2024.09.16 アップル、NFC決済の新しいアプローチ
アップルがiPhone向けの次期OSアップデート「iOS 18.1」において、これまで自社製品であるApple PayやAppleウォレットでしか使えなかった非接触決済機能を、サードパーティのアプリでも利用可能にすることを発表した。
現在のiPhoneでは、NFC(近距離無線通信)を使った非接触決済はApple PayやAppleウォレットに限定されていた。しかし、iOS 18.1からは開発者がNFC APIとSE(Secure Element) APIを活用することで、自社アプリ内で決済機能を提供できるようになる。
店舗での支払い、交通系ICカード、社員証や学生証、車や自宅、ホテルの鍵、会員カードやクーポン、イベントチケット、さらに将来的には政府発行の身分証明書(マイナンバーなど)への活用が想定されている。決済時は生体認証(Face ID/Touch ID)を使うことで、セキュリティとプライバシーが担保される。
サードパーティ企業がこの新しいNFC機能を活用するには、Appleと商業契約を結び、関連する料金を支払う必要がある。また、一定の業界基準とセキュリティ要件を満たす必要があるが、Appleはこれまで以上に開発者の参入を促す狙いがあるようだ。
アップルの決断と背景
この決定の背景にあるのは、欧州委員会によるApple Payの独占禁止法違反疑惑の調査だ。欧州委員会は以前から、Appleがモバイルウォレットアプリ開発者のNFC利用を制限しており、自社サービスを優遇しているとの指摘を行っていた。
2022年には、予備的見解として正式に独占禁止法違反の可能性を示し、Appleに改善措置の提示を求めていた。そして今回、Appleが欧州におけるNFCアクセスの開放を提案したことで、欧州委員会は調査を終了することを発表した。
Appleはこの動きに合わせ、世界各国でNFC決済機能をサードパーティに解放する方針を打ち出した。iPhone上のNFC機能を自社サービス以外でも活用できるようにすることで、欧州委員会の疑念に応えるとともに、決済市場での競争を促進する狙いがあるものと考えられる。
今回の発表は、モバイル決済業界に大きな影響を与えるだろう。Apple Payに依存していた企業も、自社アプリ内での決済機能提供が可能になることから、新たなビジネスチャンスが生まれる。一方で、Appleとの契約条件や料金体系、セキュリティ基準への対応など、開発者側の課題も出てくることになる。
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TEXT:PreBell編集部
PHOTO:iStock