スマートスピーカーでやる意味あるの?アマゾンエコーに音声で注文できる居酒屋に飲みに行く
Amazon Echo(アマゾンエコー)というものがある。いま話題のスマートスピーカーのひとつだ。Alexa(アレクサ)と呼ばれる人工知能を搭載しており、天気を聞いたり、音楽を再生したり、買い物ができたりする未来の道具だ。
一般的には自宅で使うものだと思うのだけれど、Amazon Echoで注文を取る居酒屋があると聞いた。店員さんに直接頼むのでもなく、タブレット端末でもなく、音声で注文をするのだ。ぜひ行ってみたいと思う。
スマートスピーカーで注文を取る必要があるの?
Amazon EchoやGoogle Homeなど、ここ数年スマートスピーカーが熱い。スイッチをわざわざ押したりすることなく、呼びかけるだけで知りたいことを知ることができる。買い物だってすることができるのだ。
Amazon Echoが居酒屋に導入されたと聞いた。音声で注文を取るらしい。未来だ。でも、居酒屋の注文って「タブレット端末」で、画面をタッチして注文するという便利な方法がある。果たしてAmazon Echoでやる必要があるのだろうか。
せっかくだから飲みながら話を聞く
Amazon Echo(厳密にはAmazon Echoの小型版のAmazon Echo Dotです)を活用した注文システムを導入している居酒屋、「天空の月 渋谷店」にやってきた。ここでその未来を体感しながら、開発者に話を聞こうと思うのだ、飲みながら。
このシステムを開発した会社、ヘッドウォータースでプロジェクトマネージャーを務める椋代宏平さんにお話を聞く、飲みながら。椋代さんは大学卒業後、販売情報を管理する「POSレジ」の開発を行い、その後、なんだかんだ(バックパッカーをしたり、リーマンショックで勤めていた会社が倒産したり)あって、現在はヘッドウォータースに勤め、このプロジェクトの企画をした人だ。
いきなりですが、注文していいですか! |
どうぞ、どうぞ、店員さんを呼びましょうか? 呼ぶのもアレクサ(Amazon Echo)がやってくれます。 |
アレクサ、天空の月アプリを開いて。 |
はい、店員さんを呼びますか? それともお会計をしますか? おすすめなんかも聞けます。 |
店員さんを呼んで。 |
てんいんさーん、てんいんさーん! お客様がお呼びです。ただいま参りますので、少々お待ちください。 |
え!!! 声で呼ぶの? アレクサが声で呼ぶの? |
そうなっちゃいますよね(笑)。声も出しますが、きちんと店員さん側にあるタブレット端末に通知が行っています。本当に通知が行ったか不安になるといけないので、このようになっています。あと「お前が呼ぶんかい!」っていうお笑い要素の意味もあります、せっかくしゃべれるし、居酒屋ですから(笑)。 |
本気でツッコんじゃいましたよ! |
注文はどのような感じでするんですか? |
まだ一杯目を飲んでいるのに注文ですか! |
編集部がお金を出してくれると聞いたので飲みます。めちゃくちゃ飲みます! 世の中には様々な美味しいお酒がありますが、一番美味しいお酒は人のお金で飲むお酒です! |
わかります! このAlexa(アレクサ)オーダー席の開発にあたり、社内でも実験したんですが、やはり現場での実証も大切です。ですので、弊社の社長にお金だけもらってここに飲みに来ていました、実験として。美味しいんですよね! |
ですよね! |
注文はお酒だけを頼むことができます。まずスマートスピーカーに「アレクサ、飲み物メニューを開いて」とウェイクワード(編集部注:スマートスピーカーを使う時に呼びかける言葉のこと)を言って、種類と数字、そして杯数を言ってください。種類などはメニューに書いてあります。 |
アレクサ、飲み物メニューを開いて。 |
はい、飲み物の種類と個数を教えてください。 |
日本酒の冷やの4番を1杯。 |
ご注文は紀土の冷やを一杯です。注文を確定する場合は以上で、とお伝えください。次のご注文をどうぞ。 |
以上で! |
これで頼めました! |
なんで数字で頼むんですか? |
番号にしている理由は複数あるのですが、聞き間違いを減らすことです。たとえば、レモンサワーとメロンサワーって人間でも聞き取りづらいですよね。似たような響きものものがあればあるほど聞き取りづらく、人間でも聞き返されるとイラっとする人がいるのに、機械だと余計にイラっとするんです。そこでこのようにしたわけです。 |
