SNSで広がるフィルターバブルとは?偏った情報環境がもたらすリスクと対策 ネットの疑問・お悩み

SNSで広がるフィルターバブルとは?偏った情報環境がもたらすリスクと対策

スマートフォンを手に取るたびに、いつの間にか似たような情報ばかりが表示されていると感じたことはありませんか?実は、これはあなただけではありません。

私たちの多くは、気づかないうちにアルゴリズムによって作られた「見えない泡」のなかに閉じ込められています。この現象は「フィルターバブル」と呼ばれ、私たちの視野を狭め、社会の分断を深める原因になっているのです。

本記事では、フィルターバブルの仕組みや危険性、そしてその回避方法についてくわしく解説します。

フィルターバブルとは

フィルターバブルとは

フィルターバブル(Filter Bubble)とは、インターネット上のアルゴリズムによって、個人の興味や過去の行動にもとづいた情報が自動的に選別されることで、まるで「泡(バブル)」のなかに閉じ込められたように、似たような情報や同じような意見に囲まれてしまう現象を指します。

この現象は、アルゴリズムがユーザーの好みや行動履歴を分析し、それをもとに情報を選り分けることで起こります。

結果として、ユーザーは自分にとって心地よい情報に満ちた「泡」のなかで安心感を得られる一方で、異なる視点や多様な意見に触れる機会を失ってしまいます。

フィルターバブルと似た現象の「エコーチェンバー」

フィルターバブルと似た現象にエコーチェンバー(Echo Chamber)があります。

どちらも情報に触れる機会が狭まるという点で似ていますが、その原因は異なります。

フィルターバブルは、アルゴリズムが個々のユーザーに合わせて情報をフィルタリングすることで起こります。

一方、エコーチェンバーは、同じ意見を持つ人々が集まるコミュニティ内で情報が反響し合うことで発生します。

エコーチェンバーフィルターバブル
情報へのアクセス方法自分が能動的に選ぶ受動的に情報を受け取る
周囲との繋がり他人と繋がる孤立する

エコーチェンバーは、フィルターバブルとは異なり、ユーザーが自ら選んで特定の意見やコミュニティに属し、同じ考えを持つ人たちと積極的に繋がることが特徴です。

自発的に情報の偏りを強化するため、異なる意見を受け入れにくくなることが多く、自分の信念がさらに固まってしまう傾向があります。

このため、他者とのコミュニケーションが難しくなり、場合によっては対立を招きやすい状況が生まれます。

この点で言えば、エコーチェンバーのほうがフィルターバブルよりも自己強化が進みやすく、結果として周囲との齟齬が深まりやすいので、より厄介と言えるでしょう。

フィルターバブルが発生する主なプラットフォーム

フィルターバブルが発生する主なプラットフォーム

フィルターバブルが発生する場所は、主にアルゴリズムが情報を選別するプラットフォームです。

具体的には以下のような場所で発生します。

SNS(ソーシャルメディア)

SNSはユーザーの「いいね」やシェアの履歴をもとに、好みに合うコンテンツが優先表示されるように設計されています。

たとえばFacebook、Instagram、Twitter(X)、TikTokなどで、過去に興味を示したテーマや意見に近い投稿が多く表示されることを、認識している人も多いでしょう。

YouTubeでは、ある動画を3回視聴しただけで、その動画が9倍表示されやすくなったという研究結果もあるようです。

検索エンジン

GoogleやBingなどの検索エンジンでは、ユーザーの検索履歴や位置情報、閲覧傾向にもとづいて、個別化された検索結果が表示されます。

GoogleのDiscoverなどがその例です。

同じキーワードで検索しても、ユーザーによって異なる結果が出ることがあり、特定の情報がフィルターされることでバブルが形成されます。

ニュースサイト

SmartNewsやYahooニュースなどのニュースサイトでは、ユーザーがよく読む記事ジャンルやトピックにもとづき、ニュースフィードが最適化されます。

結果的に、興味のあるニュースや視点がさらに強調され、他の視点や異なるニュースに触れる機会が少なくなります。

フィルターバブルによる危険性

フィルターバブルによる危険性

フィルターバブル現象によって引き起こされる危険性について解説します。

確証バイアスの増大

フィルターバブル内で自分の意見や信念に合致する情報ばかりに触れることで、確証バイアスが増大します。

このため、批判的思考や客観的な判断力が低下し、自分の考えをさらに強固に信じ込みやすくなるリスクがあります。

新しい発見や成長機会の喪失

予期しない情報や意外な視点と出会う機会が少なくなるため、個人の視野が狭まりやすくなります。

自身の知識や興味の範囲を広げにくくなり、成長や学習の機会が制限される恐れがあります。

民主主義への影響

フィルターバブルがもたらす偏った情報環境は、限られた情報にもとづく判断により、社会的な混乱や分断を引き起こす可能性があります。

たとえば、2016年の米国大統領選挙や2021年の議会議事堂襲撃事件に加えて、新型コロナウイルスの感染拡大時にも、フィルターバブルは大きな影響を及ぼしました。

パンデミックのあいだ、ワクチンや感染対策について異なる見解を持つ層が、各自の信念に沿った情報だけに囲まれることで、互いに矛盾した「現実」を信じ込む状況が生まれました。

フィルターバブルを回避するには

フィルターバブルを回避するには

フィルターバブルは確かに危険性もありますが、いくつかの対策を講じることで回避することが可能です。

プライベートモード(シークレットモード)で検索・閲覧する

プライベートブラウジングモードを使用することは、フィルターバブルから抜け出す効果的な第一歩となります。

このモードでは検索履歴や閲覧履歴が保存されないため、パーソナライズされた検索結果の影響を最小限に抑えることができます。

過去のデータに左右されることなく、より客観的な情報にアクセスできるようになり、同時にトラッキングやフィルタリングの影響も受けにくくなります。

アルゴリズムによるおすすめ機能を無効化する

各ソーシャルメディアプラットフォームには、ユーザーの好みに合わせてコンテンツを表示するアルゴリズムが組み込まれています。

これを解除することで、いつもと違う情報に触れることが可能になります。

Facebookのフィードでは「さらに表示」や「表示を減らす」で変更でき、Twitter(X)では「このポストに興味がない」や「表示するコンテンツ」から変更できます。

さらに、検索エンジンのパーソナライズド検索をオフにすることで、時系列順の情報表示が可能となり、アルゴリズムによる情報の選別を回避することができます。

複数の情報源を利用する

オンラインニュースだけでなく、従来型メディアである新聞、テレビ、雑誌なども併用することで、より幅広い視点からの情報収集が可能になります。

とくに、書籍による深い知識の習得や、対面でのコミュニケーションを通じた生の意見交換は、バランスの取れた情報収集に大きく貢献します。

意識的に異なる視点やテーマに触れる

自分とは異なる意見や価値観を持つ人々との交流を意識的に増やすことで、視野を広げることができます。

セミナーや講演会に参加し、さまざまな立場の専門家の見解を直接聞くことも効果的です。

また、普段から意識的に自分の快適圏(comfort zone)の外にある情報に触れることで、特定の価値観や見方に偏ることなく、より広い視野で物事を捉えることが可能になります。

まとめ

フィルターバブルまとめ

本記事では、フィルターバブルの仕組みや危険性、回避方法について解説しました。

アルゴリズムの偏りから脱却し、さまざまな視点を取り入れることで、バランスの取れた情報環境を作ることが大切です。

複数の情報源を活用し、異なる視点にも目を向け、偏りの少ない情報収集を心がけましょう。

TEXT:PreBell編集部
PHOTO:iStock

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