機が訪れます。

蕎麦以外の丼物やナポリタンが並んでいるのを見た時に、蕎麦の味は期待できないだろうなと感じました。

そして、自分が今やっていることは、この蕎麦屋と同で、シャツも、パンツも、ニットもトータルでは評価してもらえているけれど、飛び抜けているものは何もないのではないか、何かに特化しなくてはまずいと思い、Tシャツ1本で勝負することに決めました。

現在は、Tシャツによる企業広告など様々な事業を展開していますが、収益も上がり、この世界に入って本当によかったと思っています。

ただ成功したい一心で、辛いことや好きでない事業にも取り組んできたので、これからは、自分自身が心から楽しめる事業をやりたいという思いを抱いています。

「情報」から「生命」にシフトする。大切なのは人間が持つ五感を如何に刺激するか

大切なのは人間が持つ五感を如何に刺激するか

これからの時代には、重要なものが「情報」から「生命」にシフトしていくという予測もあります。田口さんは、企業とアートを結ぶ新しい拠点「MDP GALLERY」の運営などをされていますが、アートに触れる大切さについてどのようにお考えですか?

田口氏:
「情報」から「生命」へのシフトはその通りだと思います。人間が持つ五感をデジタルで表現するのは非常に難しいので、それをどう刺激するかが次のビジネスにつながるのではないでしょうか。

例えば、駅に貼られたアーティストのポスターをみて、人生に絶望している若者が生きる希望を持ったり、音楽に癒されて元気が出たり、如何に感性を刺激できるかが鍵だと思います。

もちろん、デジタル上でも、絵画を見たり、音楽を聴いたりすることができますが、ネット空間では表現できない質感や空気感が薄まってしまう気がします。

北欧ではどのようなランクのホテルにもアートが飾られているようですが、成熟期を迎える日本においても、アートが重視されるようになるのでしょうか?

成熟期を迎える日本においても、アートが重視されるようになるのか

田口氏:
今までは、靴やバッグなどファッションブランドとアーティストのコラボ商品が人気でしたが、最近は、アートそのものを高額なローンを組んで購入する若者がたくさんいます。

車など機能的なモノにはない価値を、アーティストが思想を持って描いたアート「世界でたった一つの作品」に見出しているのではないでしょうか。

特に、新型コロナウイルスが広まってからは、今までの価値観が根本から覆されたことにより、アートが再注目されているように感じています。

外に飛び出して多くの本物に触れよう!デジタルの世界だけでは時代に取り残される危険がある。

外に飛び出して多くの本物に触れよう!

田口さんは中目黒、鎌倉、軽井沢の3つの拠点を行き来しながら生活をしているそうですが、この3つの場所に共通することは何でしょうか?

田口:
3つの拠点に共通しているのは、風や光など四季折々の自然に五感が刺激されて仕事に対するモチベーションがあがることでしょうか。

実際には、軽井沢で登山をして、鎌倉でサーフィンをして、事務所がある中目黒で仕事をしていますが、意識して3つの拠点をまわるようにしています。

人生において達成感を得られる機会は少ないですが、頂上まで登ったときの喜びや、サーフィンで大きな波に乗ったときの爽快感は何物にも代えられません。

また、鎌倉の波の音、軽井沢の空気、日々水かさが変化する目黒川の流れなど、自然の声を聴くことが芸術や仕事にも良い影響を与えていると思います。

自然の声を聴くことが芸術や仕事にも良い影響を与えている

都会のなかで変化のない生活をしていると感性が衰えてしまう気がしますが、どのようなトレーニングをすれば良いでしょうか?

田口氏:
とにかくたくさんのアートに触れることが大事だと思います。料理で例えるなら、世界中の本物の料理を食べてはじめて、日本料理の良さを評価できるのではないでしょうか。

音楽や絵画も同じように、世界中のアートに触れることで、自然と目が肥えて、感性やセンスが磨かれていくのだと思います。

デジタルの世界だけで満足するのではなく、本物に触れる機会を持たないで、デジタル一辺倒では時代に取り残されてしまうかもしれません。

無駄を削ぎ落としたデジタル時代の若者が「モモ」をどう表現するのか?そこに未来のヒントがある。

無駄を削ぎ落としたデジタル時代の若者が「モモ」をどう表現するのか?

今回の「POSTPOP」のイベントの見どころや意気込みを教えていただけますか?

