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​ジョージ・オーウェルが警告した1984はどのような世界だった?

最近「SNS疲れ」といった言葉をよく聞くようになってきました。

SNS上に投稿されている他人の姿を見ることで、自分自身と比較してしまい、精神的に疲れてしまう現象を指しています。

加えて、こういったネット企業は個人の情報(ネットの閲覧履歴や年齢や性別、住んでいるところ等)を利用して、広告を常にうってきます。

こうした広告もSNS疲れを助長させるという考えもあります。

私たちは、個人の情報が吸い上げられ、他人との比較に常に晒されている社会に生きています。

こうした社会をインターネットが発達する前に予言していた人がいました。

今回は、ジョージ・オーウェルが1949年に警告した1984の世界について徹底解説していきます。

  • 『1984』とはジョージ・オーウェルが1940年代後半に執筆した小説
  • その小説では、監視社会とナショナリズムの拡大が表現されている
  • AIやビッグデータに支配される現代世界でも、この小説の世界が再現されつつある
ジョージ・オーウェル記事のポイント

ジョージ・オーウェルの『1984』とは

ジョージ・オーウェルの『1984』とは

『1984』とは、全体主義の監視社会を描いた「ディストピア小説」と分類される小説です。

音楽や文学、哲学等様々な分野に影響を与えた作品です。

その大まかなあらすじを、以下三つに分けて解説していきます。

・ビッグ・ブラザー政権によって常に監視されている
・市民を3つの階層に分けている
・仮想的に対する憎悪

1つ目の大きなあらすじが「ビッグ・ブラザー政権」によって常に監視されている社会です。

1984の世界では、世界はオセアニア、ユーラシア、イースタシアの三つの大きな国によって統治されています。

ジョージ・オーウェルの『1984』とは

主人公はウィンストンで、彼はオセアニアに暮らしています。

オセアニア国は「ビッグ・ブラザー」という政権によって統治された、一党独裁の国家です。

ビッグ・ブラザーは、市民の言語や思想を統制しようと、常にテレスクリーンと呼ばれる送受信機に監視させています。

街には「ビッグ・ブラザーが君を見ている」というポスターがそこら中に貼られ、そのポスター自体にも監視機能が付いて監視をするような徹底ぶりです。

少しでも「ビッグ・ブラザー」の意にそぐわないことをすると「思考警察」に逮捕されます。

拷問の末に、その人間は初めから存在しなかったことにされるといった社会の物語です。

市民の階層分け

2つ目は「市民の階層分け」です。

ビッグ・ブラザーは市民を3階層に分けて管理しています。

1つ目が上層と呼ばれる、党の中枢などの位の高い政治家のことです。

2つ目が中間層と呼ばれる、党に所属はしているが位の高くない職員で、3つ目が下層と呼ばれる貧困層です。

下層は「労働者プロール」と呼ばれ、貧困街で自由に生活しています。

労働者プロールは権力に盲目的に従い、その階級から脱却できないとされています。

反乱を起こす心配もないため、下層集団は監視するに値しない層です。

ですが、中間層には教養があるため、上層の転覆を企む可能性があります。

仮想の敵に対する憎悪

そのためビッグ・ブラザーは、常に中間層のみを監視し、少しでも党にそぐわない行動をすれば反逆罪で逮捕するという政治を行います。

3つ目が「仮想の敵に対する憎悪」です

ビック・ブラザーは他国を敵に仕立て、その国に対して憎悪を持つように国民をコントロールしていきます。

その方法は、敵国は戦争相手のユーラシアとして、常に戦況は優勢であり、ユーラシアの軍隊を撃退したと報道をすることです。

すると、自国の国民はその勝利の報道に熱狂して、ナショナリズム的な忠誠心を段々と強めるように仕向けて行きます。

また、もう一人「ゴールドスタイン」という反政府組織の人物を敵として報道をしていきます。

その方法は、市民に月一回、ゴールドスタインがいかに政府に対して悪事を働いてきたかについてのビデオを見せることです。

こういったことを通じて、「ビッグ・ブラザー」による独裁を強めていきます。

ジョージ・オーウェルが警告した世界

ジョージ・オーウェルが警告した世界

このような独裁国家の小説を通じて、ジョージ・オーウェルはどのような世界を警告してきたのでしょうか?

