TSMCってどんな会社?会社の事業や熊本に工場を作る理由を徹底解説| Prebell
とある台湾の企業が熊本県に世界でも最大レベルの工場を作ったというニュースを聞いたことがあるでしょうか?
その台湾の会社は、台湾の半導体メーカーであるTSMCです。
ソニーセミコンダクタソリューションズと協業し、熊本県に新工場を建設しました。
設備投資額は約1兆円にのぼるとされています。
自動車部品大手の会社が新たに約400億円を出資することも明らかになりました。
このような大きな投資を行っているTSMCと呼ばれる会社について解説していきます。
- TSMCは他社で設計された半導体を製造する、台湾の半導体受託製造メーカーであり、時価総額は約63兆円の超グローバル企業
- TSMCには高い利益率、技術力、グローバルネットワークといった強みが存在する
- 熊本へ工場を作った背景には、「熊本の豊富な水資源」、「半導体の企業が集中している」といった背景が存在する
TSMCとは「Taiwan Semiconductor Manufacturing Company」の頭文字を取った名前です。
他社で設計された半導体を製造する、台湾の半導体受託製造メーカーです。
時価総額はおよそ63兆円のグローバル大企業です。
ライバル会社である、アメリカの「Intel」や韓国の「サムスン」より時価総額よりも大きな会社とされています。
日本企業の時価総額トップの会社は「トヨタ」ですが、トヨタの時価総額は23兆円であり、その2倍以上の時価総額を誇っています。
TSMCをこのようなグローバルの大企業にしたのには、以下3つの強みがあるためです。
- 高い技術力
- 営業利益率の高いビジネスモデル
- グローバルネットワーク
以下に詳しく解説していきます。
TSMCには世界最高レベルの技術力があります。
半導体の性能を決めるのは、「回路線幅」です。
半導体上にはいくつもの回路が存在しますが、その回路線の間の幅が狭ければ、多くの回路を搭載できます。
そのため、「回路線幅」が狭ければ、性能をあげやすくなります。
TSMCの半導体は、この回路線幅の技術が世界トップクラスとされています。
TSMCは、現時点で5nm(5ミリメートルの100万の1、タンパク質や細胞よりも小さい)プロセスの半導体の量産を実施しており、これができるのはTSMCのみとされています。
そのため、高い性能を持った半導体が必要なメーカーは、TSMCに頼らざるを得なくなります。
そのメーカーの一つにAppleがあります。
AppleはTSMCにとって大きなクライアントであり、2021年製造の5nm半導体の50%以上がAppleに納品されています。
私たちが普段使っているApple製品である、iPhoneやMacbookといったApple製品にも多く使用されている半導体メーカーです。
非常に高い営業利益もTSMCの強みの1つです。
TSMCが発表した2021年7-9月期の決算では、売上高営業利益率は40%超となっています。
通常の製造業の利益率の目安が5%程度であると考えると、どれほど高い利益率を誇っているかが分かるでしょう。
この理由の1つが、上記で解説したTSMCの高水準な技術であると考えられます。
どのメーカーもTSMCの高水準の品質を強く信頼しており、数多くの注文を発注しています。
こういった状況であれば、TSMCが値上げをしたとしても注文が来る形になります。
値上げをして多くの注文を受けているという状況を作れば、「価格相応の高水準な品質がある」と新規の顧客にも伝わりやすくなります。
3つ目のTSMCの強みは、世界中の半導体メーカーとのネットワークです。
TSMCと取引をする半導体メーカーは世界でおよそ500社以上あると言われています。
そのため、TSMCはグローバルの市場の流れを分析することが可能です。
グローバルの市場の流れを把握することができるというのは、需要の高い市場へ、リターンが大きい投資をすることが可能であるということです。
通常こういった市場調査や投資判断は、高額なフィーを払ってコンサルティング会社等に依頼することが多いです。
ですが、TSMCはそういった外部企業に依頼せずとも市場の流れを分析することが可能になっています。
こういったポジションにいること自体が、TSMCにとっての大きな強みになっています。
このようなグローバル企業であるTSMCの熊本進出の理由はどういったものなのでしょうか?
多くの理由があるとされていますが、以下2つに絞って解説をしていきます。
- 熊本の豊富な水資源
- 半導体の企業が集中しているため
1つ目の理由は、熊本の豊富な水資源とされています。
半導体製造には、可能な限り不純物の少ない水が必要となる工程があります。
ですが、台湾は干ばつが起きるほどの水不足に悩まされており、台湾と地理的に近く水資源が豊富な場所が必要でした。
こういった中で、台湾から直行便で2時間半、距離としては1400キロ程度しか離れていない熊本が注目されました。
熊本は生活用水の8割が地下水であり、水道水の100%が地下水で精製されています。
さらに、環境省の「名水百選」にも選ばれている水源もあり、半導体作成の豊富な水の供給が可能です。
こういった背景もあり、熊本が新工場の場所として選ばれました。
2点目は、半導体の企業が集中しているという点です。
九州地方、特に北部は半導体生産拠点として「シリコンアイランド」と呼ばれていた背景があります。
そのため、現在でも多くの半導体の企業が工場や事務所を設置しています。
今回、TSMCが九州進出にあたってサポートをしているソニーグループの企業についても、福岡に存在します。
こういった背景もTSMCの熊本の進出を後押ししています。
TSMCは台湾発のグローバル半導体メーカーです。
台湾の企業といわれて、イメージをする大企業はあまりないかもしれません。
ですが、TSMCは日本最大の企業のトヨタの2倍以上の時価総額がある大企業です。
日本人に人気のiPhoneといったApple製品にもTSMCの半導体が多く使用されています。
TSMCは熊本に工場を作り、日本で半導体の製造を開始することになりました。
半導体メーカーは一般消費者にはあまりなじみのないものですが、昨今のAIの進化等を裏で支えている重要な技術です。
ぜひ今後ニュースを見る際には、こういった企業の動向もチェックしてみてください。
PHOTO:iStock
TEXT:PreBell編集部
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