姿勢が変わると、人生が変わる。人生100年時代を幸せに生きる秘訣とは
世界的に高齢化が進んだ場合、先進国の半数が100歳を超えて生きる「人生100年時代」が到来すると言われています。
一方で、日常生活が制限され介護がスタートする「健康寿命」は、男性72.68才、女性75.38才。(2019年厚生労働省「平均寿命と健康寿命」)
人間本来の正しい身体の使い方を知らないとせっかく寿命が延びても、介護を受ける期間が長くなり、人生を満喫することができません。
姿勢治療家Ⓡの仲野孝明氏は、0歳から108歳までのべ18万人以上の体調を改善に導き、新たな挑戦をサポートしてきました。
また、治療の経験を自身のスポーツにも応用し、鉄人レースや世界一過酷といわれるサハラ砂漠マラソン250キロ・トレイルラン最高峰UTMB・サロマ湖100キロウルトラマラソン完走など数々の姿勢実験を毎年更新しています。
今回は、仲野氏に姿勢治療家Ⓡを創設した経緯や100キロを超えるマラソンを走り抜く秘訣、日々のトレーニング方法や日常生活における姿勢の大切さについてお話をお伺いしました。
仲野:
1926年(大正15年)に初代が三重県四日市市で仲野整體創設。私が現在、四代目になります。
二代目と三代目、二代にわたり、地域医療に貢献したとして、3度の褒章受章・勲章受勲しております。
三代目である私の父は渡米し、カイロプラクティック大学を卒業後、1977年当時ではまだ少ない、日本人13人目の米国公認カイロプラクティックドクターを取得。日本に帰国後は、医学博士取得。日本鍼灸師会会長を歴任。精力的に臨床を行ってまいりました。
そんな父は、私たち4人兄弟に対して「家業の治療家の道にこだわらず、自分の好きな道に進めば良い」と言っていましたが、結果として4人全員が同じ治療家の道に進んでいます。
仲野:
痛みや不調がある人は、一時的に痛みをとるための対処療法で解決しようとしますが、根本原因を取り除かなければ、痛みを繰り返すことになります。
腰の痛みと言っても、その原因は人それぞれです。痛みの根本原因を一緒にさがすために、患者さんに作成していただく0歳からの身体の年表で過去にさかのぼり、100項目以上の検査と問診で現在の身体の状態を把握します。治療と並行して、身体の動きから問題点を探し出し日常的な動作の改善からトレーニングまで段階に応じて処方をしています。
身体を見直す時間は、人生を見直す時間だと考えています。
仲野:
走るエネルギー源は「脂肪」と「糖」の2つですが、長くゆっくり走る時には「脂肪」、激しく走る時には「糖」が使われます。
息が上がるような激しい走り方では体内の「糖」をすぐに使い切ってしまうので、長く走ることができません。
先日のサロマ湖ウルトラマラソンでも、ガジェットを利用して常に心拍数を把握し、脂肪を利用する有酸素ゾーンの数値を意識しながら走っていました。
前半6分10秒/kmのペースを維持し、後半は6分30秒/kmのペースを維持、11時間30分で完走しました。スタートからゴールまで常に、心拍と速度を意識しながら走っていました。
仲野:
練習であっても、有酸素運動から無酸素運動へと切り替わる「AT (Ananerobic Threshold)(無酸素性作業閾値)」把握し、適切な運動負荷を行うように心がけています。
そのため、心拍数を常に計測できるガジェットを利用しています。安静時の心拍や運動時の心拍を計測することで、自分の有酸素運動領域の心拍数を把握できるようになります。
日常の練習では、データをもとに有酸素運動領域を強化する運動をメニューを行う日にしたり、有酸素運動閾値を広げるためのトレーニングを行ったりと、目的を明確にしています。
毎週行っている東京ナイトランニング【水曜飛脚】
辛くなったら歩く、またゆっくり走るを繰り返す。気づいたら、走れる時間が増えていきます。いっきに目標を高く設定すると、苦しすぎて諦めてしまいます。習慣にならず折角のやる気がなくなってしまいます。まずは歩くからスタート、楽しい範囲で徐々に運動習慣をつくっていきましょう。
もしも減量が目的の場合は、自分の理想とする体形のモデルや俳優さんなどの写真を見て、ダイエット後の自分の姿をイメージすることも効果的です。
仲野:
AT値(無酸素性作業閾値)、AeT値(有酸素性作業閾値)を知る事で、ゾーンに分けることができます。
心拍数がAT値(無酸素性作業閾値)を超えると無酸素運動になり、長時間続けることができない苦しい運動になります。
AT値の計算方法
(220-年齢-安静時心拍)×0.8+安静時心拍=AT値
※安静時心拍の算出の仕方:安静時に1分間の心拍数を測る
AeT値とは、有酸素性作業閾値
有酸素運動から無酸素運動の要素が含まれ始める境界線
もっとも効率の良いエネルギー代謝ができる
一番楽に長時間走りつづけるための目安となる数値
AeT値の計算方法
(220-年齢-安静時心拍)×0.6+安静時心拍=AeT値
自分の心拍数ゾーンを明確にするには、日々の心拍数を把握することが大切です。
最大心拍・AT値・AeT値・安静時心拍を、正確に把握するため、ガーミンやCOROSなどのガジェットをうまく活用し効果的な練習が行うことをオススメします。
運動をすることにより血液循環が良くなり、心臓から末端の毛細血管まで血がいきわたり、酸素供給が身体の隅々までいきわたります。
