スマートグラスシステム「ロジスグラス」で2024年問題に挑む
働き方改革関連法案の施行によってドライバーの年間時間外労働の上限が960時間になり、さまざまな影響が出る2024年問題。業界関係者だけでなく、ECサイトで商品を購入する一般消費者でもご存じの方は多いことでしょう。
しかし、対応が進んでいるという話はこれまであまり聞こえてきませんでした。
このような状況の中で、株式会社コーユービジネスは、物流業界の作業効率化を実現するスマートグラスシステム「ロジスグラス」の販売を開始しました。
今回は、株式会社コーユービジネスの吉田様と河野様に「ロジスグラス」についてのお話をお伺いしています。
ARを用いたメガネ型デバイス「ロジスグラス」で物流作業を効率化
株式会社コーユービジネスは、コンピュータ用帳票印刷の会社として1960年に創業しました。1980年頃から情報機器販売、1990年頃からはデータプリントサービスも承っています。
電子化が進む中で、2017年頃から新たな軸となる事業の開発を推進していました。その後、得意先である倉庫会社や運送会社から「2024年問題」を懸念する声を多く耳にするようになりました。
弊社として何ができるか議論した結果、デジタルツールによる効率化ソリューションが最適だという結論に至り、開発したのが物流業界向けスマートグラスシステム「ロジスグラス」です。
「ロジスグラス」はAR(拡張現実)を用いたメガネ型のデバイスです。
「ロジスグラス」を装着して商品のバーコードを読み取ると、視界に保管場所や作業リストなどの情報が表示され、誰でも迷わず効率的に作業ができるシステムです。
「ロジスグラス」を使うことで倉庫業務、拠点間配送、戸口配送の課題解決を目指します。
倉庫業務では、入庫仕分けや出庫ピッキング作業の効率化と未経験者の即戦力化が図れます。拠点間配送では、トラックへの積み込み時間を短縮します。戸口配送では誤配の原因特定や再配達までの時間を短縮します。
ハンズフリーで作業の効率化、新人でも即戦力に
倉庫業務ではどのように使用されるのでしょうか?
入庫仕分けでは、荷物のバーコードを「ロジスグラス」で読み取ると、「通路2-棚32-5番」のように、保管場所を視界に表示します。表示された棚へ荷物を納めます。オフラインにすればチルド室でも利用可能です。
出庫ピッキングでは「ロジスグラス」内に表示されるリストを見ながら棚を探して荷物を集めます。
遠隔支援も可能です。本部にいる監督者が現場のライブ映像を共有しながら指示を出すことができます。
従来は、入庫や出庫のリストを手で持ちながら作業していましたが「ロジスグラス」を使えば両手が空くので効率的に作業ができます。
どの棚に何があるかは、倉庫を熟知したベテランでないとわかりづらいものです。しかし「ロジスグラス」なら荷物の場所が瞬時に表示されるので、新人や仕事を始めたばかりのアルバイトでも即戦力になれます。
現場だけで判断できないトラブルが発生しても、画面を共有した本部から指示を出すことが可能です。作業者目線の映像を残せるので、熟練者の作業映像を技術の継承に活かしたり、初心者の作業映像を改善点の洗い出しに活かすこともできます。
「ロジスグラス」にはExcel、CSV形式の「トラック別得意先ルートデータ」を取り込む機能があります。それをデータベースとして「ロジスグラス」で表示します。
トラック固有のバーコードを「ロジスグラス」が認識すると、瞬時に積み込む荷物が「箱B-箱D-箱C」というように積載順に表示されます。
通常は積載順を熟知しているドライバーが積み込み作業を行っていますが、表示どおりに積み込めば、誰でも間違いなくトラックに積み込むことが可能です。
ドライバーの労働時間には、運転時間だけでなく荷物の積み下ろしや荷待ちの時間も含まれます。この時間を削減できればドライバーの労働時間の短縮につながります。
トラックへの積み込みは、荷物を間違うことなく、荷下ろししやすいように積むことが大事で、ドライバーにとって重要な作業です。
前日までに担当者が積み込み方法と荷下ろし順を計画したリストを作っておけば、「ロジスグラス」でトラックのコードを読み取り、誰でも間違いなくトラックに積み込むことができます。これによってドライバーの負担を軽減することが可能です。
「ロジスグラス」には録画機能があり、映像記録を残すことが可能です。音声またはボタンの操作で録画の開始・停止を指示します。
「ロジスグラス」を装着すれば、トラックから荷物を降ろし、建屋を探して荷物を置くところまでを動画で記録できます。
クラウドサーバへの保管期間を設定でき、配送日時や配達担当者から記録を検索することも可能です。
メリットは戸口配達の証跡を取れることです。
コロナ禍以降、置き配が広まっています。その際に証拠写真を撮りますが、ガスメーターボックスの中などでは、どの家のガスメーターなのかわからず証拠として不十分です。
配送量が増えれば、ある程度の誤配は生じます。もし迅速な対応ができなければ企業イメージにも悪影響を及ぼしかねません。しかし、誤配が生じても映像記録から原因を早く特定でき、再配達に要する時間も短縮できます。
モニタリングで現場の声に耳を傾け「ロジスグラス」の普及を目指す
「ロジスグラス」を普及させるにあたって課題はありますか?
スマートグラスはメーカーのものを使用しており、弊社で提供しているのはスマートグラスの中のシステムです。
初期セットアップ費用は5万円で月々のライセンス使用料は25,000円です。スマートグラスは購入またはレンタルしていただくことになるのですが、半導体不足で値段が上がっています。
スマートグラスは業務用ではまだあまり見かけませんが、ゲーム用では利用が進んでいますので、若い人が興味を持ってくれると思います。日本製の安価なスマートグラスがあれば、もっと中小企業の現場にも普及すると思います。
御社の今後の展望などはありますか?
物流業界は大手と中小に二極化しています。大手では近い将来、倉庫の中でロボットが働き、ドローンが配達することが当たり前になるかもしれません。
しかし、経費の問題でドローンを導入できない中小の物流会社もあります。「ロジスグラス」のメインターゲットは中小の物流業者と言えるでしょう。
倉庫会社での使用で期待どおりの成果はでていますが、長期で使ってみないとわからない点もあります。これからもモニタリングを繰り返し、倉庫会社や運送会社の作業効率化を実現していきます。
key point
- 株式会社コーユービジネスは、物流業界の作業効率化を実現するスマートグラスシステム「ロジスグラス」を開発した。
- 倉庫業務では入庫や出庫のリストが視界に表示されるので、両手が空いて効率的に作業ができ、新人やアルバイトも即戦力になれる。
- 荷積みリスト通りにやれば誰でも間違いなくトラックに積み込めるので、ドライバーの労働時間削減につながる。
- 配達車から置き配場所までの映像を記録することで戸口配送の誤配・再配達に素早く対応できる。
いかがでしたでしょうか。
荷主にとっても消費者にとっても2024年問題は決して他人事ではありません。また、荷主も消費者も物流関係者に協力できることがあるはずです。
株式会社コーユービジネスが「ロジスグラス」を提案したように、社会全体が物流業界の負担軽減に知恵を出し合うことが必要ではないでしょうか。
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TEXT:PreBell編集部
PHOTO:iStock
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