シリコンバレー銀行破綻。今後のシリコンバレーのスタートアップはどうなっていく?
2023年3月、シリコンバレーを拠点とするシリコンバレー銀行が突然破綻したというニュースがありました。
このニュースは世界中の投資家、起業家、そしてテクノロジー業界全体に衝撃を与えました。
シリコンバレーは世界的に有名なテクノロジーの拠点であり、多くのスタートアップ企業が存在しています。
この銀行破綻がシリコンバレーのスタートアップ企業にどのような影響を与えるか、そして将来的にはどのように変化する可能性があるかについて徹底解説していきます。
- シリコンバレー銀行 (Silicon Valley Bank) は、アメリカ合衆国カリフォルニア州に本社を置く銀行で、主にテクノロジー業界に特化した金融サービスを提供していた
- 2023年3月10日、シリコンバレー銀行は経営破綻した
- 様々な理由はあるが、主な理由はテクノロジー産業の不振、債券投資の損失等が考えられている
- 今後のスタートアップでは、資金調達が困難になる、大きな投資を控える可能性がある、求められる人材が変化する等の影響があると考えられる
目次
まず初めに、シリコンバレー銀行(Silicon Valley Bank) が何かについて解説をしてきます。
シリコンバレー銀行 (Silicon Valley Bank) は、アメリカ合衆国カリフォルニア州に本社を置く銀行で、主にテクノロジー業界に特化した金融サービスを提供していました。
シリコンバレー銀行は、1983年に設立された銀行です。
シリコンバレー地域に拠点を持つスタートアップ企業やベンチャーキャピタルなどに融資を提供していたことで知られています。
また、国際送金や為替取引、資金調達支援なども行っており、グローバルに展開するテクノロジー企業にもサービスを提供していました。
そのため、イギリス、中国、インド、イスラエル、ドイツなど世界各地に拠点を持っていたグローバルな金融機関でした。
シリコンバレー銀行は2023年3月10日に経営破綻をしました。
なぜそのようなグローバルな銀行が破綻をしたのでしょうか?
その理由は以下2つほどあるとされています。
・テクノロジー産業の不振
・景気縮小による債券投資の損失
以下に詳しく解説していきます。
1つ目の理由は、テクノロジー産業の不振です。
2010年以降、右肩成長を見せてきたGAFAMを含むIT業界全体の収益が下がりました。
実際、2022年のGoogleやAmazonの株価が20%以上下がったとされています。
理由は、IT企業が依存している広告費用の減少等とされています。
この影響はシリコンバレーのIT企業にも影響があり、収益が全体的に下がることがありました。
このことから、シリコンバレー銀行の顧客は主にシリコンバレーに拠点を置くテクノロジー企業だといえます。
銀行のビジネスモデルは、預金者から集めたお金を企業等に貸し出し、その金利の差額で利益を上げるというものです。
もし貸し出した先の企業の業績が下がり、貸したお金が回収できないと「貸し倒れ」になり大きな損失につながることがあります。
シリコンバレーを含むIT業界全体で収益が下がることにより、シリコンバレー銀行の収益が下がったと考えられます。
2つ目の特徴が、景気縮小による利益の縮小です。
コロナ禍に入ってから、世界全体で景気が下がりました。
実際、2022年には世界のトップ企業とされていたGAFAMも株価が20%以上下がったとされています。
また、2023年に入ってマッキンゼーやKPMG、アクセンチュアといったテクノロジーに関わるコンサル企業も多くの人員削減を行っています。
こういった形で各社が支出を抑えている中で、他社の債券や国債を保有しているシリコンバレー銀行は、「含み損」を抱えることになりました。
含み損とは、持っている債券や国債の価値が下がることで、実質的に会社の資産価値が下がることです。
こういった債券や国債の価値の低下が、シリコンバレー銀行の破綻の理由の一つであるとされています。
シリコンバレーのスタートアップを顧客にしていたシリコンバレー銀行が破綻したことにより、スタートアップに様々な影響があります。
以下3つの点に絞って解説をしていきます。
・資金調達が困難になる
・スタートアップが積極的な大きい投資を控える可能性がある
・スタートアップで求められる人材が変化する
まず、スタートアップ企業にとっては資金調達が難しくなる可能性があります。
シリコンバレー銀行はスタートアップにとって非常に重要な資金調達の手段の一つであり、多くの企業が融資を受けていました。
しかし、シリコンバレー銀行破綻により、融資が受けられなくなりました。
したがって、スタートアップ企業は他の金融機関からの融資を受ける必要があります。
しかし、一度シリコンバレー銀行で貸し倒れになった経歴があると、他の金融機関はスタートアップ企業に融資を行う際には慎重になる可能性が高いです。
このことから、より高い金利や保証金を求める可能性があります。
そのため、スタートアップ企業はより資金調達が困難な状況に陥る可能性があります。
2点目は、積極的な投資を控える可能性があるという点です。
今まで、「テクノロジー系のスタートアップ」というと未来の成長が見えやすいものでした。
したがって、銀行からの融資等も他の業種に比べて引きやすく、積極的な大きな事業投資もしやすい状況でした。
ですが、今後銀行が事業融資を出し渋ったり、出したとしても高い金利や保証金等を要求する可能性があります。
そうなると、事業投資を少しずつおこなうスモールスタート等で事業を行っていく可能性があると、ハーバードビジネスレビューの記事は分析をしています。
以前のような大きな事業投資が無くなると、成長のスピードが鈍化する可能性が高いです。
今後は資金マネジメント職が重要になる可能性が高いです。
今までのテクノロジー企業では、大きな負債等を抱えても事業の利益からすぐに返せることが見込まれていました。
そのため、負債を管理する会計系の職のニーズが薄い面がありました。
それよりも、テクノロジー系の経験のあるITエンジニアやコンサルタント、研究職といった人材に投資をする方が合理的でした。
ですが、今後スタートアップ企業はより資金調達が困難な状況に陥る可能性が高いです。
このような状況だと、資金管理や投資判断をする会計の専門職のニーズが高まるとハーバードビジネスレビューの記事は分析をしています。
シリコンバレー銀行とは、シリコンバレーのテクノロジー企業に積極的に投資をしていた金融機関です。
テクノロジー全体の景気後退、持っている債券や国債の含み損が主な要因で2023年3月10日倒産をしたとされています。
このことから、シリコンバレーのスタートアップで、資金調達が難しくなったり、会計系の仕事が求められるようになったり、様々な影響があります。
2023年4月現時点では、日本経済に与える影響は限定的と考えられています。
ですが、今後影響がでてくる可能性もあります。
今後、経済関連のニュースをチェックする際には、シリコンバレー銀行やその影響についてもぜひ同時にチェックをしてみてください。
PHOTO:iStock
TEXT:PreBell編集部
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