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ドローンが社会に普及すれば、人々の暮らしはさらに便利になる

エアロセンス株式会社は、最先端のドローン、AI、クラウドで変革をもたらし、現実世界の様々な作業を自動化することで社会に貢献しています。

代表取締役社長の佐部浩太郎氏は、SONYでエンターテインメントロボットの研究開発・商品化を経験し「ワクワクするような空飛ぶロボットの新製品の開発を担いたい」という思いから、SONYとZMPより出資を受け、2015年にエアロセンス株式会社を設立しました。

日本では、少子高齢化に伴う労働人口の減少によって、農業や製造業だけでなく、社会的に重要なインフラの点検・測量などに携わる人材不足に悩む企業や自治体が増加しています。

このような現状を打破すべく、エアロセンス株式会社は、課題先進国日本で培ったソリューションを世界に浸透させ「ドローン技術で変革をもたらし、社会に貢献する」ことをミッションに掲げ、お客様のニーズに応えてきました。

今回は、エアロセンス株式会社の佐部社長に、産業用ドローンの活用事例、世界における日本のドローン業界のあり方、将来の展望などについてお話をお伺いしました。

ドローンで習得したデータをAIが分析することによって、世の中の生産性は劇的に上がる。

ドローンで習得したデータをAIが分析することによって、世の中の生産性は劇的に上がる。

ドローンは広く認知されている一方で、私たちの生活には馴染みがないように思います。御社ではどのような事業をされているのでしょうか?

弊社では、ドローンの販売、測量などによるデータ解析サービス、ソリューション開発の受託の3つの事業を展開しています。

ドローン周辺機器におけるハードウェアからソフトウェアまで一貫して開発し、企業や官公庁・自治体などお客様のニーズに合わせたサービスを提供できるところが強みです。

ドローンは観光など空撮のイメージが強いのですが、産業用のドローンはどのように活用されているのでしょうか?

産業用の中で最も大きなシェアを占めているのが農業です。特に農薬散布は、1980年代にヤマハさんが「ラジコンヘリコプター」と呼ばれる産業用無人ヘリコプターを開発したこともあり、世界を牽引してきました。

また、測量は、産業用ドローンのなかでも費用対効果が顕著な分野で、弊社では、ドローンの撮影画像と、GNSS機能を搭載した対空標識「エアロボマーカー」で取得した位置情報を画像解析クラウド「エアロボクラウド」で解析しています。

産業用のドローンはどのように活用されているのでしょうか?

さらに、建設や土木などの工事現場では、今まで測量会社に依頼していた測量をそれぞれの用途に応じてドローンをご利用いただくケースが増えてきました。

そして、鉄塔やトンネル、橋などインフラの点検では、市場としてはセグメント化されていますが、トータルの市場規模は非常に大きく、人が行うには危険が伴う場合や、広大な現場では非常に活用が期待されています。

ドローンで撮影した山間部の砂防堰堤ドローンで撮影した山間部の砂防堰堤

Googleで検索できる情報は1割以下と言われています。ドローンによって取得した情報の画期的な活用事例などはありますか?

50ヘクタールの現場を1日で測量した事例画像。50ヘクタールの現場を1日で測量した事例画像。2800枚の写真を6時間以内で解析し、全ての検証点で5cm以内の精度を誇る

ドローンを飛行させる際には必ず地図を使いますし、取得した情報も地図上で管理することから、ドローンと地理情報システム(GIS:Geographic Information System)は相性が良いと言われてきました。

今後、取得したデータは、地図だけでなく、コンピューター上にリアルな立体モデルを再現して活用していく、 BIM(ビルディング インフォメーション モデリング)の利用が加速していくでしょう。

ドローンで取得したデータをAIやロボットに読み込ませることで、今まで図面を介していた時間が大幅に短縮され、施工や保守運用業務における生産性向上も期待できるのではないでしょうか。

まずは過疎地でのドローン物流の実績をつくり、普及に貢献していきたい。

まずは過疎地でのドローン物流の実績をつくり、普及に貢献していきたい。 鳥取県で実施したドローンによる物流の実証実験

ドローンによる産業への可能性は無限に広がっていることがわかりました。物流に関してはいかがでしょうか?

