スキマバイトアプリ「エリクラ」、突然の幕引き
リクルートが運営するスキマバイトアプリ「エリクラ」が2025年6月末でサービス終了を迎えることとなった。このアプリは、2019年のリリース以来、「スキマ時間を活用して手軽に働ける」ことをコンセプトに多くの利用者を集めてきた。しかし、突然の終了発表は利用者や関係者に波紋を広げている。
エリクラの主な利用者は、仕事を探す個人事業主と業務を依頼したい事業者だ。アプリ上には「駐車場のごみ拾い」「マンション共用部の清掃」など短時間で完結する仕事が分単位、1円単位で掲載され、約10万人の登録者がその中から自分に合った仕事を選ぶ仕組みだった。
しかし、その利便性の裏で、エリクラを巡る問題が次第に明らかとなった。特に問題視されたのは清掃業務で発生するごみの取り扱いだ。ワーカーは作業中に発生したごみを自費で処分するよう求められるケースが多く、不法投棄を誘発している可能性が指摘されていた。実際、複数の利用者が「適切な処分方法を案内されないまま、やむを得ず家庭ごみとして出すしかなかった」と証言している。
このような状況に対し、リクルート側は「自治体のルールに従うよう利用者に伝えてきた」と説明する一方で、「結果として不適切な処理が発生している可能性を否定できない」として謝罪するコメントを出している。同社はまた「事業環境の変化を総合的に判断した結果」としてサービス終了を決定したが、その背景には深刻な運営上の課題があったことが伺える。
不備が招いた終焉と課題の残る構造
エリクラの問題の核心は、業務委託契約の形態にある。この契約ではワーカーが個人事業主と見なされるため、最低賃金や労働時間の規制、業務中の安全保障といった法的保護が適用されない。そのため、清掃用具や交通費は自己負担となり、さらにごみの処分費用まで求められることが多かった。利用者の中には、「仕事の報酬がごみ処理費用を下回るケースもある」と訴える声もあった。
こうした運営形態がワーカーに過度な負担を強いる一方で、事業者側は低コストで人手を確保できるという利点を享受していた。しかし、その結果としてワーカーと事業者の間で責任の所在が不明確になり、不法投棄の問題が浮き彫りとなった。
エリクラのサービス終了は、一見すると単なるビジネスモデルの転換に過ぎないように見える。しかし、背景にあるのは、低賃金や不安定な労働条件の中で働く人々が直面する厳しい現実だ。特に清掃業務のような社会に欠かせない仕事が、十分な評価や支援を受けられない状況は、労働市場全体の課題を映し出している。
サービス終了後も、エリクラが残した課題は依然として解決を要する問題として残るだろう。リクルートが掲げた「スキマ時間の有効活用」というコンセプトは、労働環境の改善とセットでなければ持続可能ではないことを示している。この教訓が、今後の類似サービスの運営や政策に生かされることを期待したい。
【関連リンク】
・スキマバイト「エリクラ」サービス終了の急展開(東洋経済オンライン)
https://toyokeizai.net/articles/-/847744?display=b
TEXT:PreBell編集部
PHOTO:iStock
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