AI時代の新たな人材戦略
AI技術の進化に伴い、企業は人間の労働力からAIへの置き換えを進めていく傾向にあることが明らかになってきた。米国の大企業76%が今後1年以内にAIの活用を検討しており、既に55%が過去12ヶ月で人間の労働力をAIに置き換えていると調査結果が示している。
企業がAIへの移行を加速させる主な理由は人件費削減だけではない。むしろ、より高度なスキルと能力を持つ人材を確保し、生産性の向上を図りたいという経営戦略的な動機が大きいようだ。
マッキンゼーの報告書によると、生産性向上とともに、医療やSTEM分野(Science(科学)、Technology(技術)、Engineering(工学)、Mathematics(数学)の頭文字をとった言葉)などでの新規雇用創出が期待されているものの、事務職や販売職などの伝統的な職種では大幅な人員削減が予想されている。
つまり、企業は中間層の職が大幅に減少する一方で、高度なスキルを持つ人材と単純作業をこなすAIやロボットの二極化が進むと見ている。その中で生き残っていくには、新しい技術の習得などリスキリングが不可欠となる。
人間が活躍しつづける分野とは
AIによる自動化が進む中でも、依然として人間が活躍し続けられる分野が存在する。それが「人間なのにすごい」というエンターテインメント性のある仕事だ。
囲碁の世界でAIソフトが人間のプロ棋士に勝利したが、それでも棋士の仕事が無くなることはない。なぜなら人間のプロ棋士には「史上最年少で八冠」といった偉業やキャラクター性があり、それ自体が「人間なのにすごい」と評価されるためだ。同様に、世界最速記録保持者のウサイン・ボルト選手がAIロボットに負けたとしても、アスリートとしての価値は失われない。
一方で、正確性や効率性が最重要となる職業、例えば公認会計士や税理士といった専門職は、人間の仕事としては容易には残らない可能性がある。AIが人間の能力を超えるようになれば、そうした職種は簡単に置き換わっていく。
そのため、これからの人材に求められるのは「天然もの」としての稀少性の高い価値を持つスキルを獲得することだ。翻訳や通訳の仕事もAIの進化に伴って人間が担う必要性は低下しつつある。しかし、自力で外国語を習得した人材に対する評価は高まる可能性がある。長年の努力の末に培った「天然もの」としての価値は、相手の感情を動かすだけの意味を持ち続けると考えられるからだ。
時代の変化に合わせてスキルを更新し続ける「リスキリング」が重要になる中で、人間ならではの価値を見出し伸ばしていくことが、これからの企業人に求められる新たな戦略となるのかもしれない。
【関連リンク】
・AIによる雇用市場の再編が進む… 2030年までに1200万人の労働者が別の仕事を探すことに(BUSINESS INSIDER)
https://www.businessinsider.jp/post-291231
・AI時代に「残る仕事」「無くなる仕事」の決定的な差、公認会計士すら危ういワケ(ダイヤモンド・オンライン)
https://diamond.jp/articles/-/348077
TEXT:PreBell編集部
PHOTO:iStock
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