なるほど。番号なら間違いませんね。 |
あの、今更なんですが、そもそもなんでこのシステムを作ったんですか? |
もともとは弊社が“飲み二ケーションロボット”として、神田の「くろきん」という居酒屋に、卓上ロボットを使ってコミュニケーションを取れる仕組みをご提供していたんですよ。非常に評判が良くて、「news every」や「おはよう日本」でも特集にしていただいて、お店の集客にもつながりました。現在はシアトルのラーメン屋や居酒屋でも導入していただいています。そういう経緯があって、天空の月さんから「なにかできないか」とご相談を受けた時に、最初はSotaを導入しようという話になったんです。 |
なんでSotaなんですか? ロボットと言えば「Pepper」が有名じゃないですか! |
Pepperは居酒屋の一席に置くにはちょっと大きすぎるんですよね。一席埋まっちゃいますから。 |
確かにそうですね。 |
Sotaは小さくて卓上に置けるから場所を取らないんです。また、壊れにくいので居酒屋に置いてもリスクが低い。そこで天空の月にもSotaを提案していたんですが、その頃、スマートスピーカーが一般普及に向けて話題になっていたので、どうせならそれを使ったトライをしてみたいと。そこでこのアレクサオーダー席の開発に至ったんです。店長さんにお話を聞いたりして、注文を取ってくれると楽だと。もちろんできるだけ多くの注文が取れるといいと。しかし、食べ物だと商品を目で見て選びたいし、唐揚げの個数を変えて欲しいなどの変則的な注文も多いので、まだ難しい。そこで飲み物に絞ったわけです。 |
水割りとかお湯割りとかっていう注文には反応してくれるんですよね? |
そうです! なので、水割りを頼みたい場合は、芋の3番水割りで、と言ったら、メニュー表で3番が割り当てられている吉兆宝山が水割りで来るわけです。通常、焼酎を飲まれる方は吉兆宝山の水割りで、と頼みます。店員さんに頼むのとほぼ同じですよね。 |
全然関係ないんですが、私がすでに酔ってきてますわ! |
タブレット端末でよくない?
酔ってきたので聞いちゃうのですが、注文ってタブレット端末でよくないですか? |
よく言われます。SNSでも「スマホとかタブレットでいいじゃん」といった投稿を見かけましたし。我々としても散々実験したので、それはわかってるよ! と。スマホやタブレット端末でいい部分があるのはわかってます! |
やっぱりみんな思うんですね。 |
単純に注文のしやすさで比較すると、日本人向けではタブレット端末には勝てないと思うんですよ。ただ、頼むものが決まっているときにタブレット端末のメニューを開くと、サワーとかカクテルとか、目の前に選択肢がたくさん出てきて選ぶのに手間取るじゃないですか。メニューのページが多くて目当てのものを見つけるのにも時間がかかりますし。パネルを押しすぎちゃったりとかも。なので、頼むものが決まっているときはボイスUI(音声入力)の方が早いと思うんです。 |
確かに! タブレット端末は頼みたい商品がどこにあるのかわからなくてめちゃくちゃ探しますよね。 |
お店側のメンテナンスの利便性もあります。アレクサは音声で注文すればいいので、メニューに変更があってもその音声に対応する文字データの変更をする程度の修正で済むんですよ。タブレット端末のメニューは写真と文字がセットなので、写真撮影などをしないといけませんが、アレクサだと店員さんが素人でも文字を打つくらいならできる。将来的にその利便性は大きいと思います。 |
うん……(※酔ってこの辺からあまり話さなくなります) |
2020年以降に向けて、翻訳事業の需要が高まっています。アレクサはモバイルアプリで英語モードに切り替えると、英語の聞き取りができるんです。なので、今後は英語で注文できるアプリも作ろうとしていて。そのアプリが完成したら、海外からのお客さんが来たときに、英語が話せる店員さんがいなくても注文を受けられるようになります。 |
便利だね! |
アレクサに英語で話してもらって、タブレット端末に翻訳した内容が出せれば、英語がわからないスタッフでも何を聞かれているかわかるじゃないですか。お互い話せなくてもコミュニケーションが取れて、翻訳用のアイテムを買わなくても済みます。 |
なるほど!!!!!! |
