大物になるためにファーストガンダムとZガンダムの全93話を1日で見たら死にそうになった
ガンダムというものがある。誰もが知るロボットアニメだ。1979年に第1弾となる「機動戦士ガンダム」が放送され、1985年に第2弾の「機動戦士Zガンダム」が放送された。今も続く大人気シリーズだ。私は、見たことがない。
作家の「西尾維新」や「舞城王太郎」を商業デビューさせた名物編集者の「太田克史」という人物がいる。彼は作家に「機動戦士ガンダム」と「機動戦士Zガンダム」を1日で観ることを勧めた。これをやると作家としてブレイクできるそうだ。では、観てみようではないか。
ノンストップでガンダム
『白の断章』で講談社の新人賞で初の大賞を受賞した、作家の鏡征爾(かがみ せいじ)さんは、ねとらぼさんで連載されている小説、『東大ラノベ作家の悲劇』で、
「それがお前と西尾の違いだよ」
— ねとらぼ (@itm_nlab) 2017年10月2日
西尾・舞城・奈須を超えろ——重版童貞が名物編集者に言われた最高のアドバイス「ガンダムを1日で見ろ」 https://t.co/Fc3jop2utU @itm_nlabentaから pic.twitter.com/HK2OmX1x8z
太田克史氏より、作家として突き抜けるためのアドバイスを受けた。
それは「機動戦士ガンダム」と「機動戦士Zガンダム」全93話を1日で観るということ。そして「化物語」や「クビキリサイクル」といった作品を執筆した作家の西尾維新は、彼にそう言われ実際に観たそうだ。
上記の2作品のガンダムを1日で観ると、作家としてひと皮むけるようなのだ。1日ガンダムを観続けるという集中力と、編集者に言われたまま素直に実行する行動力が大切ということらしい。私も本を書いているけれど、西尾維新のように売れているわけではない。全然売れていない。そこで私は太田克史の言葉を信じ、ガンダムを一気に観ることにした。
便利な世の中になったもので、私がもともと加入していたAmazonのプライム・ビデオを使えば、「機動戦士ガンダム」も「機動戦士Zガンダム」も全話観ることができる(ちなみにNetflixでも見放題だ)。問題は2作品の合計が93話なので、1話あたり約20分としても単純計算で35時間ほどかかることだ。35時間も休まずに観続けることはできるだろうか。というか、太田氏は1日で観ろと言ったそうだが、そもそも物理的に無理なのである。
ガンダムとの戦い
機動戦士ガンダムの視聴がはじまった。全43話だ。私は今までガンダムを観たことがない。はじめてのガンダムだ。人類が宇宙コロニーに移住して少し経った未来の話で、主人公のアムロが属する地球連邦軍と、シャアが属するジオン軍が戦争を繰り広げる。
この戦争に使われるのが、ガンダムなどの人型機動兵器モビルスーツである。ものすごく簡単に説明しているけれど、ここにさまざまな人々との出会いと別れがあり、人間ドラマとしても面白い。問題はこれを35時間観続けることだ。
今回はトイレのとき以外、この椅子から離れることはできない。一気に観ることが大切だからだ。そこで食事はAmazonの「prime now(プライム ナウ)」を利用した。注文したものが最短1時間以内に届き、お惣菜なども頼むことができる。
視聴開始から5時間が経った頃、疲れが出てきた。6話でフラウ・ボゥがアムロに「飲んでって、栄養剤よ!」と栄養ドリンクを渡すのだけれど、私にも欲しい。さらに、9話でフラウ・ボゥが眠れないアムロに対して、医者の卵であるセイラに相談したらと提案するシーンがあるのだけれど、このぶっ続けが体にいいのか私がセイラに相談したかった。
主人公や一般人たちは「ホワイトベース」という宇宙船に乗っていて、一般人は食べ物の配給を求めている。乗組員も作業量で食事のカロリーが決まっている。私はそんなのは無視して、全然カロリーを使っていない気もするけれど、ガンガンに食べた。
ガンダムの真似
9話でアムロがブライトさんにぶたれていた。「親父にもぶたれたことないのに」と名言を残している。ちなみにアムロはこのあともぶたれるシーンがたくさんあるのだけれど、どんどんリアクションは薄くなり、30話では連邦士官にギャグ的にぶたれていた。
目の奥が鈍く痛く感じはじめた。めちゃくちゃ爆発するし、展開も早い。これを理解しようと観ているとかなり疲れるのだ。1話20分くらいなのにキチンと毎話内容が詰まっている。展開も早いので、急げよと、やきもきすることがない。その分疲れるんだけどね。
視聴をはじめて10時間ほどが経過したが、12話で部屋のベッドに座って白目になっているアムロの気持ちが理解できた。ガンダム自体は間違いなく面白いのだけれど、ずっと観続けるとキツい。アニメが1週間に1話なのがわかった。そのくらいがちょうどいい。続けては肉体的にキツい。
ガンダムを観るのにもっと集中しようと地球連邦軍の衣装に着替えた。これはプライム ナウにはなかったので、Amazonで前日に頼んでおいたのだ。そして、24話を観ながらこの格好で登場人物と一緒に「マチルダさーん」と叫び敬礼をした。
深夜0時前にプライム ナウの第2便が届いた。新たに栄養ドリンクなどを頼んだのだ。この格好で配達員さんを出迎えたので、深夜なのに元気な人だと思われたに間違いない。機動戦士ガンダムはまだまだ終わる気配がない。先は長いのだ。
