グラミー賞に新ルール、AI作品は受賞対象外
アメリカ音楽界で最も栄誉ある賞だとされるグラミー賞。主催団体のザ・レコーディング・アカデミーは6月16日、受賞の対象は「人間のクリエイターのみ」だとする新ルールを発表した。2024年に開催される第66回グラミー賞から適用される。
米新興オープンAIが開発した対話型AI(人工知能)「Chat(チャット)GPT」をはじめとするAIは、あらゆる業界で議論の的になっている。生成AIは簡単な指示を入力すれば、文章はもちろん、プログラミングや音楽、画像までも作成することができる。
しかし、生成AIの基盤となる大規模言語モデル(LLM)は膨大なデータを学習する仕組みを持っており、著作権の侵害などの問題が指摘されている。グラミー賞はこうした懸念に応え、AIを規制する新たなルールを規定した。
新ルールには「人間のクリエイターだけがグラミー賞の選考にエントリーし、受賞する資格がある」と明記した。生成AIのみで作成された音楽は受賞対象外とされた。
一方、AIの関与を全て排除する訳ではない。生成AIが作成した素材を用いて、人間が制作した音楽は受賞の対象となる。ただし、この場合も賞は人間のみに与えられる。
同団体の最高経営責任者(CEO)のハーベイ・メイソン・ジュニア氏は「AIは間違いなく、私たちの業界の将来に関与することになる」とグラミー賞の公式サイトに投稿した。現時点では、「AIの歌声やAIの楽器演奏がある場合は検討対象とする」としながらも、作詞作曲やパフォーマンスの部門では人間が主体でなければならないという方針を明らかにした。
AIの活用が広がる一方で規制を求める声も
音楽業界ではAIの活用が広がる。元ビートルズのポール・マッカートニー氏はAIを用いて、ビートルズの未完成曲を完成させると明らかにした。今年4月には、AIによって作成された有名アーティストのコラボ曲が人気を博した。
一方で、規制を求める声も多い。AIが作成した曲は著作権の侵害に当たるとして、国際的な音楽企業であるユニバーサルミュージックグループが音楽ストリーミングサービスに対し、AIが作成した音楽の規制を要請した。映画の脚本業界でもAIの使用を懸念し、ハリウッドで大規模なストライキを起こしている。
【関連リンク】
・グラミー賞「受賞対象は人間のクリエーターのみ」AIは対象外(NHK)
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20230618/k10014102711000.html
TEXT:PreBell編集部
PHOTO:iStock
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