さらに、日本酒とかワインなどはめっちゃ種類あるじゃないですか。飲んだことがないとどんな味なのかわからない。そういうときにアレクサに、八海山ってどんな味? とかと聞いて、答えてくれて、さらに「うんちく聴きますか?」と聞いてくれて、知ることができる。それに合う肴とかも教えてくれるといいですよね。 |
それは便利! 酔うと、まさに今だけど、文字を読みたくないだよねぇ。焦点が定まらないからぁ。音声で教えてくれるのは、ハッピー! |
だんだんタメ口になってきてますね! それだけ酔っていたら何を飲んでも味を感じない説もありますけどね。 |
現状でも、おすすめを聞くことはできます! |
ういぃーね! |
アレクサ、天空の月アプリを開いて。 |
はい、店員さんを呼びますか? それともお会計をしますか? おすすめなんかも聞けます。 |
おすすめ。 |
お酒であれば、日本酒ハイボールなんていかがでしょうか? お食事は日本酒に合わせて、お造り5種盛りが当店の自慢です。店員さんを呼んでご注文ください。店員さんを呼びますか? |
いいえ! |
呼ばないの! むくちゃん! |
この辺がタブレット端末との差別化ですね。翻訳とおすすめ。タブレットの場合、おすすめ商品はメニューの最初の1ページ目に表示させることくらいしかできないですが、音声なら薦め方にもバリエーションが出てきます。 |
将来的には「いい感じの!」って言ったら選んでくれる? |
将来的には可能性はありますね。お客さんの好みはなんですか? 揚げ物ですか? という感じで対話の中で注文できるようにはなるかもしれません。カウンターを挟んで店員さんと話している感じですね。 |
来てるぅ〜、未来、フチャークリエーチャー! |
今後はどうなるの?
今後はどうなる感じぃ? |
直近ですが、アレクサを経由した注文情報がお店の販売管理システムに反映されるようになります。現状、注文は担当の店員さんが持つiPadに表示されるようになっていて、それを店員さんが厨房に注文を通しています。それが今後は直接厨房に通るようになります。 |
店員さんの負担がさらになくなる! ビバ! |
今後の期待も含めてなんですが、いまは起動ワードが「アレクサ」ですけど、この席は太郎くん、こちらの席は花子ちゃんとか、今後は席ごとにスピーカーの名前を変えてみたいなと。あとは、急にべらんめぇ口調になるおっさんのようなキャラクターのスピーカーがいたらおもしろいのではないかなと思ってます。 |
ウイィ〜ね! いま私が注文しないのは、酔ってきて、彼女の名前がアレックスなのか、アレイザなのか、わからなくなってるからで、わかりやすい日本名かガッキーがいいなと思います! 何度も呼びたいから。 |
いま言った中に正解はないですね。アレクサです。 |
それそれぇ! |
注文の速度やラクさを考えるとタブレット端末でいいじゃんってなるんですけど、スマートスピーカーが勝てる点を伸ばすことに狙いを定めています。 |
アレクサにはアレクサの面白さがあるもんね! |
お客さんはどういう使い方をしているか、店員さんに聞いてみたんです。そしたら、アレクサが女性の声なので、酔っ払った人が「スリーサイズはいくつ?」とか聞くらしいんですよ。「わかりません」みたいな反応は返してくれるので。 |
アレクサ、スリーサイズ教えて! |
こんな説明が見つかりました、スリーサイズとは、バストまたは… |
いいかわし方するな! さすが! |
こういうことを同僚などに聞くと完全にセクハラになるのでよくないですが、機械相手で、お酒が入ると、つい色っぽい話を聞いてくれる需要がでてくるのかもしれないですね。女性のお客さんは星占いとかを聞いたりするそうです。 |
アレクサ本来の機能は残っているわけだもんね。プラス注文ができるわけで、めちゃ優秀! |
そうですね、あとは終電を聞いたり。たぶん自衛のために終電を聞く人にとってはすごく便利で。みんなの前で堂々と終電を聞いて、ほらそろそろでしょ、と言えるんですよ! |
その機能はなくそう! |
未来を感じた!
ということで、「Amazon Echo(アレクサ)」で注文を取る居酒屋に行った。未来を感じた。まだ聞き取りや、やり取りなどが完璧ということではないけれど、十分に注文できる。やり取りが完璧でないと感じた最大の理由は、私が酔っ払って呂律が回らなくなって、「アデグダー」と言ったら反応しなかったからだ。お酒を控えろ、という話でもある。
TEXT:地主 恵亮
PHOTO:ossie
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