地獄の時間
シャアが「北米キャルフォルニア」と言っている。「カリフォルニア」ではなく「キャルフォルニア」なのだ。シャアは発音がいいのだ。いや、私が疲れているからそう聞こえているだけかもしれない。目が回る感じがする。体は疲れているけど、先が知りたい、というアンバランスな状況が私をおかしくしている。
眠気覚ましのために、ガンダムを観ながらガンプラを作ってみた。完成したザクは内股だった。弱そうだ。私の今を表している気がする。そして、ミライという女性の恋の多さにも驚いた。途中まではブライトが好きだと思っていたけど、カムランという昔の恋人が出てきて、36話ではスレッガー中尉とキスをしていた。私もこういう女性に会いたい。
エンディング曲では「アムロふりむかないで」と歌っている。ただオープニングを観るとアムロがめちゃくちゃ振り向いている。そして、このくらいの時間からオープングとエンディングを観るのをやめた。
Zガンダムに移ります
開始から約18時間が経過し、「機動戦士ガンダム」を全話観終わった。もうかなり満足である。地球連邦軍とジオン軍が和平交渉を行うみたいな終わりだったと思う。最後あたりの戦いは目まぐるしく、観るのに疲れた。面白いけれど、もう頭も体も、ついていかない。ふわふわした感じだ。
続いて「機動戦士Zガンダム」を観はじめた。1985年の作品。前作「機動戦士ガンダム」の6年後に制作された作品で、作中では前作から7年後ということになっている。映像が美しくなっていることに驚いた。ガンダムが綺麗なのだ。全50話もあるけど。
機動戦士Zガンダムは話が若干ややこしく、地球連邦軍から「ティターンズ」という組織も生まれ、さらに反地球連邦組織に「エゥーゴ」と「カラバ」という組織があり、ジオン軍の残党は「アクシズ」を結成している。そして、主人公たちは「エゥーゴ」だ。
「エゥーゴ」にはシャアもクワトロ・バジーナという偽名で参加している。昔の敵が仲間になっているのだ。アムロやハヤトも出てくる。壮大すぎて、疲れ切った頭には入ってこない。
主人公のカミーユがガンダムMK-IIの3号機に乗り込んで「火が入っている」と言っていた。ガンダムってどういう仕組みなんだろう。あとシャアが袖のない服をきて筋肉質になっていた。7年経ってファッションセンスも随分変わったようだ。
シャアが赤いモビルスーツではなく、金色の「百式」と呼ばれるものに乗っていた。これもAmazonで事前に買っていたので、それを作りながらガンダムを視聴する。ただ先ほどのザクより部品が小さく、疲れ切った体にはとてもキツいものだった。
作っている最中に24時間が経っていた。本当にキツい。ここ数年でいちばんキツいと言っても過言ではない。体は重く、まぶたも重く、全身が揺れている感じがする。目を閉じてもまぶたの裏にガンダムが映る。これをやり遂げた西尾維新はすごい。そりゃ売れるわ、と思う。
字は人を表す、という。ガンプラもまた人を表すのではないだろうか。内股で弱々しいのだ。私の今の状態だ。あと体が臭い。お風呂に入ってないからだ。アムロと同じヘレンヘレンという石鹸を使って体を洗いたい。顔も油でテカテカだ。
ガンプラを作っている間に、ミライは結局ブライトと結婚していたとわかり、さらに百式が出なくなっていた。30話でカミーユが「危ないそっちに行くな」と言っている。もう私はそっちに行ってもいいかな。
30時間がたった。まだ32話だ。あと18話も残っている。無理だ。これは無理だ。もう体がグワングワンするし吐き気もする。宇宙酔いかミノフスキー粒子のためかもしれない。現実とアニメの話がごちゃっとしてきた。
30時間で視聴をやめた。私には無理だ。名物編集者の太田克史はこれで何を伝えたかったのだろう。限界の向こう側に行け、かもしれない。たぶんガンダムの物語的なことではないと思う。だって、キツくて全然、物語が頭に入ってこないから。
気づきはきっと私のどこかに
ガンダムは面白かった。展開も早いのに、全部に内容がある。ガンダム13話など、女性隊員の水着シーンではじまったのでサービス回かと思ったら、アムロが兵士を拳銃で撃つというヘビーな内容だった。30時間俺はガンダムを観た、という達成感はある。この達成感が本を書く上で大切なのかもしれない。ガンダムを観るより本を書くほうが楽な気がするから。
せっかくなのでこの企画の元ネタとなった作家 鏡征爾さんにご報告をしてみた。
地主「鏡さん、僕も18話くらいを残してギブアップしてしまいました」
鏡「地主さん……何あきらめてるんですか? 僕が言われた言葉を、プレゼントとしてそのまま地主さんに送ります」
「はあああああなんで1日でみねえんだおおおッ! このゴミがああ!」
売れっ子作家への道は、長く険しそうだ。
ライター
地主恵亮 (じぬしけいすけ)
1985年福岡生まれ。思い立ったが吉日で行動しています。地味なファッションと言われることが多いので、派手なメガネを買おうと思っています。無職でもリア充になれる方法を紹介した「インスタントリア充」(扶桑社)発売中です。ほかに「妄想彼女」(鉄人社)、「東京おのぼり観光」(アスペクト)もあります。
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