ユニクロがテック企業だと呼ばれる理由とは?アパレル企業のユニクロがテック企業だと言われる理由を徹底解説
日本最大のアパレル企業は、ユニクロやGUを手がける「ファーストリテーリング」だと言われています。
2023年8月期 第1四半期の決算サマリーによると、ファーストリテーリングの売上収益は7100億円とされています。
そのようなアパレル最大手のファーストリテーリングが運営するユニクロは、近年「テック企業」と呼ばれることがあります。
実際、IBMのパートナーなどを歴任したのち、現在ビジネスアナリストとして活躍する河合拓氏によると、「アパレル企業はテック企業となり、エンジニアが働く場となる」と述べました。
なぜアパレル企業が「テック企業」と呼ばれることになったのでしょうか?
この記事では、なぜアパレル企業であるユニクロがテック企業と言われるようになったのか、その理由について徹底解説していきます。
- ユニクロは今後アパレル企業でなく、テック企業になるとの予想がある
- 世界の多くのアパレル企業がデータを用いたマーケティングを行っている
- ユニクロは多額のDX投資を行っている
- 世界のアパレル企業が店舗向けのDXをおこなっており、ユニクロも追随する可能性が高い
目次
なぜアパレル企業であるユニクロが「テック企業」と呼ばれるようになったのでしょうか?
これには、大きく分けて3つの理由があるとされています。
・世界の多くのアパレル企業がデータドリブンのマーケティングを行なっている
・ユニクロはDXに対して多額の投資を行なっている
・すでに大手アパレル企業が店舗向けのDXを行っており、ユニクロも追随する可能性が高い
以下に詳しく解説していきます。
1つ目はユニクロが属するアパレル業界の多くがデータドリブンのマーケティングを行なっているためです。
アパレル業界の大手は中国のSHEINやH&M、ZARAです。
こういった企業はすでにAIやデータをフルに活用したデジタルマーケティングを行なっています。
たとえば、SHEINは中国国内に多数の中小工場を持っています。
その数は数千と言われており、これらの工場の残反や残品のデータは全てクラウド上で管理されています。
これらの在庫データはシンガポールに集められ、マーケティングのビッグデータと突き合わせてAIが解析を行います。
そして、世界中から集まってくる数千数万と言われている顧客からの注文を捌くことを実施しています。
ビジネスアナリストの河合拓氏が「アパレル企業はテック企業となり、エンジニアが働く場となる」と述べたように、このようにアパレル業界はAIやビッグデータが大きく活躍している分野になりつつあるとされています。
2つ目は、ユニクロはDX(デジタル・トランスフォーメーション)に対して多くの投資を行っているという点です。
DXとは、企業の活動(対外的なビジネスや内部の仕事等)をデジタル化する動きのことです。
現在様々な業界や企業がDXを実施しており、2020年時点での日本のDXの市場規模は約1兆円、2030年には5兆円に達すると言われています。
そんな中でもユニクロは多くのDX投資を行っています。
実際、工場での業務をDX化するため、数千億円単位のDXを2018年時点で行っています。
ここまでの額を投じているということは、デジタルに強い関心を持っていることが分かり、ユニクロの企業活動全体がデジタル化していく可能性が高いです。
実際、日本のユニクロのセルフレジでは、買い物かごから服を出さずにそのまま会計ができるような新しいシステムが導入されています。
このシステムは、小売業界全体で見ても初めて開発された技術です。
加えて、素材テクノロジーの点でも多くのテクノロジーが使われています。
ユニクロの主力商品であるヒートテック、夏用であればエアリズムといった商品には多くのテクノロジーが使われています。
例えば、エアリズムには「カチオン可染型ポリマー」と呼ばれるテクノロジーが使用されています。
これは化学メーカーの東レとの共同開発で実現したものです。
こうした共同開発には資金面、プロジェクト行程、人員確保等様々な課題が存在しています。
こうした課題を解決するにあたっては、資金面や人員確保に関する企業内部のシステムが必要になってきます。
したがって、ユニクロは単なる服を売る小売企業というよりも、エンジニアが多く働くテック企業となる可能性が高いと考えられています。
3つ目の理由は、他のアパレル企業の店舗向けDXを行っている点にあります。
ユニクロは小売業界の中でもかなり多くの店舗数を持っています。
2022年8月期時点で、ユニクロの店舗数は2394店舗で、ユニクロの運営母体のファーストリテーリングが運営する店舗であるGUも含めると、約2700店舗にもなります。
この数は他のアパレル大手と比べても、大きな差はありません。
たとえば、H&Mは約5000店舗、ZARAは約3000店舗を世界中に展開しています。
こうした中で、H&MやZARAは店舗販売でのデジタル化を急速に進めています。
例えば、ZARAを運営するInditex PLは1200億円のDX投資を店舗販売向けに行いました。
こうすることで、自社アプリ(店舗内で商品の場所を探す機能等を提供)やデジタル化に対応可能な大型店舗の出店強化を行っています。
H&MやZARAと同じような店舗数に、今後ユニクロが成長していくと仮定をすると、同じような形で店舗のデジタル化が進む可能性が高いです。
そうなると、DXを担うデジタル人材が現状よりも多く必要となってくるため、多くのエンジニアが働く場所になることが予想されます。
今後のアパレル業界は二極化すると考えられています。
現在、流通小売業界は生産性が低いこともあり、DXが急務と言われています。
ですが、DXには専門のコンサル業者への依頼やエンジニアへの高い給与等で高額な費用がかかります。
元々収益が高い業界ではないアパレル業界で、そのような高額な費用を払えるのは、ユニクロといった大企業に限られてきます。
ということは、DX費用が払えない保守的な企業やテック企業の傘下に入れないアパレル企業は今後縮小する可能性が高いと考えられます。
本来アパレル企業であったユニクロは、今後の事業拡大に併せて多くのエンジニアが働くテック企業となることが予想されています。
すでに世界のアパレル企業(H&MやZARA等)はAIやビックデータを使ったマーケティングを実施しており、多くのエンジニアが働く場所となっています。
H&MやZARAと大きく違わない店舗数を持ち、すでに多くのDX投資を行っているユニクロは、今後エンジニアが働く大きなテック企業となる可能性が高いです。
一方で、利益率の高くない小売業界でDX投資を出来る企業は限られており、DX投資が出来ない企業は今後縮小していく可能性があります。
ぜひ今後はニュースをチェックする際、アパレル業界の流れ、ユニクロの今後のDX戦略についても注目をしてみてください。
PHOTO:iStock
TEXT:PreBell編集部
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