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オープンサイエンスの実現へ。リサーチDXを推進するアラヤの挑戦

2020年代以降は「AI時代」と呼ばれ、AIが様々な分野に大きな影響を与えています。 ChatGPT等の出現もあり、従来AIが関わってこなかったような分野にもAIの影響が出始めています。

AIの進歩についていくためには、DX(デジタルトランスフォメーション)が必須です。

民間企業の業務では多くの分野でDXが推進されており、先進的な企業では業務にすでにAIを取り込むことも実施されています。

一方で、民間企業以外の研究所や大学ではまだDXが進んでいない現状があります。

こういった「研究」の分野でDXを起こすことを目的にDX事業を行っているアラヤという会社があります。

アラヤは、どのような形で出来るだけ研究の分野でDXを実施しようとしているのでしょうか。

今回は、株式会社アラヤの松本さん、濱田さん、道林さん、岩谷さんにお話を伺いました。

Point

  • アラヤは脳神経科学の研究者である金井良太氏によって設立
  • AI開発と脳画像研究を主な事業として行っている
  • 研究分野でのDX(リサーチDX)も行っており、OptiNistと呼ばれるソフトウェアを提供している
  • OptiNistは、多数の研究者が行った複数のデータ解析結果を可視化や共有することを支援するソフトウェア

研究の分野でのオープンサイエンスを実現へ

アラヤではどういった事業を行っているかご教示いただけますでしょうか。

岩谷:主な事業としては、AIの開発と脳の研究です。

AIのソリューションにおいては、画像研究の分野にも力を入れており、食品検査等に使われています。

具体的には、外観検査の工場や食品検査で使われていまして、混入物の発見等に使用されています。

その他に力を入れている分野が、リサーチDX(研究DX)です。

民間の企業ではDX(デジタルトランスフォーメーション)推進が進んでいますが、研究所を始めとした研究の分野ではまだ進んでいないところもあります。

こういったギャップを埋めるために、リサーチDXの事業も展開をしています。

OptiNistと呼ばれるソフトウェアを使って研究分野でのDXも行っていると伺いました。どういったソフトウェアなのでしょうか。

松本:OptiNistは研究用の解析プラットフォームです。

OptiNistが解決しようとしているのが、研究データの共有です。

従来の研究では、研究用に使われていたデータ等が属人化してしまっているという課題がありました。

研究では再現性(他の人が同じ実験をしても同じ結果になること)が重要です。

したがって、データや解析手順を他のユーザーに共有できないことは大きな課題となっています。

OptiNistは研究データや研究結果を他の人に共有することができるようなデータベースであり、研究メンバー間でのノウハウの共有や実験データの共有等で利用いただいているソフトウェアです。

OptiNistを使うと、データ共有の属人化という課題を解決することができると考えています。

「オープンサイエンス」という言葉が使われていますが、どういった定義なのでしょうか。

新たに立ち上げた専門組織DMO(Data management office)について教えていただけますでしょうか?

濱田:オープンサイエンスとは、データの透明性を指して使っているケースが多いです。

先ほどのOptiNistの説明でデータの属人化の話をしましたが、今までは分野によってはデータを公開しないケースも多かったです。

特に動物実験等が絡むような、生命科学の分野ではデータやコードの公開されていないケースが多数ありました。

加えて、公開されていたとしてもデータが他人が見ても分かりにくい形になっているケースが多くあります。

こういったデータの不透明性、検索性の少なさを軽減して、誰が見ても分かりやすいデータを共有していくことをオープンサイエンスとして考えています。

世界でのオープンサイエンスについて

日本はオープンサイエンスの実現という点では海外に遅れをとっているのでしょうか。

濱田:アメリカと比べると、研究室間でデータを共有するオープンサイエンスの取り組みが日本には少ないように感じます。

コンピューターサイエンス等の分野であれば日本でもソースコードの公開が当たり前になっている印象ですが、データの扱いにくい生物系の分野ではあまりすすんでいない印象はあります。

こういったオープンサイエンスが進むことにより一般消費者にはどういったメリットがあるのでしょうか。

松本:一般消費者が使う製品がより早く届けられるようになるといった影響があるかもしれません。

たとえば、薬を販売するには研究結果の国の承認を取る必要があります。

その承認を得るためには、実験の再現性が必要になってきます。

再現性とは、誰かが行った実験が他の人が実施しても同じような結果が得られることです。

この再現性を担保するためには、データを研究室間や他の研究者とスムーズに共有することが必要不可欠です。

オープンサイエンスが進んでいない場合、実験の再現に時間がかかり、結果として一般消費者に薬が届けられるのに時間がかかる場合があります。

こういったことから、オープンサイエンスが進むと一般消費者が使う製品がより早く届けられるような影響があるかと思います。

オープンサイエンスの今後について

AIは様々な分野に影響を与えています。今後研究の分野にはどういった影響があるかと思いますか。

道林:多くの影響があるかと思いますが、その1つが過去の文献の調査や理解が早くなることだと思います。

新しい研究をするにあたっては、過去文献を読み込んでどういった研究がすでになされているかを分析することが必須です。

今までは論文検索システムを使って、人の目で過去の文献等を調べていたりしていたのですが、大規模言語モデルの登場により、AIが複数の論文をまとめたり、目的に応じて解説をしたり、関連研究をまとめるような作業ができるようになってきました。そのため、過去の文献を調査し、研究テーマを決めるような作業も一部は自動化されるかと思います。

実際、近年でもこういった作業のスピードも上がってきているように感じます。

今後は、DeepMindからリリースされているAlphaFoldのように、各分野での専門的なAIが整備されていくことでより大きな影響を与えるようになるのではないでしょうか。

結果として、研究分野にもAIは大きな影響を与えると考えています。

終わりに

key point

  • アラヤは研究分野でのリサーチDXとして、OptiNistと呼ばれるソフトウェアを提供している
  • OptiNistは、多数の研究者が行った複数のデータ解析結果を可視化や共有することが可能
  • 研究データを共有することで、研究や製品開発のスピードが上がることが予想される
  • 今後AIは研究にも強い影響を与えることが予想されている

いかがだったでしょうか?

AIは多くの分野に影響を与えていますが、研究の分野のDXはまだ進んでいないところも多いです。

そういった中でアラヤはリサーチDXを通じて、オープンサイエンスの実現に取り組んでいます。

研究者にメリットもあることはもちろんですが、研究のスピードが進むことで一般消費者にも良い影響(製品が早く届くようになる等)のメリットがあります

ぜひ、今後の研究やAI関連のニュースを見る際にはこういった企業が裏で支えていることを意識して見てみてはいかがでしょうか?

株式会社アラヤ

2013年、脳神経科学者の金井良太氏によって創業。

「全てのモノにAIを宿らせる」を会社のヴィジョンとし、AI関連事業で幅広く事業を展開している。

具体的には、小売や食品業界の工場において異物混入分析で使われるAI画像認識システム、脳データ解析、研究で使われるデータ共有プラットフォーム等に事業を展開。

特に研究や解析をサポートするスマートソリューションであるOptiNistには高い評価を得ている。

TEXT:PreBell編集部
PHOTO:iStock

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