カジュアルに地獄。仕事をしなさすぎるのでIoTで自宅を監視される
仕事というものがある。その仕事には大抵「締め切り」というものがある。その日までに仕事を行わなければ、怒られるのはもちろん、社会的信用がなくなるのだ。とても大切なことだ。
ただ、たとえばフリーランスなど自宅で仕事をしていると、いつでも自分の裁量で仕事ができてしまうので、ついつい締め切りを破ってしまう。遊んじゃうのだ。そこでIoTを使って自宅にいながら監視下にある仕事スタイルをとってみようということになった。
IoTを使えば仕事をしない人が仕事をするようになるかもしれない
IoTというものがある。「Internet of Things」の略で、ものすごく簡単に説明すると、さまざまなモノがインターネットと接続されることだ。例えば、インターネットに接続したセンサーを使って、「ドアの動きを検知したらスマホに通知を出す」「人の動きを検知したら電気をつける」「外出先から家電を操作する」といったことができるのだ。以前、浅草にあるIoTホテルを取材させて貰ったことがあるが、自宅にもIoTの時代なのだ。
このIoTは、仕事をしない人を監視することもできるのではないだろうか。仕事をしない人、というのが私のことだ。私はフリーランスというか、無職に近いので、仕事をまぁしない。驚くことに締め切りを1年すぎた仕事まであるのだ。
いま本を書いているのだけれど、出版予定日をすでに1年すぎて、そろそろ原稿を書かないとまずい、という話をPreBellの編集部にしたところ、IoTを使って監視しましょう、ということになった。PreBellと本は全然関係ないのに、監視するらしい。なんて優しいのだろう。
IoT機器を使うことで簡単に館詰ができる
昔の作家や漫画家は編集者が準備したホテルなどで仕事をした。館詰(かんづめ)と呼ばれるものだ。仕事をせずに原稿から逃げる作家を逃げられないようにするため、編集者が一緒にホテルに泊まって見張っていたりするのだ。ただ、PreBell編集部によると、現代ではIoTを使えば自宅でも館詰状態を作ることが可能らしい。
今回は、マウスコンピューターの「mouse スマートホーム」というIoT製品を利用する。渡邊さんはこのスターターキットを持って我が家にやってきたわけだ。これには、mouse スマートホーム5製品が入っている。
この時点の私は館詰という一流作家のような状態に感動しているし、IoTが我が家にやってきたことにも感激している。これを使えば、築35年のこのアパートも未来の家のようになるのだ。
スターターキットの内容
・ルームハブ[RH01]
他のmouse スマートホーム製品を連携させてコントロール、エアコンやテレビなどのコントロール、温度や湿度の取得が可能。
・スマートプラグ[SP01]
接続された家電機器の電源のオン、オフが可能。さらに、電源オン、オフのスケジュール登録や、電気使用量の確認、電気の消費履歴の確認もできる。
・スマートLEDライト[LL01]
点灯、消灯のスケジュール登録、光量調整が可能。ドアセンサーやモーションセンサーと連携して点灯や消灯もできる。
・モーションセンサー[MS01]
赤外線で人の動きを検出、センサー検出履歴の確認、また、検出と同時に手元のデバイスへ通知が可能。スマートLEDライトと連携し、点灯や消灯することもできる。
・ドアセンサー[DS01]
窓やドアの開閉を通知、閉め忘れなどを遠隔地から確認できる。スマートLEDライトと連携し、ドアや窓の開閉に合わせた点灯や消灯も可能。
スターターキットには、mouse スマートホーム製品を連携させる「ルームハブ」、接続された家電機器の電源のオン、オフなどが可能な「スマートプラグ」、点灯や消灯ができる「スマートLEDライト」、赤外線で人の動きを検出する「モーションセンサー」、窓やドアの開閉を通知する「ドアセンサー」がある。
全てはスマホの専用アプリと連動しており、外出先からでも操作できるし、たとえば、ドアセンサーならドアが開いたことをスマホに通知してくれる。未来だ。子供が帰ってきたか、などが職場からでもわかる仕組みだ。素晴らしいではないか。
このようなセットをして、築35年の私の家は最新の家になった。自宅にいながら館詰という状態だ。一流になれた気がする。私の原稿をみな待ちわびているのだ。本と全く関係ないPreBell編集部までもが。そう思うと幸せだった。この時は。
自宅館詰生活の開始
編集渡邊さんが帰ったあとから、私の館詰生活は始まった。特にこれと言って不都合はなかった。館詰生活が始まったんだ、という満足感から私は仕事をしてしまった。原稿をゴリゴリと書き、戻ってきている原稿にバリバリと赤(修正)を入れた。