便利な世の中で、身体を動かさなくても日常生活がなりたつ現代、脳みそは疲れているけど、身体が疲れておらず、うまく気持ちよく寝られない人もいます。身体を動かしてバランスをとりましょう。
効果的に運動を行えれば、代謝があがり消費するエネルギーも増え理想的な身体に近づくでしょう。
人生の後半戦をより充実したものにするためにも日々の運動をおすすめします。
最近はコロナ禍でより一層、座って過ごす時間が長くなっている方が多いのではないでしょうか。
1日のなかで8時間は睡眠、2時間を食事とお風呂、それ以外の14時間は仕事やゲームなどの娯楽で常に座っているような生活では身体を壊してしまいます。
新規で来院される患者さんには、背中や腰の痛みや頭痛を訴える方も多く、3年前のリモートワークがきっかけになっています。
人間は構造的に座るように設計されていません。人間は立つ動物です。ぜひ生活の中で立っている時間を増やすことをお勧めします。
デスクワークにおすすめなのが「スタンディングデスク」で、パソコンの画面と目線を合わせることで、首や肩や腰など身体への負担が軽減され脳脊髄神経が働きやすくなります。
また、私が使用している「エルゴトロン LXデスクマウント デュアルモニターアーム」は、広い可動域でPCのモニターを適切な位置に配置できます。
スタンディングデスクやモニターアームの導入は厳しいという方は、30分に1回、少なくとも1時間に1回 立ち上がり大きく背伸びをすると良いでしょう。
仲野:
一般的に50歳までは、特別何もしなくても健康に過ごすことができますが、そこから先は段々と厳しくなるでしょう。
人生の後半戦を健康に過ごすためには、姿勢、睡眠、食、運動、精神、呼吸の6つの要素が非常に重要です。
姿勢が悪いと、背骨の中には、脳からつながる神経の束が通っています。それらの神経は、背骨から枝分かれして、胃や腸、心臓、肺、肝臓、目・・・・など。間違った身体の使い方をつづけて背骨に負担がかかると、背骨の中を通る大切な神経が圧迫されて身体にきちんと信号が伝わりません。
一時的なものなら問題なくても、その状態がくり返られると、神経がつながる先の身体の部位に影響が出て、不調が生じてしまいます。
肺が圧迫されて呼吸が浅くなったり、自律神経の働きが低下してイライラしたり、腸での栄養吸収が低下したり、姿勢は体調と密接に関係しています。
ー最後に姿勢治療家の仲野さんからアドバイスなどをお願いできますでしょうか?
仲野:
姿勢をほんの少し意識するだけで、印象も格段に良くなります。
また、人間本来の構造通りに正しく身体を使うことにより、骨や関節、筋肉など身体の負担が軽減します。
座り方や立ち方などは、動画で公開しているので是非やっていただけたらと思います。
長期にわたり身体を壊して痛みを抱えてしまうと、どうしても言動がネガティブになりやすいです。
「言葉」が持つ力は偉大で、健康状態が良い人が発するポジティブなメッセージも必ず周囲に伝播します。
「一人一人の姿勢が良くなれば、日本の未来は必ず変わる。」そう信じております。
key point
- 姿勢治療家の仲野孝明氏は、0歳から108歳までのべ18万人以上の体調を改善に導いてきた。
- 治療と並行して、身体の動きから問題点を探し出し日常的な動作の改善からトレーニングまで段階に応じた処方をしている。
- ゆっくり走る時には「脂肪」、激しく走る時には「糖」が使われるので「脂肪」を使う心拍数のゾーンを意識して走る必要がある。
- 人生の後半戦を健康に過ごすためには、姿勢、睡眠、食、運動、精神、呼吸の6つの要素が非常に重要である。
- 「スタンディングデスク」でパソコンの画面と目線を合わせることで、首や肩や腰など身体への負担を軽減され、脳が働きやすくなる。
いかがでしたでしょうか?
私たちは、怪我や病気になって初めて健康の大切さに気が付きますが、ほとんどの体の問題は、長年のちょっとした悪い生活習慣の積み重ねで起こっています。
人生が50歳で終わるなら、日々の姿勢や運動について、それほど真剣に考える必要はないかもしれません。
しかし、50歳以降も今までと同じようにビジネスやプライベートでさまざまな挑戦をするためには、思い通りに動く身体が必要不可欠です。
特に、日本人は猫背になりやすい骨格ですから、日頃から意識して正しい身体の使い方をすることで、本来の能力が引き出され、人生の後半戦をより一層楽しむことができるでしょう。
intervieweeプロフィール
仲野孝明(なかのたかあき)
姿勢治療家Ⓡ。仲野整體東京青山院長。
介護予防運動指導員。1973年三重県生まれ。
大正15年創業、のべ180万人以上の患者数と3度の褒章受賞・綬章受勲を誇る仲野整體の4代目に生まれ、自身もこれまで0歳から108歳までのべ18万人以上の患者を治療する。2008年仲野整體東京青山を開院。“人間本来の正しい体の使い方”から治療することで、全く運動をしてこなかった女性が、3ヶ月後にフルマラソン完走など。「姿勢が変わると、人生が変わる。」患者さんが続出。現在国内外から患者さんが来院され、予約が取れない治療院となっている。
PHOTO:iStock
TEXT:PreBell編集部
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