田口氏:
デジタル化が進む以前の1960〜1990年代は、今の若者には理解できないような無駄なことに多くのお金や時間を費やしてきたものです。

例えば、仕事もメールではなく電話でしたし、オンライン会議などはなく、会うための電車や飛行機など移動手段が必要でした。

そういった無駄を削ぎ落としたデジタル現代を生きるポップアーティスト達が、ペットがメールを運んでくる「PostPet」を知ってどのように感じるのか、「ピンクのクマさん」をどう表現するのかを楽しみにしています。

また、当時からPostPetに親しんできた方々にとってのモモは懐かしい存在ですから、世代によって感じ方が全く違うのも面白いと思います。

世代によって感じ方が全く違うのも面白い

中目黒の高架下スペースで開催される巨大3DアートのLIVEペインティングの楽しみ方などはありますか?

7月14日に中目黒の高架下で行われる「3DアートLIVEペインティング」は大きな見どころのひとつです。

今回のイベントでは、Instagramによる拡散とTikTokによるモモダンスという仕掛けを用意していますが、どのようなコメントが集まるのかとても興味深いです。

「モモって一体何者なの?」という世代が3DペインティングをInstagramでどう表現するのか、そこにはどんな映えがあるのかを知ることで、若者を理解し、楽しいビジネスに繋げていけたらと思います。

予想もしなかった世界観に驚く可能性も十分にありますし、ピンク色のクマが突如中目黒に現れるというシチュエーションは、あらゆる世代にとって、非常にワクワクするのではないでしょうか。

目標とする場所には到達できたので、これからは楽しい仕事をしたと仰っていましたが、これからスタートアップを考えている方々に何かアドバイスはありますか?

これからスタートアップを考えている方々に何かアドバイス

スタッフによく話すのですが、起業にしても新規プロジェクトにしても、途中でやめなければ失敗ではないので、とにかく続けることが大事だと思います。

一本の木があり、上に大きな実が成っていて、みんながそれを食べに行こうと登っていても、ほとんどの人が、上の目標である実を見ずに木を見て登っています。

そのために、距離がつかめず途中で疲れたり、小さな実に気を取られて枝から落ちたり、余計な体力を消耗してしまうのではないでしょうか。

ですから、どんなに低い木でも、とにかく一度登りきって、目標を達成した達成感を味わってほしい、そして、また次の木に登り、その木をどんどん高くしていくことが大きな成功につながると信じています。

終わりに

これからを生きる私たちの課題

key point

  • 「POSTPOP展」を手がける株式会社ゼルスは、企業コラボTシャツをはじめ「人と企業をつなぐマーチャンダイジング・プロダクション」MDPや企業とアートを結ぶ新しい拠点「MDP GALLERY」の運営などを行っている。
  • アーティストが思想を持って描いたアート「世界でたった一つの作品」に価値を見出す若者が増えている。
  • デジタルの世界だけで満足するのではなく、本物に触れる機会を持たないで、デジタル一辺倒では時代に取り残される可能性がある。
  • 「POSTPOP展」では、So-netが立ち上げた「モモ」を現代のポップアーティストたちが如何に解釈し表現するのか、それを若者達がSNSを通じてどのように拡散するかに未来のヒントがある。

いかがでしたでしょうか?

So-netのPostPet「モモ」が誕生した1997年のインターネット普及率は僅か10%未満でした。

しかし、25年以上の歳月を経て、今では誰もが気軽にインターネットを楽しめる時代になりました。

その一方で、インターネットをはじめとするデジタル化は「手段」に過ぎず、その核心となるような「コンテンツ」が今後どうなっていくかといったビジョンは、これからを生きる私たちの課題でもあります。

昭和、平成、令和と3つの時代を駆け抜けた「株式会社ゼルス」の田口氏が手がける中目黒の街を巻き込んだ「POSTPOP展」でモモの仲間たちと一緒に、新しい時代を探してみてはいかがでしょうか。

intervieweeプロフィール

株式会社ゼルス代表取締役 田口健次

田口健次

1959年東京都板橋区出身

1989年「株式会社ゼルス」創業

TV、新聞、雑誌、インターネットなどに変わる新しい広告メディアおよびセールスプロモーションを展開し、ユニクロのヒット商品になっている企業コラボTシャツの展開など独自の流通メディアに参画したクライアントは10年間で800社を超える。

スポーツ、アーティスト等各界で活躍するプロフェッショナルを企業様に活用してもらうMDP(マーチャンダイジングプロダクション)企業とアートを結ぶ新しい拠点「MDP GALLERY」の運営など新たな価値を創造し続けている。

PHOTO:iStock
TEXT:PreBell編集部

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