国内外で進むSNS規制の動向、オーストラリアの取り組みと国内世論
オーストラリアでは2024年11月、16歳未満の未成年者によるSNS利用を全面的に禁止する法案が議会を通過した。この規制は、TikTok、Instagram、X(旧ツイッター)など主要なSNSプラットフォームが対象で、教育目的に限りYouTubeやWhatsAppは除外される。違反した場合、運営企業には最大4950万オーストラリアドルの罰金が科せられる仕組みだ。この法案成立の背景には、SNS上でのいじめが原因で自殺した子どもを持つ親たちの声があり、青少年保護を優先した判断が下された。
一方で、規制に対する懸念も強い。大手テクノロジー企業からは「児童の権利を侵害しかねない」との批判が出ており、過剰な規制による逆効果を指摘する声もある。特に、青少年が規制を回避する手段を模索することで危険な行動に繋がる可能性が問題視されている。
このような動きは日本国内にも影響を及ぼしている。毎日新聞の世論調査では、「禁止する必要はないが、何らかの規制は必要だ」と答えた人が52%を占め、「禁止すべきだ」という回答も30%に上った。特に高齢層では「禁止」への支持が高く、若年層では自由を重視する傾向が見られる。日本国内でもSNS上での中傷やいじめ問題が深刻化している中、規制を求める声が高まりつつある。
各国の規制と懸念事項
オーストラリアだけでなく、フランスやイギリスなど他国でも未成年者のSNS利用を制限する動きが広がっている。フランスでは小中学校におけるスマートフォン使用を制限する「デジタルコンマ」措置の拡大が検討されているほか、イギリスでもSNS年齢制限を含む規制案が議論されている。デジタルコンマとは、登校時、教師に携帯電話を提出して下校する時に返してもらう制度である。日本でも、学生寮などでこの制度を取り入れているところもあるだろう。
一方で、これらの規制に対する反発も各国で共通している。企業側の負担増や、規制の実効性が懸念材料となっているためだ。
韓国でも青少年のSNS利用時間制限や、未成年者のアカウント作成を防ぐ法案が提案されているが、過去に失敗した「シャットダウン制」の教訓を踏まえた慎重な議論が求められている。シャットダウン制はオンラインゲームの深夜利用を禁止する政策だったが、VPNを利用した抜け道が存在し、最終的に廃止される結果となった。
各国の動きに共通するのは、青少年保護と権利侵害のバランスをいかに取るかという課題だ。規制が行き過ぎれば青少年の自由を奪い、逆に緩ければ安全が確保できないというジレンマがある。日本を含め、各国政府や関係企業には、規制の実効性を高めると同時に、青少年自身や親、学校との連携を強化することが求められる。
【関連リンク】
・子どものSNS「規制必要」52% 「禁止すべきだ」30% 毎日新聞世論調査(毎日新聞)
https://mainichi.jp/articles/20241215/k00/00m/040/086000c
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TEXT:PreBell編集部
PHOTO:iStock
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