リニア新幹線に使われているテクノロジーは何か?最新テクノロジーを徹底解説
日本国内で出張が多い仕事をしていたり、旅行をよくしていると、新幹線に乗ることが多いかと思います。
現在、新幹線で東京新大阪間を行き来すると、最速で2時間20分程度かかります。
今後開発されるリニア新幹線を使用すると、所要時間が圧倒的に短くなります。
最速で2時間半近く程度かかっていた東京新大阪の往復でも、1時間弱でいけるようになるとの試算があります。
このスピードを実現するためには、様々な最新技術が使われています。
その最新技術がどんなものがあるのか、今回の記事では解説をしていきます。
- リニア新幹線には現行の新幹線に搭載されていない様々な最新技術が使われている
- リニア新幹線の核となる磁石は、-196度程度まで冷却をする「スーパーコンダクティング磁石」の技術が使用されている
- 現行の新幹線の約2倍のスピードで走るリニア新幹線には、最新のブレーキシステムや高速ネットワークが搭載される見込み
リニア新幹線は、日本の鉄道技術の最先端を代表する存在です。
その速度と運転時の社内の静かさは、多くの人々から注目を浴びています。
リニア新幹線の速度は約500キロとされており、現行の新幹線の約2倍のスピードで走ることができます。
したがって、現在最速で2時間半近く程度かかっていた東京新大阪の往復が、約半分の1時間弱でいけるようになるとの試算があります。
本記事では、こういった静かさと速さを両立するリニア新幹線に使われている最新の技術について、詳しく解説していきます。
リニア新幹線では数多くの最新技術が使われていますが、メインで使われている技術は以下の5つです。
・磁気浮上方式
・超電導現象
・スーパーコンダクティング磁石
・制御システムとセーフティー
・高速通信ネットワーク
以下に詳しく解説していきます。
リニア新幹線の最も特徴的な特徴は、磁気浮上方式です。
これは、列車と線路の間に磁力を発生させて車両を浮上させて、列車線路を接触することなく高速で走行する仕組みです。
今までの新幹線は通常の列車と同じように車輪を使って走るものでした。
ですが、リニア新幹線は加速のみを車輪で行い、ある程度の速度に達すると車両を浮上させて走らせます。
浮上させる際に使われるのが、「磁気」です。
磁石にはN極とS極がありますが、同じ極を合わせるとお互いに反発します。
それと同じ仕組みで、車体と地面に設置した磁石の極を反対にすることで、車体を浮かすことが出来ます。
これを「磁気浮上方式」といいます。
こうすることで、空気抵抗や鉄輪と線路の摩擦をほぼゼロとすることが可能になります。
したがって、通常の新幹線の2倍近い高速運転が可能です。
メインで使われている技術のうち2つ目は、「超電導現象」です。
超電導現象を説明する前に、「電磁石」について説明をしていきます。
リニア新幹線は、「電磁石」を使って運行されています。
小中学校で電気を流した時にだけ磁場が発生する磁石の実験をしたかと思いますが、これと同じ原理です。
電磁石を使った運行には、「電磁浮上方式」と「超電導磁気浮上方式」の二つがあります。
電磁浮上方式とは、通常の電磁石を使って車体を浮かせる方式です。リニア新幹線はこちらの方法は採用していません。
もう一つの超電導磁気浮上方式が、「超電導現象」を利用した浮上方式です。
「超電導現象」とは、ある物質を一定温度に冷やしたとき、電気抵抗がゼロになる現象を超電導現象といいます。
電気抵抗とは、物質の中で流れている抵抗のことです。
通常の電磁石であれば、電磁石の中に抵抗があるので、電気を流すとある程度電気が弱まってしまいます。
電磁石を可能な限り冷やして超電導現象を使うと、この電気抵抗がゼロになるので、より多くの電力が流れて強力な磁場が発生します。
現在、東海道新幹線の延伸区間である東京から名古屋までのリニア中央新幹線では、超電導磁気浮上方式が採用される予定です。
リニア新幹線の浮上と前進には、スーパーコンダクティング磁石技術が使用されています。
スーパーコンダクティング磁石は、先ほどの「超電導磁気」を利用できる特別な電磁石です。
通常の電磁石では使えないような、非常に低い温度に冷やすことで強力な磁力を発生させることができます。
リニア新幹線で使用されているスーパーコンダクティング磁石は約-196℃まで冷却されます。
これにより、大きな浮上力や推進力を生み出すことができます。
この技術によって、リニア新幹線は浮上しながら前進するため、地上からの摩擦を大幅に軽減することができます。
そのため、スーパーコンダクティング磁石技術は、高速での走行を実現するために一番重要な要素といえます。
リニア新幹線の運行には、高度な制御システムとセーフティーが不可欠です。
安全性を担保する一つの仕組みが、ブレーキシステムです。
リニア新幹線の運行には、現行の新幹線よりも高性能なブレーキシステムが搭載される予定です。
具体的には、2つのブレーキシステムが導入されています。
通常時に使用されるのが、「電力回生ブレーキ」です。
リニアモーターを発電機として働かせることで減速させるブレーキで、電気自動車のブレーキにも使われています。
もう2つが、「車輪ディスクブレーキ」と「空力ブレーキ」です。
車輪ディスクブレーキは、何らかの障害で電力でのブレーキを使うことが出来なくなった場合、通常の車のように車輪で減速します。
もう一つは、屋根から板を出して空気抵抗を増加させて減速をさせる「空力ブレーキ」が使われます。
これら合計3つのブレーキシステムを使って、高い安全性が担保されています。
5つ目は、高速でも使用できるネットワークです。
通常の新幹線の約2倍のスピードで巡行することが予定されているリニア新幹線では、それを支えるために高速のネットワークが必要不可欠です。
それを見越して、NICT(情報通信研究機構)は2018年時点で既に実験に成功しています。
NICTは2018年、時速500kmで移動するリニア新幹線などで、20Gbpsの通信を可能にする要素技術を開発し、その実験に成功したことを発表しています。
20Gbpsの通信は、通常の家庭のネットワークの平均70Mbpsの約300倍程度の高速通信です。
こういった技術を使って、高速で運行するリニア新幹線の情報システムを支えます。
磁気浮上方式やスーパーコンダクティング磁石技術、高速インターネット等の最先端の技術がリニア新幹線には使用されています。
こういった技術により、長距離を短時間で移動することができ、安全な乗車体験が提供されています。
さらに、ここには書かれていないような高度な制御システム、IoT技術、データ解析なども活用され、運行効率やメンテナンスの最適化に貢献しています。
2023年6月時点で、リニア新幹線は品川-名古屋間にて2027年の開業を目指して研究と工事を進めています。
リニア新幹線の最新テクノロジーは、日本の鉄道技術の先進性と創造性を象徴しており、今後もさらなる進化が期待されます。
PHOTO:iStock
TEXT:PreBell編集部
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