弊社では、直近では2022年に鳥取県初の試みとして「災害時医療支援」を具体的に想定したドローンによる物流実証実験を行いました。

実験では、航続距離最長50km、最高速度100km/h、最大積載可能重量は1kg、業界初となる垂直離着陸型固定翼ドローン「エアロボウイング」が、迅速に医薬品や食料品を輸送することで有効性を実証しています。

災害時だけでなく、過疎地と都市部の物流をつなぐという意味でも、地元の方々から非常に喜んでいただきました。

災害時における物流が担保されているのは非常に心強いですね。日常的に都心部でベランダに商品が届くような時代はやってくるのでしょうか?

日常的に都心部でベランダに商品が届くような時代はやってくるのでしょうか?

2022年12月に「無人航空機レベル4」が解禁され、目視外飛行を第三者が立ち入る可能性のある有人地帯でも補助者なしでドローンが飛行できるようになりました。

今後、都市部でドローンを飛行させる際の安全面や費用対効果などの問題を解決できれば、そういった未来がやってくる可能性は十分にあるでしょう。

都市部における物流は非常に大切ですが、過疎地の郵便局では、数枚のハガキを届けるためにユニバーサルサービスとして甚大なコストをかけている地域も数多くあります。

まずは、過疎地での物流における課題を解決し、災害時における実績を積み重ねることで徐々に都市で実用化が進んで行くでしょう。

「地震大国日本」の避けて通れない被災時の課題にドローンが立ち向かう

少子高齢化にともなう過疎化での物流は必須課題だと思います。災害時におけるドローンの活用事例はありますか?

2020年7月の熊本県人吉市で発生した水害では、被害状況を迅速に把握し、保険金の支払いをスピーディーに行うための実証に、高速かつ長時間の撮影が可能な「エアロボウイング」が利用されています。

人吉市の球磨川流域は800ヘクタールと非常に広いのですが、1回あたり25分の飛行で約1,000枚の撮影、計4回の飛行で撮影を完了し、他社のドローンが240分かかっていた時間を大幅に短縮できました。

水害における保険金の支払いは、浸水高を測るだけのシンプルな調査ですが、被災したお客様とアポイントを取り、計測するという長時間の調査が必要になります。

ドローンの活用で、どのような災害が発生してもお客様をお待たせすることなく、早期に保険金をお支払いする態勢を構築できたという喜びの声をいただいています。

数年以内に発生が予測される南海トラフ地震や首都直下型地震など災害を想定した実証実験なども行われているのでしょうか?

荒川河川敷でエアロボウイングを使用した高速道路確認目的の実証実験荒川河川敷でエアロボウイングを使用した高速道路確認目的の実証実験

南海トラフ地震で津波の被害が予測されている愛媛県宇和島市では、交通が寸断されて、沿岸部の確認ができないという問題に対して、LTE通信に対応したエアロボウイングを使用し、沿岸部をまわって災害時の調査状況把握を行いました。

また、荒川河川敷では、災害発生時に河川や高速道路などの構造物の被害状況を確認し、迅速な状況把握と復旧計画につなげることも想定した実証実験を実施しました。

荒川河川上を飛行中に撮影した高速道路荒川河川上を飛行中に撮影した高速道路

長距離にわたる点検を安全に行うために、最長50kmの飛行が可能なエアロセンスのVTOL型ドローンの「エアロボウイング」が有効であることが認められ、首都圏の人口密集地でドローンの運航に成功したことで、今後の普及のきっかけとなる実績を作ることができました。

ドローン業界は深くて狭い、非常にやりがいのある業界。

ドローン業界は深くて狭い、非常にやりがいのある業界。

ドローンというと中国メーカーのプロダクトがかなり普及しているイメージがあります。御社が参入している分野において世界の競合の状況についてどのようにお考えですか?

確かに、中国製のドローンが国内でも世界的にもかなりのシェアを占めています。

日本は、ドローンをいかにビジネスに活用するかに重点を置いた開発によって優位性が持てるのではないでしょうか。

例えば、日本政府による「次世代空モビリティ政策室」では、ドローンによる新たな領域における技術の社会実装・産業振興を通じた社会課題の解決を推奨しています。

また、農林水産省による「農業DX構想」では農薬散布にドローンを活用する事例が紹介され、納入時の助成金も受けられますし、弊社の「スマート農業実証プロジェクト」では農業収益化に向けた実証実験も行っています。

さらに、近年では、経済安全保障の観点から、国の工事や重要なインフラに関しては国産のドローンを導入しようという機運が高まっていることもあり、測量分野に関しては我々のドローンに乗り換えるケースも増えていますので、こういった流れに乗っていけたらと思います。

ドローンの社会的な需要が高まっていますが、ドローンに従事する人材育成などはどのようにお考えでしょうか?