・監視社会
・ナショナリズムの拡大

以下に詳しく解説していきます。

1.監視社会

1つ目が「監視社会」です。

1984の作品中には、ビッグ・ブラザーが常に市民のことを監視するシーンが出てきます。

そのような社会では、深く考えずに政府の提示した法律を順守して生きていれば、大きな障害となることはありません。

逆に言えば、少しでも規律違反や法律違反をすると、すぐに制裁の対象となります。

監視社会

ジョージ・オーウェルはこういった監視社会が現実世界でも出てくることを予想しています。

実際にこの小説が執筆された戦後すぐの時代には、ソ連を中心とした社会主義が勢力を強めており、「監視社会」が実現されつつありました。

また、この時の社会主義国家の影響が強く残っている北朝鮮といった国では、ジョージ・オーウェルの言っていた監視社会が現実のものとなっています。

2.ナショナリズムの拡大

2.ナショナリズムの拡大

2つ目は、「ナショナリズムの拡大」です。

1984では市民を3階層に分けて支配するシーンが登場していました。

ジョージ・オーウェルは、数百や数千、数万といった数の個人を一つのレッテルに分けて区別する習慣を「ナショナリズム」として定義をしています。

こういった「ナショナリズム」は『1984』が執筆された1940年代後半から常に実現されてきました。

冷戦時代には、「民主主義の国の人」や「社会主義の国の人」を何億人の単位で区別するということが行われていきました。

現代でも、何かしらの戦争や闘争が起こるたびに「敵国の人」、「味方国の人」の区別がされています。

このような「ナショナリズム」の拡大がジョージ・オーウェルの警告した世界の一つでした。

ジョージ・オーウェルが警告した世界と現代世界の共通

ジョージ・オーウェルが警告した世界と現代世界の共通

ジョージ・オーウェルが戦後すぐの時代に警告した「監視社会」と「ナショナリズム」は現代世界でも起きています。

その中で代表的なものを2つ紹介します。

・AIとビッグデータによる監視社会
・世界の分断

以下に詳しく解説していきます。

1.AIとビッグデータによる監視社会

1.AIとビッグデータによる監視社会

1つ目が、AIとビッグデータによる監視社会です。

ジョージ・オーウェルが警告をしていた監視社会は、昨今のAIとビッグデータの潮流により実現されつつあります。

実際、GAFAMは個人のネットでの行動を監視して、その人に合った広告等をうつ戦略を採用しています。

このようにSNSを使う余暇の時間が監視されているだけでなく、仕事の時間でも監視がされるようになってきました。

コロナ禍ではリモートワークが普及して、仕事と私生活の境界線が曖昧になっている労働者が多数存在します。

ジョージ・オーウェルが予言していた世界は、仕事と私生活両方で他人の目の監視が入るようになる世界でした。

そういった流れは、AIとビッグデータにより実現されつつあります。

2.世界の分断

2.世界の分断

2つ目が世界の分断です。

ジョージ・オーウェルの世界では、被支配層階級が敵国や反政府人物に関してのビデオを見せられることで、憎悪を高める描写がありました。

これは現在のSNS社会で実現されつつあります。

2022年から始まったウクライナとロシアの戦争では、SNSを使ってお互いの憎悪を高めるような映像がSNS上で流出され、人々がそれらを見て戦争が行われていました。

日本でも、韓国や中国といった隣国の憎悪を煽るような映像が度々SNS上で見かけられます。

このような形で、ある特定の国の人を「敵国の人」と結びつけるナショナリズムが起きつつあります。

SNSの世界では、ジョージ・オーウェルの警告した「ナショナリズム」の世界はすでに実現されつつあります。

今後の世界

今後の世界

今後の世界は、ジョージ・オーウェルが警告した世界により近づいていく可能性があります。

その理由の1つが、デバイスのさらなる進化です。

近年では、ほとんどの人がスマートフォンやタブレット、スマートウォッチといったデバイスを使用しています。

ですが、今後はもっと身近な形でデバイスが進化していくことが予想されています。

スマートグラスは既に開発されている上に、体の中に埋め込むコンタクトレンズ等の形のデバイスも今後出てくることが予想されています。

そうすると、日常生活の全てがデバイスに触れる機会となります。

こうしたデバイスの使用履歴等のビッグデータを使ったビジネスが出てくることも予想されており、日常生活の全てが監視の対象となります。

現在では体とデバイスは離れていますので、デバイスから離れれば監視から逃れることも出来ます。

ですが、体とデバイスがほぼ一体の形になることで、監視社会はより進むと予想が出来ます。

まとめ

監視社会とナショナリズムの拡大した社会は、実現されつつある

ジョージ・オーウェルは1940年代後半に『1984』という小説を執筆しました。

その小説の中で、監視社会とナショナリズムの拡大した社会が描かれています。

この社会は、現代のAIやビッグデータで実現されつつある社会です。

今後新たなテクノロジーの発展がさらに進んでいきますが、このような社会学的、哲学的な観点からもぜひ注視して見てみてください。

PHOTO:iStock
TEXT:PreBell編集部

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