ヤル気というものは長くは続かないものだ。続いていれば、私の本はもう出ているだろう。外に行きたくなるのだ。別に遊びに行く感じではなく、特にやることなく近所をブラブラ散歩して、心地よい疲れを手に入れて、眠りにつこうとしてしまうのだ。
ただそこは未来の道具IoT。私がモーションセンサーに引っかかり、その情報が編集部のスマホへと飛び、電話がかかってくる。私はまだ小物なので、電話で「仕事しろ」と言われるとしちゃうのだ。仕事をしている時に言われると腹がたつけれど、してないのがバレているので「すみません」となってしまう。
結局、仕事をすることになる。ただ私はへこたれない。この束縛(館詰)からの卒業を目指した。やる気が違う方向で湧いてきたのだ。本当の卒業は原稿を終わらせることなのだけれど、ここから逃げ出す、ということにやる気を出しちゃったのだ。
モーションセンサーは私が前を通ると赤く光り、編集部へと「あいつ動いてますぜ」と通知を出してしまう。このモーションセンサーがどのくらいの範囲を感知しているのかを調べるため、私は蚊取り線香を取り出した。
ゲームで見たことがあるのだ。煙を漂わせることで、赤い線が見えるのだ。その赤い線に触れなければ、モーションセンサーは反応しない。この赤い線が見えないばかりに私はモーションセンサーにひっかかるのだ。
結論を言うと、全然赤い線なんて見えなかった。もしかして、このモーションセンサーが動いてないのか、と思い前を通ったらバッチリ反応を見せた。つまり煙ではモーションセンサーの反応範囲を知ることができないのだ。
大発見だった。このモーションセンサーは動かすことができた。もちろん固定することもできたのだけれど、なぜかそうしないで編集渡邊さんは帰っていった。逆にすればいいのだ。私は1つ目の関門を突破したのだ。
家を抜け出す
次の関門はドアの開閉を感知するドアセンサーだ。これが問題なのだ。ドアを開けるとすぐに編集渡邊さんの元へと通知が飛ぶ。飛ばないで、と私は願うのだけれど、飛んじゃうのだ。未来だ。本来はめちゃくちゃ便利だと思う。今は邪魔だけど。
このセンサーはキチンと設置してあるので、モーションセンサーのように動かすことは難しい。どうにか反応しないように考えなければならない。もはや気分はルパン三世である。次元も五右衛門も不二子もいないルパン三世だ。
全然ダメだった。このあとも、このセンサーを破る方法を考えたけれど、何も浮かばなかった。私の家は3階なので、ベランダから抜け出すのは不可能だ。そして、玄関側に面した窓はすべて柵がある。なんであるのか、柵。普段はめちゃくちゃ安全でいいんだけど。
ふて寝する
モーションセンサーは通過できたけれど、ドアセンサーは無理だった。外に行くことはできない。仕事をしているけれど遅れた、ならわかるけれど、仕事をしていなくて遅れた、では社会的な信用がなくなる。電話を無視するということはできないのだ。
気がついてしまった。何も外にだけ自由があるのではないのだ。寝るという最強のサボりがある。惰眠を貪ることほど最高の眠りはない。普通に眠ってももちろん気持ちがいいけれど、仕事をせねば、と思いながら眠るこの眠りこそが最高なのだ。
スマートプラグというものをコンセントにさしてから、そのスマートプラグにテレビなどの家電製品の電源をさす。それだけでいつも使っているスマホから電源を入れたり切ったりすることができるようになる。本来は電源の切り忘れ、などに便利な機能だけれど、編集さんが使うとこんな極悪アイテムになるんだな、とちょっと感動した。
私は諦めた。綺麗に全てを諦めた。完璧なる館詰がここにはあるのだ。もちろん自分で全てのIoTの電源を切る、という方法もあるが、それは仕事をしていないとモロにバレる。電話を無視する手もあるけれど、それは応援を裏切ることになる。それはできない。逃げ出そうとはしたけれど。
ということで、私は仕事をすることにした。この仕事を終わらせなければ、館詰は終わらないのだ。仕事を終わらせることがいちばんの逃げ方なのだ。そう気がつき私はゴリゴリと仕事を頑張った。
IoTで出版だ!
未来は来ていた。IoTで館詰ができるのだ。未来は明るいものだと思っていた。ただそうでない使い方もあるのだ。それが今回なのだ。しかし仕事が終わるということは素晴らしいこと。今後はIoTをこのように使わなくていいように、仕事を頑張ろうと思います。
こうして頑張った本が9日に出ます! ぜひ!!
ライター
地主恵亮 (じぬしけいすけ)
1985年福岡生まれ。思い立ったが吉日で行動しています。地味なファッションと言われることが多いので、派手なメガネを買おうと思っています。無職でもリア充になれる方法を紹介した「インスタントリア充」(扶桑社)発売中です。ほかに「妄想彼女」(鉄人社)、「東京おのぼり観光」(アスペクト)もあります。
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