ドローンに従事する人材育成などはどのようにお考えでしょうか?

まず、ドローンを運用できる人が不足しています。本格的にドローンを普及させるのであれば、自治体の職員、物流であればドライバーに該当する人が当たり前のように操作できなければいけません。

そうは言っても、そこまで高いスキルは必要ないので、ドローンを操作できる人が増え、より普及すれば、ドローンを介した産業は急速に発展し世の中はさらに便利になると思います。

開発に関しても、最近はメカエンジニアが減少しているので、若い人を採用するのが厳しい状況が続いています。

Webエンジニアなどとは違って、深くて狭い分野ではありますが、非常にやりがいのある世界ですので、モノ作りが大好きな方と一緒に新たなイノベーションを起こしていけたらと考えています。

手術支援ロボット「ダビンチ」のようなドローンが生まれる日も近い。

さまざまな目的で活用されているエアロボウイングさまざまな目的で活用されているエアロボウイング

今後のビジネスの可能性や将来の展望はありますか?

通信事業者が携帯電話の上空利用を許可する制度が2020年12月に整備され、日本初のドローン向け「LTE上空利用プラン」の提供が開始されたことにより、上空での遠隔操作が円滑にできるようになりました。

山間部ではLTEの基地局は尾根沿いにあることが多く、電波が届きにくいイメージがある山奥でも上空では繋がり、ドローンを飛ばすことが十分可能です。

人が立ち入れないような山間部にある鉄塔やダムなどの点検をドローンで行ったり、送電線を大型ドローンで運搬するなど用途は限りなくあると思います。

危険な山岳地帯にヘリコプターを飛ばすための費用は何億円とかかりますし、操縦士さんの安全を考えるとドローンが果たす役割は非常に大きいのではないでしょうか。

現在、放水や吹き付けなど物理的なアクションは限られていますが、近い将来、手術支援ロボット「ダビンチ」のような高度な作業ができる日がやってくるかもしれません。

終わりに

佐部 浩太郎氏

key point

  • エアロセンス株式会社では社会課題を解決するため、主にドローンの販売、測量などによる情報解析サービス、ソリューション開発受託の3つの事業を展開している。
  • 世界的には中国メーカーが有名だが、日本は「次世代空モビリティ政策室」など政府の追い風を受け「ソリューション型」の開発が進んでいる。
  • ドローンによって取得されたデータは、GIS (ジオメトリックインフォメーションシステム)と相性が良く、地図情報だけでなくBIMへの活用が期待されている。
  • 鳥取県初の試みとして「災害時医療支援」を具体的に想定したドローンによる物流実証実験が行われ、「エアロボウイング」が災害時医療支援の有効性を証明した。
  • 2020年12月に日本初のドローン向け「LTE上空利用プラン」の提供が開始され、上空での遠隔操作が一層円滑になり、数多くのビジネスチャンスが生まれている。

いかがでしたでしょうか?

日本国内のドローンビジネスの市場規模は2022年度には前年度比34.3%増の3099億円に拡大し、2027年度には7933億円に達すると見込まれています。( 「ドローンビジネス調査報告書2022」インプレス総合研究所作)

少子高齢化による人口減少に歯止めがかからない日本では、労働人口が減少しており、人手不足だけでなく、高度経済成長期やバブル直後につくられた社会インフラの老朽化、過疎地の物流や巨大地震や洪水など災害時における迅速な対応など多くの課題を抱えています。

こうした社会背景から、さまざまな課題を解決する必要性が非常に大きくなるなかで、業界初となる垂直離着陸型固定翼ドローン「エアロボウイング」をはじめとするエアロセンス株式会社の高い技術は、大きなイノベーションをもたらし、社会に貢献することでしょう。

interviewee

佐部 浩太郎
エアロセンス株式会社 代表取締役社長 

東京大学大学院工学系専攻電気工学科修了。ソニー入社。 エンターテインメントロボットの開発に携わり、AIBOの商品化、QRIOの開発を経験する。その後、ロボット知能の基礎研究を経て、顔画像認識を始めとするAV/IT商品群のインテリジェント化をリードする。2015年よりZMPとソニーの合弁会社エアロセンスを立ち上げ、ドローンのソリューション事業化に挑む。2019年に代表取締役社長に就任。設立以来、多くの検証を重ねながら、社会を支えるためのドローンソリューション開発に注力。

PHOTO:iStock
TEXT:PreBell編集部

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